39 / 110
第39話 閑話 総司爺ちゃんの秘密
しおりを挟む
147年ぶりにこの部屋に人が訪ねて来おった。
わしの玄孫《やしゃご》に当たる俊樹じゃった。
まぁわしの土地に建てておった土蔵に入口を作っておったから、不思議な事ではないが、明治、大正、昭和、平成を経たこの令和の時代まで手放さずに同じ土地に住み続ける家系は、今の時代では稀有《けう》であると言っても良かろう。
わしはこの国が幕末と呼ばれた時代、血気盛んな時代じゃったな。
とてつもない人間エネルギーを持った者たちが集《つど》った時代に、神を名乗る女に拉致られ、全く別の世界へと飛ばされた。
わしだけで無く、その当時この世界で特に強烈なエネルギーを発していた連中が、4人じゃった。
事が終って戻って来てみれば、わしらは都合よく暗殺されておったり病死しておったりの事実にすり替えられて、戻るべき場所は無くなっておった。
それぞれが名を変え、その後の生を全うしたが、異世界で身に付けた大いなる力は、その後のこの世界に大きな影響を与えた。
決して表に出る事はしなかったが、影の支配者としてこの国を牛耳る事になったんじゃ。
じゃがその中で唯一わしだけは、支配に興味は無いと、奴らの相談を受けるだけの立場となり、余生をこの小倉の街で過した。
勿論何もしなかった訳ではない。
子孫を残す事もした。
そして、超常の力を身に付けたものとして、この力が必要となる未来が起こる可能性も考慮し、肉体的な死後も意識を伝える方法を模索した。
わしが肉体的な死を迎える頃には、精神生命体として存在する技術も実現可能となった。
ただし魔素が必要であったがな。
わしらが持ち帰った、魔石から魔素を抽出しながら、わしら4人の意識は現代にも存続し続ける。
他の3人は現在も政界、財界、裏社会にそれぞれ強く影響力を残しつつ、各家の子孫の当主には、わしらの存在を伝えておる。
この世界の仕組みを牛耳るその3家は、
勇者じゃった龍馬が坂口家を興し財界を束ね、
剣聖じゃった晋作が高松家を興し政界を束ね、
大魔導士じゃった八郎が清海家を興し軍を束ね、第二次大戦の終戦後は裏社会を束ねた。
わしはこの3人のやり過ぎを節目節目で宥めながら、この国の発展を見守っておった。
今のわしらは、精神生命体としての存在を維持しておるが、その為にはこの世界には存在せぬ魔素が必要となる。
わしは、他の3人の様に体内に宿した魔素を、この世界を牛耳る為に消費する事をせずに、異世界との間に次元の扉を構築する事を研究し続けた。
そして長い年月をかけ、研究は完成し次元の扉を作り上げた。
しかし既に、次元の扉を渡る為に必要な肉体は存在しないし、貯えておった魔素はほぼ使い果たした。
他の3人はとっくに使い果たしておるから、わしが定期的に3人の元を訪れて、消滅を免れる程度に補給しておるけどな。
かといって、他の3人に次元の扉の完成を伝え、異世界に渡れることを教えるのも面白くない。
まぁ実際には次元の扉を渡るには、大きな問題があるんじゃがな。
魔素を纏っていないと、ほぼ向こうの世界に渡った時点では、単細胞生物として転移してしまうし、その単細胞生物に称号である異世界からの訪問者が付与されると、キャパシティーを大幅に超えるので、渡った瞬間にはじけ飛ぶ。
向こうの世界で最低限の生命活動が出来る状態で渡れる可能性は、魔素を持たない状態であれば、3000万種にも上る生命体の中から、せめて脊椎動物として生まれ、肺呼吸が可能な生命体である事が条件じゃな。
確率としては、0.1%程度じゃな。
俊樹や香織には確実に生命活動が維持できるだけの魔素を渡しておったから、心配は無かったがの。
確実に人間になれるだけの魔素は、わしの魂との引き換えになるから流石に無理じゃった。
向こうで活動する事が出来るのは、ほぼ魔素を纏った状態で渡れる者だけという事じゃな。
999/1000で渡った瞬間に死ぬと解って行動できるものは、少ないじゃろうな?
わしが魔素を纏わせた者以外では、わしの仲間じゃった坂口家、高松家、清海家の現役当主であれば、あ奴らが依り代に使っておるから、向こうの世界でも生命活動を維持できるであろう。
奴らが、精神生命体としての維持が出来る程度の魔素を売り付けながら、わしが奴らの手に入れた全てを手にするのも一興かもしれん。
まぁ実際はそんな事に興味は無いがな!
ここまで読み進んでくれたならば、当然気付いておるじゃろうが、わし達は異世界に行くまでは、
海援隊の坂本龍馬
長州騎兵隊の高杉晋作
浪士組の清河八郎
新選組の沖田総司
と名乗っておった。
これでも若い頃にはかなりもてたんだぜ?
わしの菊一文字を俊樹に譲りたいが黒猫では使い道が無いし、こっちで持ち歩いたら普通に捕まるな。
龍馬達が俊樹の存在に気付けばそのうちコンタクトをとって来るかもしれんが、わしからは今の所教える必要も無いか。
あやつらは代々の当主の身体に宿り、無駄に魔素を消費し続けるから、わしの持つ魔石を言い値でいくらでも買ってくれる良い客ではあるからの。
◇◆◇◆
俊樹はあの世界での目的を見付ける事が出来るかの?
そして、目的を無事果たせるかの?
わしの玄孫《やしゃご》に当たる俊樹じゃった。
まぁわしの土地に建てておった土蔵に入口を作っておったから、不思議な事ではないが、明治、大正、昭和、平成を経たこの令和の時代まで手放さずに同じ土地に住み続ける家系は、今の時代では稀有《けう》であると言っても良かろう。
わしはこの国が幕末と呼ばれた時代、血気盛んな時代じゃったな。
とてつもない人間エネルギーを持った者たちが集《つど》った時代に、神を名乗る女に拉致られ、全く別の世界へと飛ばされた。
わしだけで無く、その当時この世界で特に強烈なエネルギーを発していた連中が、4人じゃった。
事が終って戻って来てみれば、わしらは都合よく暗殺されておったり病死しておったりの事実にすり替えられて、戻るべき場所は無くなっておった。
それぞれが名を変え、その後の生を全うしたが、異世界で身に付けた大いなる力は、その後のこの世界に大きな影響を与えた。
決して表に出る事はしなかったが、影の支配者としてこの国を牛耳る事になったんじゃ。
じゃがその中で唯一わしだけは、支配に興味は無いと、奴らの相談を受けるだけの立場となり、余生をこの小倉の街で過した。
勿論何もしなかった訳ではない。
子孫を残す事もした。
そして、超常の力を身に付けたものとして、この力が必要となる未来が起こる可能性も考慮し、肉体的な死後も意識を伝える方法を模索した。
わしが肉体的な死を迎える頃には、精神生命体として存在する技術も実現可能となった。
ただし魔素が必要であったがな。
わしらが持ち帰った、魔石から魔素を抽出しながら、わしら4人の意識は現代にも存続し続ける。
他の3人は現在も政界、財界、裏社会にそれぞれ強く影響力を残しつつ、各家の子孫の当主には、わしらの存在を伝えておる。
この世界の仕組みを牛耳るその3家は、
勇者じゃった龍馬が坂口家を興し財界を束ね、
剣聖じゃった晋作が高松家を興し政界を束ね、
大魔導士じゃった八郎が清海家を興し軍を束ね、第二次大戦の終戦後は裏社会を束ねた。
わしはこの3人のやり過ぎを節目節目で宥めながら、この国の発展を見守っておった。
今のわしらは、精神生命体としての存在を維持しておるが、その為にはこの世界には存在せぬ魔素が必要となる。
わしは、他の3人の様に体内に宿した魔素を、この世界を牛耳る為に消費する事をせずに、異世界との間に次元の扉を構築する事を研究し続けた。
そして長い年月をかけ、研究は完成し次元の扉を作り上げた。
しかし既に、次元の扉を渡る為に必要な肉体は存在しないし、貯えておった魔素はほぼ使い果たした。
他の3人はとっくに使い果たしておるから、わしが定期的に3人の元を訪れて、消滅を免れる程度に補給しておるけどな。
かといって、他の3人に次元の扉の完成を伝え、異世界に渡れることを教えるのも面白くない。
まぁ実際には次元の扉を渡るには、大きな問題があるんじゃがな。
魔素を纏っていないと、ほぼ向こうの世界に渡った時点では、単細胞生物として転移してしまうし、その単細胞生物に称号である異世界からの訪問者が付与されると、キャパシティーを大幅に超えるので、渡った瞬間にはじけ飛ぶ。
向こうの世界で最低限の生命活動が出来る状態で渡れる可能性は、魔素を持たない状態であれば、3000万種にも上る生命体の中から、せめて脊椎動物として生まれ、肺呼吸が可能な生命体である事が条件じゃな。
確率としては、0.1%程度じゃな。
俊樹や香織には確実に生命活動が維持できるだけの魔素を渡しておったから、心配は無かったがの。
確実に人間になれるだけの魔素は、わしの魂との引き換えになるから流石に無理じゃった。
向こうで活動する事が出来るのは、ほぼ魔素を纏った状態で渡れる者だけという事じゃな。
999/1000で渡った瞬間に死ぬと解って行動できるものは、少ないじゃろうな?
わしが魔素を纏わせた者以外では、わしの仲間じゃった坂口家、高松家、清海家の現役当主であれば、あ奴らが依り代に使っておるから、向こうの世界でも生命活動を維持できるであろう。
奴らが、精神生命体としての維持が出来る程度の魔素を売り付けながら、わしが奴らの手に入れた全てを手にするのも一興かもしれん。
まぁ実際はそんな事に興味は無いがな!
ここまで読み進んでくれたならば、当然気付いておるじゃろうが、わし達は異世界に行くまでは、
海援隊の坂本龍馬
長州騎兵隊の高杉晋作
浪士組の清河八郎
新選組の沖田総司
と名乗っておった。
これでも若い頃にはかなりもてたんだぜ?
わしの菊一文字を俊樹に譲りたいが黒猫では使い道が無いし、こっちで持ち歩いたら普通に捕まるな。
龍馬達が俊樹の存在に気付けばそのうちコンタクトをとって来るかもしれんが、わしからは今の所教える必要も無いか。
あやつらは代々の当主の身体に宿り、無駄に魔素を消費し続けるから、わしの持つ魔石を言い値でいくらでも買ってくれる良い客ではあるからの。
◇◆◇◆
俊樹はあの世界での目的を見付ける事が出来るかの?
そして、目的を無事果たせるかの?
10
お気に入りに追加
508
あなたにおすすめの小説
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
家族で異世界転生!!
arice
ファンタジー
普通の高校生が神のミスで死亡し異世界へ
シリアス?あるわけ無い!
ギャグ?面白い訳が無い!
テンプレ?ぶっ壊してやる!
テンプレ破壊ワールドで無双するかもしれない主人公をよろしく!
------------------------------------------
縦書きの方が、文章がスッキリして読みやすいと思うので縦書きで読むことをお勧めします。
エブリスタから、移行した作品でございます!
読みやすいようにはしますが、いかんせん文章力が欠如してるので読みにくいかもです。
エブリスタ用で書いたので、短めにはなりますが楽しんで頂ければ幸いです。
挿絵等、書いてくれると嬉しいです!挿絵、表紙、応援イラストなどはこちらまで→@Alpha_arice
フォロー等もお願いします!
婚約者を奪われて冤罪で追放されたので薬屋を開いたところ、隣国の殿下が常連になりました
今川幸乃
ファンタジー
病気がちな母を持つセシリアは将来母の病気を治せる薬を調合出来るようにと薬の勉強をしていた。
しかし婚約者のクロードは幼馴染のエリエと浮気しており、セシリアが毒を盛ったという冤罪を着せて追放させてしまう。
追放されたセシリアは薬の勉強を続けるために新しい街でセシルと名前を変えて薬屋を開き、そこでこれまでの知識を使って様々な薬を作り、人々に親しまれていく。
さらにたまたまこの国に訪れた隣国の王子エドモンドと出会い、その腕を認められた。
一方、クロードは相思相愛であったエリエと結ばれるが、持病に効く薬を作れるのはセシリアだけだったことに気づき、慌てて彼女を探し始めるのだった。
※医学・薬学関係の記述はすべて妄想です
【完結】悪役令嬢と言われている私が殿下に婚約解消をお願いした結果、幸せになりました。
月空ゆうい
ファンタジー
「婚約を解消してほしいです」
公爵令嬢のガーベラは、虚偽の噂が広まってしまい「悪役令嬢」と言われている。こんな私と婚約しては殿下は幸せになれないと思った彼女は、婚約者であるルーカス殿下に婚約解消をお願いした。そこから始まる、ざまぁありのハッピーエンド。
一応、R15にしました。本編は全5話です。
番外編を不定期更新する予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる