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第70話 スパリゾート共和国が出来るまで⑩

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 ガーゴル将軍の率いる200万の軍は、国境線から帝都方面へ向けての撤退行動を開始した。
 しかし完全徹底では無く、100万程の軍隊が、国境線からは離れているが、陣地を築いて滞在している。

 残りの半分に関しては、足の速い騎兵と戦馬車の部隊が、一路帝都ゾイドーラの街を目指し、もうもうと土煙を上げながら撤退して行く。

「うーん、ちょっとは時間稼ぎにはなるけど、戦争がこのまま終わるって言う事はあり得ないわね。フルフト様? 王都の状況はどうですか?」
「はい。王都ではまだ、作戦に参加している冒険者達以外には陛下やミカ様の死も発表しておりませんので、混乱は有りません。しかしいつまでも伏せておくわけにはいきませんし、西側諸国への対応も行わなければなりません」

「そうですね。ジャンガードを襲った部隊が、公式には帝国の部隊では無いと、バッサリ切り捨てた以上は、このタイミングでこちらが開戦を叫ぶわけには行けないですね。それでも何も知らさなければ、後から言い掛かりを言って来る国も存在するでしょうから、オリオン公爵から国民に向けて、ジャンガード領が帝国の盗賊によって襲われた事と、その対処の為に国軍が出発して、帝国との国境線が戦闘区域になった事を、伝えて頂きましょう」
「西側の各国に対しては、ミツキ様、コウゲツ様、ゼータ様の3王子に手分けして頂き、直接各国の宰相と会談をし、帝国との開戦が近い事を伝えて頂きたいと思います。その報告を受けた国家がどう動くかでギルノアの敵と味方がはっきりすると思いますので」

「了解しました。アスカ様至急その旨オリオン公爵へと伝えます」
「よろしくお願いしますね」

 さぁ次は、どう動くのか正解なのかな? 
 あれ? そう言えばフリオニール様達ってどうしてるんでしょう?

 とりあえずジャンガード領の住民の方々が半数近くは生き残って捕虜にされてたと言う事だし、ジャンガードに行けば、フリオニール様達の情報も入るでしょうから、行くしかないわね。

「シルバ、ジャンガードへ向かうから小さくなって、飛空船に乗ってね」
「アォン!」

 スパロー号だけは、私一人で操縦も魔導砲の射出も可能なように、出来ているからね。
 私の場合だと別に魔導砲使わなくても、儀式魔法の魔法陣に魔力流すだけで、十分なんだけど、そこは様式美って言う奴だよね。

 ジャンガードタウンに到着すると、救出された人々が街に戻って来ていたが、多くの家族や友人を無くして方が、暗い雰囲気に包まれていた。
「王国は必ず、今回の事件を起こした勢力を許す事はありません。帝国に必ず償わせますので、街の復興へ力をお貸しください」

 取り敢えずはそう声を掛けたけど……
 先の見通しが、現時点では全く立たないし、どうすべきなんだろう。
 
 この辺りは、私が手を付けるべき問題ではなく、オリオン公爵達の決定に従うしか無さそうだよね。
 イスメラルダが公爵の側に居てくれてるから、私とは良好なお付き合いが出来るだろうし……

 次に、私が行ったのはジャンガードを襲った軍の尋問だ。
 状況の報告は無かったから、知らなかったけど……
 2万の軍のうち半数は、飛空船の砲撃で殲滅されたらしい、フリオニール様だろう。
 結構滅茶苦茶だね……
 残りの半分は、ジャンガード領近郊に拘束されているけど、何故か…股間を引きちぎられた兵が200人程も居るらしかった。

 まぁ…… カトリーヌさんで間違いないか……
 この世界には、ポーションが存在するので、引きちぎられてもポーションを掛ければ死ぬことは無いからね。

 ただし、はえてはこないけどね。
 エリクサーなら、欠損を復活させる事は出来るけど、現状でもエリクサーは私しか作る事は出来ないし、一般流通はさせていないから、この人たちが手に入れる事は難しいだろう。
 まぁ自業自得だからしょうがないよね!

 でも、生き残った兵たちの中で指揮官クラスの人間に尋問した時に、有力な情報が手に入った。
 まず、この軍はダニエル将軍と言う公爵家の3男が指揮する部隊であり、そのダニエル将軍が最近連れ歩いてる女性と共に、飛空船を盗み出したらしかった。

 残念ながら、実行犯はミカ様の専属パイロットであった、アダムスが行った犯行らしいけど、この辺りは何らかの策謀があったのかもしれない。
 そして、衝撃的な事実は、ミカ様やブリュンヒルドに搭乗していた陛下達らしき人は、魔導砲の直撃を受けても生き残り、捕虜として連れて行かれていたらしいが、フリオニール様の船がこの軍隊の先頭集団に魔導砲を撃ち込んだ時に、行方不明になったという事だ。

 普通に直撃して居れば、陛下達がもし助かっていたとしても、フリオニール様がとどめを刺しちゃったとか、ありそうで怖い……

 キャサリンさんやカトリーヌさんが居るから、よっぽど大丈夫とは思うけど、フリオニール様だけに、全面的な信用が出来ないのも確かなんだよね……

 しかし、問題のライトニングアロー号と、エレガントフリル号は両方とも現時点では、どちらも念話に反応してくれないし、アレキサンダー王子からの連絡を待つしか無いよね。

 そう思ってると、アレキサンダー王子から連絡が入った。
『アスカ様、ライトニングアローをユグドラ共和国外周で発見しましたが、帝国方向へ逃走されてしまいました。帝国内に追撃しても良いと思いますか?』
『追撃ならば、帝国領土に入っても問題ありません。しかし魔導士団による儀式級魔法での攻撃などを受ければ、飛空船も無敵ではありませんので、十分な注意を払って下さい。逃走先を確定できれば私も向かいます』

『了解です。ダルドの言葉を信じると、方向は帝都ゾイドーラへ向けて一直線に移動しているとの事です』
『解りました。では私も一度南の海上方向に出て、ゾイドーラへすぐに向かいます』

 結局、帝都での決戦になるのかな。
『スープラ君、国境地帯での警備を任せますね。帝国との交戦に関しては、スープラ君とセリナちゃんの判断で構いません。ゼクス君とも連絡を密に取って下さい』
『了解しました。アスカ様は何処へ?』

『私は、エレガントフリル号が恐らく帝都に向かったと思いますので、帝都に向かいます』
『了解です』
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