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第91話 邪神と創造神

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 香奈が魔人の連中の要求に対して、自分が説明すると言い出した。
「香奈? 今回の事件には香奈が関わっているのか? 沖縄では少なく無い犠牲も出てるし、返答次第じゃ許す事が出来ないぞ?」
「私は沖縄の時点では何も知らなかったよ。その後でこいつらの存在に気付いてから色々調べてみたけどね」

「まぁ信用するしか無いな。それにしても何故核を盗もうとかしたんだ」
「未来の改変かな? この世界で爆発させる事が目的じゃ無いよ。向こうの世界に持ち込んでイルアーダの世界を構築しているマザーコンピューターを破壊して、あの世界を解放する事が目的だったみたいだよ」

「なんで核が必要なんだ? 向こうには魔法とかでいくらでもどうにかなるだろ?」
「あの世界は、良くも悪くもデータの世界だから、無かったことに出来ちゃうんだよ。あの世界で育った力ではね。それに翔も向こうではほぼ成長しきって居たでしょ? でも大規模殲滅魔法みたいなのは覚えれ無かった筈だよ?」

「ああ、確かにそうだな1対1で戦うには困らないパワーや魔法は身に付けていたが、大規模破壊兵器や殲滅魔法は無かったな」
「マザーコンピューターを破壊できる戦力はデータ上存在できない様になってたからだよ。マザーコンピューターを守る結界を破壊できる武器や魔法は存在しないの」

「それで今向こうの世界で起ころうとしている事は、どういう事なんだ?」
「すでにプレーヤーの存在の無いあの世界は、一つの真実の世界なの。だから世界の進歩をさせたい勢力と、今まで通りにあの世界観を維持し続けるだけの状態を保ちたい勢力との争いだよ」

「それは、あの世界の住人たちが求めてる事なのか?」
「いえ……維持したい創造神と解放したい邪神の争いだね」

「なぁ? あの世界の人達って感情はあるよな?」
「うん、完全にこの世界で生きてる人と同じように自分の意思で生活してるね。人々も魔物と呼ばれる存在も」

「なんで、それを創造神や邪神が勝手に進化させようとか、このままにしておこうとか決めるんだ?」
「エゴかな?」

「あの世界に神なんて必要無いだろ? もしさマザーコンピューターが無くなったとしたら、あの世界は消滅するのか?」
「既に完全な有機物として存在してるから、存在は消えないと思うよ。自由に進化するんじゃないかな?」

「それでいいんじゃないか?」
「それなら、翔は邪神の側だね」

「いや俺はその邪神も倒すぞ? 上位の存在がある世界なんて、自立できて無いだろ?」
「そう言うと思ったよ創造神を倒すための共闘もしないんだよね?」

「倒す相手と共闘は選択に無いな」

 香奈は俺の返事を受けて魔族の連中に対して言葉を投げかけた。

「邪神に伝えて置いて、一緒には戦わないけど、創造神とマザーは片付ける。その後で支配をしようとするなら邪神様にも退場して貰うって」

「魔王様、それでよろしいのですか?」

「どうせ、邪神の事だから向こうの世界を纏めたらこの世界との抜け穴を使って、こっちの世界も手に入れてしまおうとか思ってるでしょうからね」

「おい香奈、それはマジな話か?」
「予想だよ、でも邪神が世界平和を望むっておかしいでしょ?」

「向こうの世界と繋がっている7つのダンジョンは、潰せるのか?」
「大罪系悪魔をそれぞれ倒してしまえば、きっとマザーがなければ復活しないから、それで大丈夫と思うよ」

「問題は俺達が戻って来れるかどうかだな」
「それは保証できないけど。ホールが繋がって居れば、いつかはこの世界が向こうの世界に飲み込まれる未来しか見えないから、私はこの世界を守るためにそれが必要なら、向こうに残っても構わないと思ってるよ。翔が一緒ならね」

「あらあら香奈ちゃん抜け駆けはダメよ。翔君の独り占めは許さないんだからね」
「美緒、シリアス展開をぶち壊すよな……お前は」

「私だって、パパとママに翔の子供を産めって言われてるんだから引き下がらないよ?」
「リンダ……まぁいいや。俺は全てを守ってちゃんと戻ってくる方法を見つけるさ」


 俺は魔族の3人をチェルノブイリに転移で連れて行き、送り返した。
「一応伝えて置く。俺が向こうの世界に行く前に再びお前たちがこっちの世界に姿を現せば、問答無用で倒す。邪神には当面マザーと創造神を、俺が倒すまでは何もするなと言って置け。俺はイルアーダもこの世界も必ず守って見せる。勇者だからな」

 取り敢えず失われた核弾頭も取り戻せたし、当面の危機は去ったと思うが、何時までも放置できる問題では無いな。

「香奈、ヤリマンスキー達も含めてしっかり鍛えて置いてくれよ。俺も出来る限りの事はするが、流石に一人じゃ荷が重いと思うからな」
「解ったよ。でもさ翔って勇者より魔王の方が似合ってるよ? 神を倒して世界を征服するとか」

「誰が征服するって言ったよ? 自由にして欲しいだけだ」
「それを成し遂げた人を、きっとイルアーダの人々は新たなる神と思うでしょうね」

「え? そんなの困るからな? 解放して戻ったら二度とイルアーダには関わらないぞ」
「まぁいっか。全てが済んでからの話だよね」

「取り敢えず香奈も明日からは、学校もアイドル活動も復活しろよ? CM撮影とかも、香奈が居なくてストップしてる状態だからな」
「えー? 忙しいのは嫌だな」

「美緒、『Hope Land』の開発はどんな具合だ?」
「うん。至って順調だよ。アメリカが協力してくれてるし、難民の人達も生活が保障されてるから、笑顔が増えて来たしね。健康状態が回復した難民の人達が次の難民を迎え入れる為のスタッフになってくれてるから、人手の問題も殆ど無いしね。産業の創出が少し出遅れてるかな? 20万人の生活を翔君の資金だけで賄うのは流石に無理があるからね」

「そうか、男女比率はどうなんだっけ?」
「現状では、男性は未成年者しか受け入れて無いから、女性が8割だよ」

「そうか『Hope Land』に閉じ込める事が目的じゃ無くて、自立する力を身に付けて貰って、世界に羽ばたける事が目的だから、それはそのままでいいかな。『Hope Land』で成人を迎えた男性には、警備や力仕事などの選択肢を残してあげれば良いさ」
「解ったよ。翔も忙しいだろうけど開発は少し手伝ってね」

「うん、大丈夫だ。ビアンカとヤリマンスキーもなんだかんだ言いながら役に立つしな」
「そうだね」

 さぁ当面の問題はいったん落ち着いたから、デカスロン十種競技頑張るぜ!
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