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第61話 テイミングと歌舞伎町の謎事件【後編】
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『Star prince』は歌舞伎町の飲食店ビルの中に店舗を構えている。
ビルの1Fにキャストの顔写真が載った大きな看板があり、日本人キャストばかりでなく外国人も居て、現役モデル多数在籍とアピールしてあった。
エレベーターへ乗って7Fにある店舗まで上がると、このフロアは1フロア全部『Star prince』になってるみたいで、接客中以外の全キャストであろう10人ほどのホストが左右に勢ぞろいして出迎えられた。
俺は、綾子の大きめのバーキンの中に隠れてたぜ。
「「「ようこそ『Star prince』へプリンセス!」」」と声の揃った出迎えをされた。
綾子とナーシャのいかにもセレブリティーな姿に、初見な客にもかかわらず黒服を着た人が、一番奥まったボックスの方へと案内してくれた。
店内は薄暗く、中央部分に積み重ねてあるシャンパングラスのタワーだけがスポットを浴びてきらびやかに輝いている。
全体的に内装にはお金がかかっていそうな感じだな。
店内を見渡すと、ざっと半分程の席が埋まっている。
ミサキが言っていた通りに、首にチョーカーを巻いた女性が何名かいるのも確認できる。
席に案内されると、俺は綾子のバッグから抜け出して、ソファーの下へと隠れた。
これだけ足元が暗いと、黒猫の俺が店内を移動してもほぼ気付かれたりしないだろうな。
黒服が席へやってきて「お姫様、初めてのご来店でお間違いはございませんか? 指名の王子はいらっしゃいますか?」と尋ねてきた。
ナーシャが答える「初めてで間違いないわ、指名も今の所無いから素敵な子をよこしてね」
と言って、黒服の胸ポケットへチップを差し込んだ。
なんかナーシャ妙に慣れてねぇか?
一分ほどの時間をおいて、2人のホストが現れた。
「クウガです。よろしくお願いしますプリンセス」
「アキトです。素敵な夜を捧げます」とそれぞれにナーシャと綾子の手を取り、ひざまづいて頭を下げた。
クウガと言う男は下の看板でも中央に載っていたな、恐らくナンバー1だろう。
日本人離れしたスタイルと顔の彫りだから、恐らくハーフなんだろうな?
アキトは、童顔の癒し系キャライメージだ。笑顔が幼く見えアイドルグループのメンバーと言われても普通に納得する感じだ。
「お飲み物はどうしましょうか?」
「シャンパンを入れてもらうかしら?ドンペリニヨンのロゼでいいわ」とナーシャがいきなりのピンドンオーダーを入れた。
「「ピンドンイタダキマシター」」といきなり、落ち着いた店内の雰囲気から一変ホストクラブらしい景気のいい掛け声が上がった。
この温度差が、魅力なのかな??
「今日はラストまで落ち着いて飲みたいから、このまま指名させてもらうわ。楽しませてね」
と、クウガとアキトをそのまま指名することを伝えると、クウガが合図を出した。店内の大型ディスプレーにクウガのプロモーションビデオの様な映像が映し出され、「こう見えて俺、この店のNO1なんだ。NO1だけに許された指名が入った時のVがこんな感じで流れるんだよね、出来るだけ席を離れないようにさせてもらうけど、他のお客さんに呼ばれちゃったら、挨拶だけは行かせてもらうね」
と言ってきた。
「サブでもう一人付けてもいいかな?」
と聞いてきたのでOKをだすと、盛り上げ担当みたいな少しお姉が入ったような筋肉キャラが現れた。
ワイシャツが筋肉ではち切れそうな感じで素肌に張り付いてて何故か乳首が立っているのが目立つ。
演出なのか? これは??
「キョウっていいます。姫よろしくお願いします」
結局このキョウと名乗る男は凄い盛り上げ上手で、楽しい雰囲気の中時間は過ぎていった。
でも別段怪しい所は感じないな。
俺は周囲を見回し、首にチョーカーを巻いている女性がいる席の下へと潜り込んだ。
目はトロンとなっていて、担当ホスト君にしなだれかかっている。
このホストは完全に欧米人だな。
「今日はアフターは大丈夫なんだよね?」
「ああ、いつもの様に最高のひと時を過ごそう」
「嬉しい」
「俺もだよ」
どうやら、大人な時間の約束の様だけど、ちょっと気になったから鑑定を掛けてみた。
あー……解っちゃった。
ヤバイよなこれ、どう対処しようかな……
このホスト君ヴァンパイアだよ、チョーカーを巻いた女性も既にハーフヴァンパイアと表示されている。
気になって他のチョーカーを巻いた女性のいる席もすべて回ると、ヴァンパイアが5人もいて1人はノスフェラトゥと言う上位種も混ざっていた。
ヴァンパイアはみんなLV1だがノスフェラトゥはLV424もあるぞ……
この世界って魔族も結構紛れ込んじゃってるのかよ?
これは捕獲するか殲滅するか、迷う所だな。
ヴァンパイア系統は、知能もあり会話も成立するし自分たちのルールの中で生きているだけだから、人間から見たら悪ではあっても、生きていくために血が必要で種族の繁栄のためには出産ではなく、眷属化を行って増えていくという種類ってだけだからな。
別に面白半分に虐殺をするわけでもないし、眷属とした相手も大事にするし、判断に迷うな。
きっと消えたジュンって言う女の子は、完全に眷属化してしまって今度は仲間を引き入れる立場になって、どこかで獲物を見繕っているのだろう。
ノスフェラトゥは魔族の中でも最上位種に近く、四天王の次の立場くらいだ。
これは、俺が出張るよりも香奈の担当だな。
情報収集はもう十分だな。
まぁ綾子とナーシャも楽しんでるから、ラストまでは居させてやろう。
キョウに乗せられて、ピンドンでシャンパンタワー始めてやがるぜ。
綾子先生、嵌《はま》ったりしないかな? 免疫無さそうだから心配だよ。
クウガとアキトも超セレブな上客ゲットと思って、べったり離れないしな。
閉店までは暇だから、香奈に連絡を入れとくとするか。
『香奈、ノスフェラトゥとヴァンパイアがこっちの世界に紛れ込んでるぞ、既に眷属化を始めていて何人か行方不明も出てる』
『えーマジで? ノスフェラトゥの個体名は誰?』
『シルヴァだな』
『あーシルヴァかぁ、策士だからあまり好きじゃなかったんだけどね、一度話してみるしか無いわね』
俺は、黒猫の姿のままシルヴァの付いている席の下へと移動して、念話で話しかけた。
『シルヴァ。魔王が用があるみたいだが外に出れるか?』
「なんだと……解った。時間を10分程貰えるか? お客様がいるからな」
「言っとくが、悪あがきはするなよ? 俺はイルアーダで魔王を倒した勇者だ。お前ごときは片手で捻りつぶせるからな」
「何もしない……魔王様と話せるならそれで十分だ」
『翔、どこへ行けばいいの? 今新宿ド〇キの前に来てる、私の格好でこの時間にここにいると補導されちゃうよぉ』
『なんで、考えなしにそんな目立つとこに来るかな……コンビニに入って待っててくれ。俺は今黒猫の姿だ。雑誌売り場の前に黒猫見つけたら出てきてくれ』
『解ったよぉ早く来てね』
そして俺は香奈と合流して『Star prince』の前に戻った。
香奈が俺を抱いた状態で看板の前に立っていると、客の女性と一緒にシルヴァが降りてきた。
客の女性にハグをして丁寧に頭を下げて見送ると、香奈の方に目を移した。
「魔王様、久しいですね」
「ここでは私が困る。手を握ってくれ」
シルヴァが手を握ると俺が転移を発動して、『Hope Land』の拠点に移動した。
TBと美緒は日本の拠点にいるようだ。
「シルヴァいつからこっちに来たの?」
「こちらの世界に来て4か月程になります。チェルノブイリと言う場所だったと思いますが、私は飛翔が出来ますので、包囲を潜り抜けて脱出しました」
「ヴァンパイア達は一緒に連れてきたの?」
「彼らは、こちらで眷属化したこの世界の人間です」
「そうか、心情的には自由にさせてやりたいが、この世界の理に反するな。シルヴァはどうしたいのだ?」
「魔素の無い世界だとは思っておりませんでしたので、このままでは私も遠からず力を失い朽ち果てるのみだと思います。出来ればイルアーダへの帰還を望みます」
「眷属化した者達は元に戻せるのか?」
「無理ではありませんが、ヴァンパイアとして過ごした記憶は残りますので、人として暮らして行くのは無理かと思います」
困った状況だな……
「魔王様、あなたの体内に魔素を感じます……その魔素があれば私がこの世界の支配者となることも可能です。今は力を失ってる様ですので、私の糧になっていただきましょう」
あー馬鹿だった。こいつ俺が今この姿だからLV1のTBの実力しかないと思ってやがる。香奈もやっとLV25くらいだしな。
シルヴァが眷属召喚を発動するとホストやキャバ嬢の姿をしたヴァンパイアとヴァンパイアレディが二〇人程召喚された。
「そこの小娘と黒猫を捕まえて逃がさないようにしろ、これでこの世界は俺が支配できる」
俺は美緒に念話を入れ、俺の体をしたTBを連れてこさせた。
素早く元の体に戻り、聖属性の魔法を唱えた『ホーリーサークル』
サークルの範囲内に存在する闇属性を帯びた物質や生命体を浄化する効果がある。
激しく白煙が立ち込めヴァンパイア達が浄化される、シルヴァも美しかった容姿が醜く崩れ落ちていく。
「何故だ、力を失っていたのでは無かったのか勇者」
「さっき言っただろ、お前ごときは片手で捻りつぶせると」
「だがお前はLV1の黒猫だったではないか」
「テイムしたペットと入れ替わってただけだ。人の話を信じないお前が悪いな。そのまま地獄に落ちろ」
眷属達はすぐに治療スキルを発動してみるとホーリーサークルで焼けただれた皮膚は完治した。
問題はヴァンパイアとして過ごした記憶の問題だな。
1人ずつしかできないが、闇の精霊魔法で意識を支配してヴァンパイアの記憶を消去していくしかないな。
今日は徹夜になりそうだ。
それから1時間程すると、ナーシャと綾子が転移門で戻ってきた。
「翔びっくりだよー2人で会計300万円取られちゃったよ。翔が居なくてメチャ焦ったんだからね」
「よく持ってたな?あー悪いな、事件は片付いたから安心しろ」
と言いながら300万を渡した。
「翔から貰ってた米ドルで払ったわよ」
「『Star prince』で騒ぎにならなかったのか?キャストや客がいきなり消えただろ?」
「チョットばたばたしてたみたいだけど、私達には解らない様に気をつかったのかな?」
そして翌朝には眷属化していた間の記憶がすっぽりと抜け落ちた、ホストとキャバ嬢たちが『Star prince』の店内で寝入っていた。
彼らの口から事件が明るみに出ることは無いだろう。
ビルの1Fにキャストの顔写真が載った大きな看板があり、日本人キャストばかりでなく外国人も居て、現役モデル多数在籍とアピールしてあった。
エレベーターへ乗って7Fにある店舗まで上がると、このフロアは1フロア全部『Star prince』になってるみたいで、接客中以外の全キャストであろう10人ほどのホストが左右に勢ぞろいして出迎えられた。
俺は、綾子の大きめのバーキンの中に隠れてたぜ。
「「「ようこそ『Star prince』へプリンセス!」」」と声の揃った出迎えをされた。
綾子とナーシャのいかにもセレブリティーな姿に、初見な客にもかかわらず黒服を着た人が、一番奥まったボックスの方へと案内してくれた。
店内は薄暗く、中央部分に積み重ねてあるシャンパングラスのタワーだけがスポットを浴びてきらびやかに輝いている。
全体的に内装にはお金がかかっていそうな感じだな。
店内を見渡すと、ざっと半分程の席が埋まっている。
ミサキが言っていた通りに、首にチョーカーを巻いた女性が何名かいるのも確認できる。
席に案内されると、俺は綾子のバッグから抜け出して、ソファーの下へと隠れた。
これだけ足元が暗いと、黒猫の俺が店内を移動してもほぼ気付かれたりしないだろうな。
黒服が席へやってきて「お姫様、初めてのご来店でお間違いはございませんか? 指名の王子はいらっしゃいますか?」と尋ねてきた。
ナーシャが答える「初めてで間違いないわ、指名も今の所無いから素敵な子をよこしてね」
と言って、黒服の胸ポケットへチップを差し込んだ。
なんかナーシャ妙に慣れてねぇか?
一分ほどの時間をおいて、2人のホストが現れた。
「クウガです。よろしくお願いしますプリンセス」
「アキトです。素敵な夜を捧げます」とそれぞれにナーシャと綾子の手を取り、ひざまづいて頭を下げた。
クウガと言う男は下の看板でも中央に載っていたな、恐らくナンバー1だろう。
日本人離れしたスタイルと顔の彫りだから、恐らくハーフなんだろうな?
アキトは、童顔の癒し系キャライメージだ。笑顔が幼く見えアイドルグループのメンバーと言われても普通に納得する感じだ。
「お飲み物はどうしましょうか?」
「シャンパンを入れてもらうかしら?ドンペリニヨンのロゼでいいわ」とナーシャがいきなりのピンドンオーダーを入れた。
「「ピンドンイタダキマシター」」といきなり、落ち着いた店内の雰囲気から一変ホストクラブらしい景気のいい掛け声が上がった。
この温度差が、魅力なのかな??
「今日はラストまで落ち着いて飲みたいから、このまま指名させてもらうわ。楽しませてね」
と、クウガとアキトをそのまま指名することを伝えると、クウガが合図を出した。店内の大型ディスプレーにクウガのプロモーションビデオの様な映像が映し出され、「こう見えて俺、この店のNO1なんだ。NO1だけに許された指名が入った時のVがこんな感じで流れるんだよね、出来るだけ席を離れないようにさせてもらうけど、他のお客さんに呼ばれちゃったら、挨拶だけは行かせてもらうね」
と言ってきた。
「サブでもう一人付けてもいいかな?」
と聞いてきたのでOKをだすと、盛り上げ担当みたいな少しお姉が入ったような筋肉キャラが現れた。
ワイシャツが筋肉ではち切れそうな感じで素肌に張り付いてて何故か乳首が立っているのが目立つ。
演出なのか? これは??
「キョウっていいます。姫よろしくお願いします」
結局このキョウと名乗る男は凄い盛り上げ上手で、楽しい雰囲気の中時間は過ぎていった。
でも別段怪しい所は感じないな。
俺は周囲を見回し、首にチョーカーを巻いている女性がいる席の下へと潜り込んだ。
目はトロンとなっていて、担当ホスト君にしなだれかかっている。
このホストは完全に欧米人だな。
「今日はアフターは大丈夫なんだよね?」
「ああ、いつもの様に最高のひと時を過ごそう」
「嬉しい」
「俺もだよ」
どうやら、大人な時間の約束の様だけど、ちょっと気になったから鑑定を掛けてみた。
あー……解っちゃった。
ヤバイよなこれ、どう対処しようかな……
このホスト君ヴァンパイアだよ、チョーカーを巻いた女性も既にハーフヴァンパイアと表示されている。
気になって他のチョーカーを巻いた女性のいる席もすべて回ると、ヴァンパイアが5人もいて1人はノスフェラトゥと言う上位種も混ざっていた。
ヴァンパイアはみんなLV1だがノスフェラトゥはLV424もあるぞ……
この世界って魔族も結構紛れ込んじゃってるのかよ?
これは捕獲するか殲滅するか、迷う所だな。
ヴァンパイア系統は、知能もあり会話も成立するし自分たちのルールの中で生きているだけだから、人間から見たら悪ではあっても、生きていくために血が必要で種族の繁栄のためには出産ではなく、眷属化を行って増えていくという種類ってだけだからな。
別に面白半分に虐殺をするわけでもないし、眷属とした相手も大事にするし、判断に迷うな。
きっと消えたジュンって言う女の子は、完全に眷属化してしまって今度は仲間を引き入れる立場になって、どこかで獲物を見繕っているのだろう。
ノスフェラトゥは魔族の中でも最上位種に近く、四天王の次の立場くらいだ。
これは、俺が出張るよりも香奈の担当だな。
情報収集はもう十分だな。
まぁ綾子とナーシャも楽しんでるから、ラストまでは居させてやろう。
キョウに乗せられて、ピンドンでシャンパンタワー始めてやがるぜ。
綾子先生、嵌《はま》ったりしないかな? 免疫無さそうだから心配だよ。
クウガとアキトも超セレブな上客ゲットと思って、べったり離れないしな。
閉店までは暇だから、香奈に連絡を入れとくとするか。
『香奈、ノスフェラトゥとヴァンパイアがこっちの世界に紛れ込んでるぞ、既に眷属化を始めていて何人か行方不明も出てる』
『えーマジで? ノスフェラトゥの個体名は誰?』
『シルヴァだな』
『あーシルヴァかぁ、策士だからあまり好きじゃなかったんだけどね、一度話してみるしか無いわね』
俺は、黒猫の姿のままシルヴァの付いている席の下へと移動して、念話で話しかけた。
『シルヴァ。魔王が用があるみたいだが外に出れるか?』
「なんだと……解った。時間を10分程貰えるか? お客様がいるからな」
「言っとくが、悪あがきはするなよ? 俺はイルアーダで魔王を倒した勇者だ。お前ごときは片手で捻りつぶせるからな」
「何もしない……魔王様と話せるならそれで十分だ」
『翔、どこへ行けばいいの? 今新宿ド〇キの前に来てる、私の格好でこの時間にここにいると補導されちゃうよぉ』
『なんで、考えなしにそんな目立つとこに来るかな……コンビニに入って待っててくれ。俺は今黒猫の姿だ。雑誌売り場の前に黒猫見つけたら出てきてくれ』
『解ったよぉ早く来てね』
そして俺は香奈と合流して『Star prince』の前に戻った。
香奈が俺を抱いた状態で看板の前に立っていると、客の女性と一緒にシルヴァが降りてきた。
客の女性にハグをして丁寧に頭を下げて見送ると、香奈の方に目を移した。
「魔王様、久しいですね」
「ここでは私が困る。手を握ってくれ」
シルヴァが手を握ると俺が転移を発動して、『Hope Land』の拠点に移動した。
TBと美緒は日本の拠点にいるようだ。
「シルヴァいつからこっちに来たの?」
「こちらの世界に来て4か月程になります。チェルノブイリと言う場所だったと思いますが、私は飛翔が出来ますので、包囲を潜り抜けて脱出しました」
「ヴァンパイア達は一緒に連れてきたの?」
「彼らは、こちらで眷属化したこの世界の人間です」
「そうか、心情的には自由にさせてやりたいが、この世界の理に反するな。シルヴァはどうしたいのだ?」
「魔素の無い世界だとは思っておりませんでしたので、このままでは私も遠からず力を失い朽ち果てるのみだと思います。出来ればイルアーダへの帰還を望みます」
「眷属化した者達は元に戻せるのか?」
「無理ではありませんが、ヴァンパイアとして過ごした記憶は残りますので、人として暮らして行くのは無理かと思います」
困った状況だな……
「魔王様、あなたの体内に魔素を感じます……その魔素があれば私がこの世界の支配者となることも可能です。今は力を失ってる様ですので、私の糧になっていただきましょう」
あー馬鹿だった。こいつ俺が今この姿だからLV1のTBの実力しかないと思ってやがる。香奈もやっとLV25くらいだしな。
シルヴァが眷属召喚を発動するとホストやキャバ嬢の姿をしたヴァンパイアとヴァンパイアレディが二〇人程召喚された。
「そこの小娘と黒猫を捕まえて逃がさないようにしろ、これでこの世界は俺が支配できる」
俺は美緒に念話を入れ、俺の体をしたTBを連れてこさせた。
素早く元の体に戻り、聖属性の魔法を唱えた『ホーリーサークル』
サークルの範囲内に存在する闇属性を帯びた物質や生命体を浄化する効果がある。
激しく白煙が立ち込めヴァンパイア達が浄化される、シルヴァも美しかった容姿が醜く崩れ落ちていく。
「何故だ、力を失っていたのでは無かったのか勇者」
「さっき言っただろ、お前ごときは片手で捻りつぶせると」
「だがお前はLV1の黒猫だったではないか」
「テイムしたペットと入れ替わってただけだ。人の話を信じないお前が悪いな。そのまま地獄に落ちろ」
眷属達はすぐに治療スキルを発動してみるとホーリーサークルで焼けただれた皮膚は完治した。
問題はヴァンパイアとして過ごした記憶の問題だな。
1人ずつしかできないが、闇の精霊魔法で意識を支配してヴァンパイアの記憶を消去していくしかないな。
今日は徹夜になりそうだ。
それから1時間程すると、ナーシャと綾子が転移門で戻ってきた。
「翔びっくりだよー2人で会計300万円取られちゃったよ。翔が居なくてメチャ焦ったんだからね」
「よく持ってたな?あー悪いな、事件は片付いたから安心しろ」
と言いながら300万を渡した。
「翔から貰ってた米ドルで払ったわよ」
「『Star prince』で騒ぎにならなかったのか?キャストや客がいきなり消えただろ?」
「チョットばたばたしてたみたいだけど、私達には解らない様に気をつかったのかな?」
そして翌朝には眷属化していた間の記憶がすっぽりと抜け落ちた、ホストとキャバ嬢たちが『Star prince』の店内で寝入っていた。
彼らの口から事件が明るみに出ることは無いだろう。
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