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第75話 スパリゾート共和国が出来るまで⑮

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「アスカよ。飛空船同士の戦闘になった場合は、勝ち目はあるのか?」
「ゼクス君がアダムスと1対1であれば、いい勝負になるかも知れませんが、狂った射手が無差別で攻撃をしてくる危険性が高いので、味方を守ろうとするゼクス君は本来の実力を出し切れないかも知れませんね」

「フリオニールの艦はどうなんだ?」
「艦体の性能は高いですけど…… パイロットがフリオニール様かブルック君だとアダムス相手には厳しいかもしれませんね…… ただ……」

「ただ、どうした?」
「魔導砲の射手を、もしキャサリンさんがやるなら、あり得ない威力の攻撃をする可能性がありますから。一撃勝負なら十分勝負になるかも」

「そうか、取り敢えずは国境に急ごう」
「了解です陛下」


 スパローがビスティア国境に向かい、ゼクス君に念話を入れる。
『そっち方面にライトニングアローが向かってるそうだけど、確認できてる?』
『えっ、情報ありがとうございます。まだ視認は出来ていません』

 そう返事をした直後に、上空から魔導砲による攻撃があった。
 僚艦である王国空軍の飛空船に直撃して、一隻が墜落して行く。
『カール、墜落艦の救助に向かってくれ。俺はライトニングアローを撃ち落とす』
『了解です。すぐに向かいます』

 飛空船は結界を展開すると魔導砲の砲撃も出来ない為に、戦闘中は基本的に結界を張らない為に、上空からの奇襲は防ぐ手立てが無かったのが災いしてしまった。

 ゼクシードはすぐに高度を上げると、戦闘態勢に入った。
「サバド、魔導砲を頼む」
「了解です王子」

 一気に上空へ向かいながら、サバドの得意属性である風属性の攻撃を繰り広げるが、敵艦の巧みな操縦により、躱される。

 ゼクシードとライトニングアローはほぼ同型の艦で、魔導砲の砲門も前後に1門ずつ備わっている。
 激しく位置取りを争いながら、空中戦が繰り広げられた。

 どちらも、相当に素早く決定打にかけていたが、マリアンヌの砲撃手としては下手くそすぎる攻撃が明暗を分けた。

「マリアンヌお前は何処を狙らっているんだ。まったく見当はずれな攻撃ばかりしやがって」
「ダニエル様だって全然当たらないじゃ無いですか。文句言わないで下さい」

 そう言いながらヤケクソで放った攻撃が、セオリー道理に避けるゼクス艦の意表を突き、後部魔導砲に着弾して破損させた。
「砲手の救護を優先だ。一度上空に退避する」

「ほらー当たったじゃ無いのよ。狙っても当たらないんだから、この方が良いんだって」
「くっ…… まぁそれもありなのか……」

「早く、とどめを刺してよダニエル様」
「アダムス、艦首をまっすぐゼクシードに向けろ。撃ち落とす!」

 そして素早く、アダムスが、艦首の向きを調整した時に遥か遠距離からの魔導砲が発射され、今度は、アダムス艦の主砲に直撃した。

 梟雄ダニエルを巻き込んで……

「えっ? ええっ? ダニエル消えちゃったじゃ無いのよ。どうするのアダムス」
「あれは、スパローからの攻撃ですね。あの距離から攻撃を当てるなど、恐らく砲手がアスカ様でしょう。主砲が無いこの状態では、対応は難しい」

 そう会話をしているうちに、今度はゼクス艦からの攻撃により、ライトニングアローの船体部分に、直撃弾を受けた。

「だめだ、不時着します」
「ええっ? そんな逃げれるの?」

「この状態では、ゼクシードとスパローを相手取るのは無理です。艦を放棄して、通商国の傭兵団に紛れ込む方が、生き残れる可能性は上がります」
「何よ、口ばっかりの役立たずね。早く降ろしなさい」

 その時だった。
 東の空から、もう一隻の飛空船。
 エレガントフリルが現れ、特大の聖属性の魔導砲が、打ち出された。

 アダムスは反射的に、マリアンヌの手を引き飛空船から飛び降り、パラシュートによる下降を始める。

 ライトニングアローは、前半分を消失させて、墜落して行った。
「どうやら、ギリギリ間に合ったようだな。主役の登場よ!」

 そう言いながら、パラシュートで下降する2人の側にブルックが艦を着陸させる。

「マリアンヌ、派手にやってくれたな。ギルノア王国第1王子フリオニールがお前を滅する」
「ハッ? あんた、フリオニール様なの? 気持ち悪い女装集団の変態じゃない? 私に捨てられてそっちの道に目覚めちゃったのね。可哀そう~。今なら私を助ければ、また前の様に好きなだけ抱かせてあげるし、男に戻してあげるよ?」

「……黙れ、雌豚。この高貴なる姿を理解も出来ないとは、お前を野放しにしてしまった責任は俺にある。大人しく首を差し出せ」
「誰が変態にやられるもんですか、逃げるに決まってるでしょ?」

 その時になると、ゼクシードとスパローも辿り着き、周りに着陸をした。
「この状態で逃げれる訳無いだろ。それにお前を一番憎んでいるのはこの俺だ」
「なっ、アダムス…… あんた…… この裏切り者……」

 アダムスが、腰に着けていた剣でマリアンヌの胸を突き刺し、そのまま自分の首筋に刃を当てると思い切り、剣を引き抜いた。

 アダムスの首は、体から離れ転がり、マリアンヌもその場で大きな腹を抱えたまま死に絶えた。

「陛下、ライトニングアローの討伐完了いたしました」
「うむ、フリオニール確かに確認した。だがまだ戦は終わっておらぬぞ。帝国を殲滅する。ゼクスはこのままビスティアを守り抜け。帝国北部とビスティア南部の国境線がかなりの兵力が出ておった。しかも民が戦っている。戦に民を巻き込む物では無い」

「はっ、ご助言痛み入ります」
「フリオニール様は、そのまま帝都へ向かって下さい。私はスープラ君とイービル領の守りを確認した後に、向かいます」

「さぁ皇帝の首を引っこ抜きに行くわよ! フリルちゃん」
「はい! カトリーヌお姉様」


 その場に転がる2つの遺体を眺めていた、ミカ様が私と陛下に訴えかけて来た。

「アダムスは、きっとマリアンヌとダニエルに騙されて嵌められたんだと思います。私の大切な部下を、弔う事をお許しいただけませんか?」

「ミカ、お前を窮地に追い込んだ相手であっても許すのか? お前の大切な領民も大勢巻き込まれたんだぞ?」
「はい、領民の方々と共に弔いたいと思います。すべては私の責任です」

「解ったお前のしたいようにしなさい」
「ありがとうございます陛下」

 ミカにより、アダムスの遺体は回収され、アスカはライトニングアローの機体をマジックバッグへと収納して、イービル領の国境へと飛び立った。
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