美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第50話 ドラゴンブレス⑧

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(ギース)

「何だと!! ハルクが死んだ? 何故だ! 何故そんな事になったんだ」

 ギースの元に王都から連絡が届いたのは、事故から一週間後の事だった。

「ちょっと落ち着いてよギース。手紙に詳しく状況が書いてあるから読むわね」

 ミルキーが手紙を読み、概要をギースに伝える。

「Bランクダンジョン如きで『ドラゴンブレス』が探索を失敗したと言う事実が問題だ。これではクランとしての『ドラゴンブレス』の名声が落ちてしまうじゃないか」
「ギース。重要なのはそこだよ。探索を失敗したメンバーにはギースも私も居なかった。そこをアピールすれば『ドラゴンブレス』はギースが居ればこそのクランだと王都の人達も認識するし、ここの古代遺跡を攻略すれば、より大きな名声がギースを迎え入れてくれる筈よ」

「そうか…… ハルクとリンダを失った事はとても残念ではあるが、ここで俺が悲しんでも、あいつらは戻ってこないしな。ミルキーの言うとおりだ。俺達で何としてでも古代遺跡を攻略して、その成果を手に王都へ凱旋して、ハルクとリンダを弔ってやろう。『ドラゴンブレス』は死んだメンバーにも手厚い弔いを行う様なクランだと思ってもらえれば、ハルク以上の実力者たちを集めて立て直す事も容易だろう。しくじった事で下げた『ドラゴンブレス』の名声を、広告塔として挽回して貰わねばな」
「そうね。でも、今回の探索でハルクを殺したミスリルゴーレムの撃破には成功して、素材は回収したそうだから、ダンジョン踏破は出来て無いけど、結構な額の利益にはなるそうだよ」

「ほう。指揮はサイモンが取ったんだよな?」
「うん」

「奴に実働部隊を任せて、これからも頑張って貰う様に返事を出して置いてくれ。給料は倍にしてやるとも書いておいてくれよ。ハルクとリンダの葬儀は俺が戻ってから、大々的に取り仕切るとも伝えておいてくれ」
「解ったわ」

 その報告を受けてから、以前から進めていた計画通りに、旧帝国領側の農民で村を離れたいと思っている人々と、孤児院の子供達の中で冒険者志望の子を集め、ギースの連れて来たクランの10名を合わせ、220名程の人数で、古代遺跡の攻略を開始する事になった。

 いよいよ、翌日から攻略を開始するとなった晩に、カール村を訪れる三名の人物が居た。

「ギース、あなたに会いたいって言う人達が来てるわよ?」
「こんな田舎にまで訪ねてくるとは、俺の名声もつくづく高まったもんだな。で。どんな奴らなんだ?」

「なんだか、Sランク冒険者だと言ってるわね」
「Sランク冒険者? いったい何の用だろう。まさか俺の古代遺跡の攻略を横取りするつもりじゃないだろうな? 大体王都のギルドも俺をさっさとSランクに認定しないから、こうやって他の連中に横槍を淹れられるんだ。古代遺跡の攻略が済んだら、王都のギルマスにもアピールして認めさせないとならないな」

 そんな事を言っていると、三人の冒険者が勝手に入って来た。

「お前が『ドラゴンブレス』のギースか? なんだ、全然強そうじゃ無いな。本当にお前がSランクダンジョンを攻略できたのか?」

「おい! 俺は冒険者のランクはAAだが、王国の貴族でもあるんだぞ? いくらSランク冒険者と言えども無礼だろう」
「何寝ぼけた事言ってやがるんだ。俺達Sランク冒険者は『世界冒険者協会』の全面的な承認を持って冒険者協会加盟国では伯爵位と同等の地位を保証される。ちんけな地位をひけらかす奴にしか言わないがな。本当にお前雑魚だな」

「なっ。まぁいい。俺もどうせ古代遺跡攻略の成果を持って、そのSランクになるのは決まった様なもんだからな。俺の聖剣と聖鎧があれば古代遺跡などどうって事は無い」

「ジュウベエ。あんまり無駄にギースを挑発しないでよ。話が前に進まないから」
「レオネアが言うなら黙って置くが……」

「ギースよ。お前さん達は随分人数を集めておるが、この素人達で古代遺跡に突入するつもりなのか?」
「爺さんは誰だ?」

「そう言えば、まだ自己紹介も住んでおらぬな。わしは【賢者】と呼ばれるシュタットガルドと言う。最初に声を掛けた山賊みたいな身なりの奴が【破壊の剣神】ジュウベエ、もう一人のお嬢ちゃんが【悪魔使い】レオネアじゃ」

「ご丁寧にどうも。私が【勇者】の称号を許されたギース・フォン・ドラゴンブレス子爵。横に居るのが、ミルキー・フォン・ドラゴンブレス騎士爵です」

「ちょっと先に僕から話させて貰って良いかな?」

「まぁ立ったままでは落ち着きませんから、こちらの会議室へどうぞ」

 そうギースが言うと、奥の会議室へと案内した。
 ドラゴンブレスの他のメンバー達にお茶を用意させ、その後は席に着いた俺達を取り囲むように、直立している。

「なんだ? 警戒してるのか?」
「ジュウベェ。あなたが喋ると話が進まないから黙ってなさい」

「解ったよ。行き遅れて小姑みたいな性格になってきたんじゃないかレオネア」
「ジュウベェ!!」

 漸く落ち着いて席に着き本題に入る。

「まず僕たちは、今回は遺跡探索が目的じゃ無いんだ。今、君が領主代行になっている、旧帝国側の領地。あそこの惨劇は当然知ってるよね?」
「ああ。勿論だ。俺が王国軍を指揮して死体を喰らっていた魔物どもを追い払って、遺体を焼いたからな」

「そうだったんだね。でも、決して君が指揮して帝国軍を蹴散らしたわけじゃ無いよね?」
「ああ。だったら何か問題があるのか?」

「帝国は戦争で負けたんじゃないんだから、領地の割譲は無効だと言っているよ? それで私達は帝国軍8万を虐殺したと言われる、ヒュドラを討伐しに来たんだ」
「ヒュドラ? そんなもの見かけて無いぞ」

「僕たちもあの平原で実際に調べてみたけど、ヒュドラの姿を見かける事は無かったよ。でも軍の生き残りの指揮官は、嘘をついているようにも見えなかった。それだけの化け物が実際に居るとしたら、どこに隠れてるのかな? と思うと、古代遺跡の可能性が高いと僕たちの意見は一致したんだ」
「古代遺跡の中にヒュドラが居ると言うのか?」

「その可能性が高いってだけだよ。君たちが先に古代遺跡を攻略する準備をして、攻略できるって言うなら全然それで構わないけど、もしヒュドラがそこに居て、君たちが取り逃がしたりしたら、どれだけの被害が出るか想像がつかないからね」
「それで、Sランクのあんた達はここに何をしに来たんだ?」

「僕たちは、君たちの邪魔はしないから、君たちが遺跡に突入したら、戻って来るまで待機させて貰えるかな? 勿論遺跡の中には入らないよ。僕たちが動く事があるとすれば、君たちが失敗して、ヒュドラが外に出てくるような事があった時だけ。それならいいでしょ?」
「残念だが、俺は失敗をしない男だ。待っても無駄になるだろうけど、それで構わないなら勝手にすればいい」

 会見を終え、三人のSランクは外へと出た。

「どう見た爺さん?」
「お前さんと同じだよ」
「僕もだね」

「だが、奴の持ってた剣と鎧はSランクダンジョンの攻略で手に入れた物だろうから、その能力を活かせるのなら、案外どうにかするのかもな?」
「じゃがの、『絶望の谷』を攻略した時点では、その聖剣もまだ持って無かったのじゃぞ」

「表面上じゃ解らない何かを持ってるのかもね」
「取り敢えずは、お手並み拝見って事じゃの」
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