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第94話 魔国へ⑨

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 改めて、今ここに居る稀人と呼ばれている人たちを見ると、アサダさんなんかは私から見たら、未来人だよね。
 2036年の日本から40年前の召喚で呼び出されたらしい。
 日本に居た時の記憶を聞いたけど、幼稚園の年中さんで、好きだったアニメのキャラクター程度しか記憶は無いそうだ。

 テレビやスマホの知識はあるけど原理なんか当然わかる訳ないし、やっと習い始めた、ひらがなは書けたけど、カタカナとの使い分けやカタカナの文字自体も、この世界に来てから、魔法陣を研究しているうちに、少しずつ覚えて行ったと言う情況なんだって。

 他の人達も殆ど状況は同じで、精々小学校一年生レベルの漢字程度しか理解できないらしい。
 なんで、そんな子供を召喚したのかだったんだけど、元々現代日本では魔素が存在しない。
 だから6歳を過ぎて召喚された子たちは、ことごとく魔力を持って無いんだそうだ。
 魔力を持って無い状態。
 魔臓と呼ばれる器官が無いと、常に魔力枯渇状態で、この世界ではまともに生活する事も出来ないのは、私の研究でもわかってる。

 そこで幼年の人間を召喚したところ、六歳までの間は魔臓と言われる、丹田の部分にある器官が、後天的に体内で作られる事が解ったんだって。

 結果、知識的には少ないけど、この世界でも生きていける対象として、幼児の召喚を繰り返していたらしい。

 でも……
 そんなの子供を勝手に攫ってくるだけの、人さらいじゃん。
 ちょっと、私的に許せない。

 後でオダさんに文句言おう。
 プンスカだよ。

 それに…… そうまでして召喚を繰り返して、何を作り上げようとしているのかが、解らない。

 あ、そう言えば、アズマシマのオーシマさんが聖人ショウタ様って言ってた人はここには居ないのかな?

「アサダさん。お聞きしても良いでしょうか?」
「はい。なんでしょうか?」

「聖人ショウタ様という人はここにはいらっしゃらないんですか?」
「あ、ショウタ君はね、いわゆる天才児でここに5歳の時に呼び出されたのに、ある程度の漢字を理解出来てたので、今はこの国の各地を回りながら、魔法陣の修復をするお仕事をしてるんですよ」

「へーそうなんですね。それでも新しい魔法陣を作ったりは出来ないんですか?」
「既存の物にちょっと効果を付けたす程度しか出来ないみたいですね」

 でも、私はちょっと考えたんだよね。
 このヤーバンの環境に居れば、日本語を理解する事が出来るんだから、スパリゾートで魔法陣の勉強をする子たちを、この国に留学させれば言葉が理解できるし、スパリゾートで勉強するよりはよっぽど、早く学ぶことが出来るんじゃないかな? って。

 基本の日本語を理解してから魔法陣を学ぶと効率が全然違うはずだからね。


 ◇◆◇◆ 


 夕方になって、フリオニール様達とも合流し、オダ将軍が用意した晩餐会へと招かれた。
 料理は基本的に和食だった。

 おいしいお醤油やお味噌を使った料理に、洗練された日本酒が並び、私的には大満足だったよ。

 カトリーヌさんも和食の繊細な料理に魅入られ、メモを片手に料理人たちを襲撃されていたわ。
 フリオニール様とブルックさんも、シャブシャブやスキヤキ、テンプラ、スシといった料理をとても気に入っていた。

 王様の格好で何故かばっちりメークを決めたままのフリオニール様と、ブルックさんの周りにはこの国の、女性たちがたくさん群がり大人気だったよ。

 普段はめんどくさがり屋のフリオニール様もなんだか随分期限良さそうに、女性たちともお話をされていた。
 私のお渡しした、翻訳の魔法陣はヤーバン語を話せるわけでは無く、理解を出来ると言う魔導具だから、これを魔法陣を描く事には使えないんだよね。

 言語を読み書き、会話が出来るようになるためには、勉強を重ねるしか無いって事だね。

 私の周りから人が少なくなった瞬間に、ダテさんが近寄って来て声を掛けて来た。

「アスカ女王のお陰で酷い目にあいましたよ。もう少しで打ち首になるところでした」
「ごめんねダテさん。でも一応国の代表として来ている以上、臣下と同じ扱いをされて受け入れるわけにはいかないから、それはしょうがないよ」

「まー私も前例のない事でしたので、普通にお会いするための手順を踏もうとした事に少し反省はしていますが」
「でも、ちゃんと許して貰えてよかったですね」

「今後同じ事が起こらない様に、しっかりと異国の使者への対応方法を、マニュアル化するように、幕府と協議をします」

 ダテさんと話しているとオダ将軍が、そばにやって来た。
「アスカ女王、先ほどフリオニール国王と挨拶を交わして来たが、なんだか不思議な方だな? 国交と言うより純粋に冒険を楽しみに来ているのか?」
「あの方は、少し変わったお方ですから、でも、悪い人じゃないと思います」

「思います? 疑問形なのか?」
「多分大丈夫です…… 私もオダ将軍に確認したい事があるんですが?」

「何だ?」
「何に備えて魔法陣の研究をされているのですか?」

「ほう。単純に国民により便利な生活をしてもらう為に開発しているとは思わぬか?」
「それでしたら、召喚など必要なく自国の魔導士で十分な筈では?」

「鋭いな。アスカ女王。この後は二人きりで話せるか?」
「大丈夫です。将軍は私と二人きりになる事に不安は無いのですか?」

「私はこう見えて強い。この国でも最高の魔力を保有するエンシェントドラゴンライダーでもある」
「凄いですね。将軍がよろしいんでしたら是非二人きりでお話ししたいです」
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