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第80話 スパリゾート共和国が出来るまで⑱

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「フリルちゃん、ここからはちょっと私の言う通りにしなさい」
「はい、キャサリン姉様」

「ちょっと嫌かも知れないけど、王国のフリオニール第一王子の姿で、甲板に立って帝国の悪事を糾弾してから攻撃するわよ」
「それはフリルでは駄目なのですか?」

「フリルちゃんが王国の代表だと言っちゃう事になると、色々不都合が多いからダメよ」
「解りましたしょうがありません」

「じゃぁスープラ君達に上空からの支援と、私達が降りた時にこのフリル号を操縦するパイロットを貸して貰える様に伝えて」


『スープラ、私達は攻撃を始めたら、帝城に乗り込むからパイロットを一人貸してくれ』
『解りました。このスープラがフリル号の操船は責任もって行いましょう。そちらに接舷させて頂いて、乗り込みます』

 その言葉を受け、スープラ君は部下二人と共にエレガントフリル号に乗船して来た。
 操船をブルックから引き継ぎ、いよいよ突入の準備を整える。

 夜明けとともに、エレガントフリルと5隻の飛空船が、帝城上空へと高度を落とし、フリオニールが拡声の魔導具で通告を行った。


 ◇◆◇◆ 


『私は、ギルノア王国第1王子フリオニールだ。
この度の帝国からの一方的な侵略に対し、ギルノア王国は帝国政府を殲滅する決定を下した。

勘違いをされてもらっては困るが、ギルノアの敵はあくまでも、ギルノアに対しての攻撃を決断した、帝国政府と、軍に対してだけである。
帝国の民に一切恨みはない。

これから30分後に帝城に対して総攻撃を開始するが、帝城を素直に明け渡すのであれば、敗戦国への正当な軍事裁判を受ける権利は保証する。
既に我が国の同盟国ビスティアに攻め込んだ通商国の傭兵部隊と、100万の帝国軍は殲滅。
ギルノアに攻め込もうとした主力350万も、ペルセウス国王により、武装解除された上に孤立させている状況である。

この事実を踏まえた上でもう一度問う。

即座に、帝国政府の首脳陣を拘束し、帝城の明け渡しを行い、ギルノアに恭順する者は帝城から離れろ。以上だ』


 フリオニールの演説を受け、帝都は一斉に大混乱に陥った。
 既に6隻の飛空船が、上空に現れており、先日、マリアンヌ達により破壊された結界の修復も完了していない為に、帝城近辺の住民たちは、一斉に城の近辺から離れ始めた。

 城からは、近衛兵団が整列して出動してくるが、城の中にいる兵力などかき集めても、1000人にも満たない。
 
 皇帝や、宰相などの姿は見えない。
 刻一刻と告げられた30分の時間は過ぎていく……


 ◇◆◇◆ 


「フリオニール様? やれば出来るじゃない」
 そう言ってキャサリン姉様が、俺のほっぺたにチューをしてくれた。

「キャサリンさん、正式に申し込みをさせて下さい。私フリオニールと結婚をして頂けますか?」
「いいわよ。約束は守ってね?」


 ◇◆◇◆ 


「宰相、どうなっているのだ? 奴らの言っていることは本当なのか?」
「念話も一切繋がりません。恐らく本当に我が軍が制圧されたのかもしれませんな」

「どういう理屈で、350万の兵が王国に負けると言うのだ。そうだ、地下牢のガーゴルを呼べ。奴なら少しは状況が解る筈だ」

 地下牢から、連れてこられたガーゴル将軍が皇帝の前に姿を現す。
「皇帝、今更私に何の御用でしょうか?」
「あの飛空船の言っている事は、事実なのか?」

「ここにあれだけの飛空船を、集めている以上疑いの余地は無いでしょう」
「350万の軍が、飛空船の10隻程度で抑え込まれてしまうのか?」

「時代が変わったのです。大兵による戦争など過去の物になったのです。潔く負けを認め国民の安全を保障して貰う道を考えられるべきでしょう。今なら皇帝が負けを認めれば、他の王子達は生き延びる道がある筈です。私が責任もってお守りします。ご決断ください」
「ガーゴル…… 余は愚かな皇帝なのか」

「皇帝陛下、このザノバンは陛下にお供させて頂きます。帝国の栄光を守る為に、ご子息たちに未来を繋ぐ道をお残し下さい」
「宰相…… 解った。余は今から帝城を明け渡し降伏する。後の事はガーゴルに任せる」

「お急ぎくださいもう時間がございません」

 その時通告のあった30分が経過した。
 エレガントフリル号からキャサリンが、特大の魔導砲を正面の大門に対して撃ち込んだ。
 一応兵士たちが門の周辺にほとんどいないことは確認してある……

 ただの一撃、それだけで帝国の近衛騎士団の1000人が膝をついた。

「む、無理だ……」

 ゆっくりと、エレガントフリル号が降下してきて、フリオニール、ゲイル、ブルック、キャサリン、カトリーヌの5人が下船して来た。

 フリオニールとブルック、ゲイルの3人は王子と従者の格好に着替えていた。
「最後まで美しくありたかったわ……」
「それは、私達も同じ気持ちですが、今は前の事に集中してください王子」

 5人を下ろすと、スープラの操縦で再び浮かび魔導砲をはっきりと、帝城の殲滅に向けて構える。

「フリルちゃん? 私が結界を張ってあげてるから、堂々としてなさいよ? これしきの事でビビったらカトリーヌさんに3人とも引っこ抜いて貰うからね?」
「が、頑張ります」

 5人が破壊された門の前に立つと、帝城内部から、皇帝陛下らしき人物が現れた。
 皇帝と宰相の二人だ

 大手門は壊されているために、破壊された門を挟んで対峙する形となる。
 皇帝の後ろから現れたガーゴル将軍が、膝をついていた近衛兵に命令を下す。

「帝国近衛騎士が情けない姿をさらすな、毅然として皇帝陛下をお見送りしろ」

 その言葉で近衛騎士達が立ち上がり、整列して2人を見送る。
 
「余が帝国皇帝、クリムゾン・ゾイドである」
「帝国宰相、ザノバン・サルーテだ」

「ギルノア王国、第1王子フリオニール・ギルノアだ。敗戦を認めると言う事か?」

「1つ訊ねる。帝国をどうする?」

「帝国の1億の民が、より良い生活を送れるようにする為に最善を尽くしましょう」
「そうか…… 民の為か…… 甘いな。フリオニール。その甘っちょろい考えで、この国を、この大陸を支配できるなどと本当に考えているのか?」

「勿論だ。これからの世界は争いなど必要はない。愛と美を貫けば幸せは訪れるのよ」
「のよ? だと…… おかまか?」

「失礼ね、お姉さまこの失礼な男の一物をもいでしまいましょう」
「ちょ、フリルちゃん。折角のシリアスが台無しじゃ無いの」

「シリアスなんてどうでもいいわ、あなたが馬鹿にしたおかまがどんだけのもんか思い知るがいいわ。掛かってらっしゃいよ。私達にあなた達2人で勝てるなら許してあげるわよ? ただし他の人がちょっとでも手を出したら、上の飛空船から魔導砲でこの帝都ごと殲滅しちゃうんだからね」
「ま、待て。フリオニールさっき民の為だとか言ってたじゃないか」

「ここで、潔く死ぬのか、帝都の民全部を引き連れて心中するのか選ばさせてあげるわよ」
「なんだかフリルちゃんやっぱりその発言って残念系だよ?」

「お、俺は、こんな奴らに負けるのか」
「皇帝…… 時代の流れです。諦めて下さい」

「ザノバン……」

「フリオニール、今更許せとは言わんが最後は戦って死ぬ道を選ばせろ」
「いいわよ、美しく返り討ちにしてあげるわ」

 そう言って2人が剣を抜いて襲い掛かって来たが、ゲイルと、キャサリンが魔法で迎え撃つと、カトリーヌが飛び込んで2人の首を一瞬でねじ切った。

「まともに相手する意味なんか無いでしょ?」

「さぁ戦争は終わりよ。今からギルノア国王がここに到着するまで誰一人、城から出る事を禁じます。言う事を聞かなければ飛空船で殲滅だからね?」
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