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第31話 王都への旅立ち

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「リュミエルちゃん、シャンプーとリンスって凄いねぇ。これもさ先日言って居たメークのお店で髪の毛を洗ってあげるサービスを始めたら、凄い人気になる事は間違いないと思うよ? 子供達でも比較的楽に出来る仕事になりそうだし」
「確かに悪く無いですね。私達が戻ってくるまでに、お店のイメージとか考えて置いて下さいね」

「何だかこの前まで借金でつらい思いしてたのが嘘みたいに今は幸せです。これでお母さんの病気が治れば、言う事無いんだけどね」
「シスターそれは私が必ずエリクサーを手に入れますよ」

「マリアちゃん。ありがとうでも伝説のエリクサーなんて本当に手に入るのかな?」
「アルザス先生の元も訪ねて来ますから、きっとヒントくらいは教えて貰えると思います」

「俺も頑張るから、心配しないで。それよりも2週間以上はマリアが居なくなるから、ママの病院はちゃんと行ってね。それとさ、子供達の西門の畑の水やりを時々見てやって欲しいかな? 水をやって雑草を取るだけでいいからね」
「テネブルちゃん解ったわ。マリアが子供達のお給料って言って沢山お金を置いてくれてるから、きちんとやらせるからね」

 大体の伝えたい事を伝えて、俺達はマリアの家へと戻った。
 マリアの家へ戻ると部屋の中に、柔らかい毛布を敷いた、リュミエルって表札のかかった、犬小屋が用意して有って、おトイレ用の砂を敷き詰めた木箱も有った。
「マリア、ありがとうフカフカで気持ちよさそうだよ。でもテネブルのは無いの?」
「リュミエル。気に入ってくれたみたいで良かった。テネブルは私のベッドで一緒に寝るから、大丈夫だよ」

 そうマリアが言うと、返事もせずにリュミエルは後ろを向いて犬小屋に入ったけど……ちょっと寂しそうだった。
『香織、妬いてる?』
『妬いて無いよーだ』

 これって妬いてるよな?
 とは思ったけど、マリアの胸枕で寝れる幸せを放棄する訳には行かないぜ。

 フカフカの胸枕で朝までぐっすりと寝た。
 朝起きると、マリアが顔を洗って体を拭いていた。
 朝から元気にブルンブルン揺れてるぜ!

 俺はリュミエルの小屋に行って、リュミエルのほっぺたをペロッと舐めた。
「香織おはよう」
「うーん。俊樹兄ちゃんおはよう。俊樹兄ちゃんの舌ってザラザラなんだね。なんだか気持ちいいな。日本でも朝起しに来てくれて、同じ事してくれてもいいんだよ?」

「それは色々問題ありすぎるだろ!」
「ふーんケチ。ちょっとおトイレ行くから見ないでね?」

「恥ずかしいのか? 犬なのに」
「その感覚無くなったら、マジでヤバいって。ねぇ俊樹兄ちゃん猫とか犬って歯磨きどうするのかな? 何日も歯を磨けないとちょっと辛いかも」

「あ、どうするんだろうな? 今までペット飼った事とか無いし、解らないぜ」
「今はしょうが無いから、マリアに頼んで磨いて貰おうか?」

「そうだね」

 俺はマリアに頼んで、リュミエルと俺の歯を磨いて貰えるように、お願いした。
 何だかミントの香りがする様な木の枝を細かく裂いたような、不思議な棒で磨いてくれたけど、結構痛いな。

 次に戻った時に歯ブラシも買って来よう。
 売れるかもね?
 歯磨き粉は入れ物の問題があるよな。
 皮でケーキ用の絞り袋みたいなの作ればいいかな?

「準備は良いかな? そろそろ行くよ」

 マリアがそう言うと、俺とリュミエルは「「了解」」と伝えた。

 サンチェスさんとの待ち合わせは、商業ギルドだ。
 まだ朝の7時前だけど、サンチェスさんの従者の様な人達が10人程で2台の馬車に荷物を積み込んでいた。
 それと別に客車の様な馬車も1台ある。

「おはようございます、護衛依頼を受けたマリアです。よろしくお願いします」

 マリアが元気に挨拶をすると、「あらこんな可愛いお嬢ちゃんが護衛なんて大丈夫なのかい? パーティメンバーの人とか居るのかい?」と聞かれた。

「私はソロですけどこのテネブルとリュミエルが居てくれるから、パーティと比べても、負けないと思いますからご安心ください」
「そうなのかい? よろしく頼むね」

 そんな挨拶をしていると商業ギルドの中からサンチェスさんが顔を出し、
「マリア、テネブルとリュミエルを連れて入っておいで」
 と声を掛けられた。
「はい。どうしたんですか?」

「他の連中にはテネブルのアイテムボックスの事とかは伝えていないから、一応私達だけで、その辺りの事は話しておこうと思ってな」
「そうだったんですね」

「テネブルには、貴重品の運搬もお願いしていいかな?」
「大丈夫です」
当然聞こえる音は「ニャン」だぜ!

「それと、そのリュミエルももしかしてアイテムボックスが使えたりするのかい?」
「サンチェスさんなら大丈夫だと思いますから、教えますけど使えます」

「それは凄いな。マリア、出来ればこの先もわし専属の護衛をやって欲しいが駄目かな?」
 そう聞かれたけど、マリアは俺に確認を取ってくれた。
「テネブル、どう思う?」
「色々自由な活動をしたいから、専属は無理だと伝えて」

「ごめんなさいサンチェスさん、テネブルは専属は無理だって」
「そうか残念だがしょうがないな。都合の良い時だけでも頼むな」

「解りました」

 商業ギルドの中で貴重な商品や、商売用の資金。手紙類を預かりインベントリへとしまった。
 マリアが首からぶら下げているデジカメに、サンチェスさんが興味を示していたが、これはまだこの世界で広めるのは無理があるから、適当にごまかして貰った。

 出発時間の15分ほど前になると、今回一緒に護衛についてくれるBランクのパーティー、『ラビットホーン』の人達が現れた。

 ウサギの角って……あんまり強くなさそうな名前だな……
 当然ランクの低いマリアの方から挨拶をした。

「今回ご一緒させて頂くCランク冒険者のマリアです。よろしくお願いします。回復魔法がハイヒールとキュアは使えます。武器は弓ですけど戦闘は主に従魔のテネブルとリュミエルが頑張ってくれます」
「ああ、よろしくな。俺はラビットホーンのリーダーのチェダーだ。重剣士をやっている。他のメンバーは、火魔法使いのマリボと槍使いのマーブル、スカウトのゴーダだ。回復が使えるのは助かるな。うちはいつもポーションガブ飲みだから利益率が低いからな。ソロなら気に入ってくれたらパーティ加入も考えてくれよ?」

「それは、お返事は出来ませんけど、いろいろ勉強させて下さい」
「ちょっと、チェダー、初対面で一気にまくしたてるから、引かれちゃってるじゃ無いの。マリアちゃんは若く見えるけどいくつなの? ソロでCランクとか凄いね」

「今は16歳です。私は全然弱いんですけど、テネブルとリュミエルが強いから何とかって感じです」
「へぇこんなかわいい子猫ちゃんとワンちゃんが強いとか、凄いね。後で戦ってるとこも見せてね」

「「いいですよ」」
 当然聞こえる音は、「ニャァン」と「ワゥウ」だけどな!

 サンチェスさんの方も準備が整ったようで、マリアとリュミエル『ラビットホーン』の女性2人、マリボさんとマーブルさんは客馬車に乗り込み、俺は馬車に並走して、チェダーさんとゴーダさんは騎乗での並走をする形で隊列はスタートした。

 馬車はそれぞれ2頭立てで、とても大きな馬だ。
 競馬場で良く見ていたサラブレットと比べると、倍はあるかな?

 流石にサンチェスさんがいつも依頼している人たちだけあって、とても気の良さそうなパーティで安心したぜ。
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