出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

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第57話 ジョージと友達になっちゃった

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 10月も半ばを迎え、朝早くにランニングをしていると肌寒さを感じるようになって来た。

 済州島の魔物発生は、公には発表されることも無く、半島国家としても情報統制しているようだ。
 米国と日本においても、発表する事に利点がないので今の所は報道には何も触れられない。

 俺達はカーネル大将に呼ばれ、斗真さんと一緒にカーネル大将の自宅に向かった。

 今日のメンバーは、俺と綾子と美緒とリンダだ。
 カーネル大将の自宅のガレージには、普段居ない黒塗りのリムジンが停車していて、シークレットサービスの人間が周囲を警戒しているのを確認できた。

「斗真さん、まさか俺達を拘束しようとか言う訳じゃ無いですよね?」

「翔君を拘束しても、転移で逃げれるしそんな無意味な事を、少なくとも私やカーネル大将はしないよ」

「ですよねぇ、じゃぁこの物々しい警備は何事ですか?」

「入れば解るよ」

 斗真さんに案内されるままに、カーネル大将の自宅にお邪魔した。
 いつものようにマリーさんが大げさに手を広げて、その豊かな胸の谷間に俺の顔をうずめた。

「マリー、さすがに今日はそんなノリは控えてくれないか?」

 とカーネル大将に言われてたけど、「リンダがいつまでたっても、翔君をモノに出来ないから、私の自慢のバストで餌付けしてるんです」

 美緒と綾子先生がリンダを見たけど、リンダは手のひらを上にして両手を広げ首をかしげただけだった。

 「応接室に誰か先客がいるようですね?」

 俺は気配を感じて、カーネル大将に聞いてみた。

「悪いね翔君。君の凄いファンで一度会わせてくれと言われて、無理やり押しかけられたんだ勘弁してほしい。私の雇い主の『ジョージ』だ。サインが欲しいらしいからお願いできるかな?」

 そこには、テレビでよく見かけるアメリカ合衆国の大統領が居た。

「君の活躍をテレビで見るたびに、胸がときめくよ、まさか『COLOR RANGERS』のレッドまで君だとは思ってなかったけどね」

 と言って手を差し伸べてきた。
 さすがの俺もあせったぜ、美緒たちもびっくりして口が半開きになっていた。

「初めまして、ミスタープレジデント、松尾翔です。まさか本当にサインを貰いに来ただけなんて事は無いですよね? 」

「今日の所は本当にサインを貰いに来ただけさ。色々お願いしたい事もあるけど、それはカーネル大将を通じて頼む事にするよ」

「俺は、日本の一般市民として平和に暮らす事が望みなんで、あんまり難しい話は勘弁してくださいね」

「一応、いつアメリカに遊びに来て貰っても良いように、特別な身分証は用意させて貰うよ。君の場合は飛行機で来る訳じゃ無さそうだから、税関を通って無いとやかましいこという連中もいるからね。アメリカだけじゃ無くて、西側諸国でもこの身分証で私の友達だと解る様になってるから。面倒は回避できる筈だ」

「それ受け取っちゃうと、逆にどこに行っても動きにくい気もするんですけど? 」

「私がSYOU MATSUOの友達だと自慢したいだけだから、気軽に受け取っておいてくれ」

「解りました。でもアメリカの利益を優先する行動をお約束は出来ませんので、そこだけは期待しないで下さいね」

「OKあくまでもプレジデントとしてでなく、ジョージとして友達になってくれたらそれでいいよ」


 びっくりの展開だな……
 流石に済州島で米軍と合同作戦に近い展開しちゃったら、カーネル大将と繋がってるのは、ばれるよね。


「翔を今日呼んだのは、ジョージを紹介するのが本題では無くて、済州島からモンスターが逃げ出す可能性の有無に付いての問題なんだが、どう思う?」

「自分の経験上では、異世界のモンスターも鳥タイプのモンスターじゃなければ、海を越えての移動は確認してないので、すぐに問題は起こらないと思います」

「ただし漁船等が何隻か島に残っているので、それに乗り込まれちゃったら、漂流して別の陸地に上陸する可能性がないとも言えないので、船舶などはすべて沈めておいた方が良いでしょうね」

「あの国の空軍と海軍は、以前の政権の時に崩壊して実行出来るだけの戦力がないのが現実だ」

「アメリカは動かないんですか?」

「アメリカも日本も軍や自衛隊を動かし、実弾を使用した作戦を展開するとどれだけの金額が掛かるか解るかい?」

「ちょっと見当つかないですね?」

「しかも、既に戦闘機も撃墜されてる事実があるし、今は既にモンスターが溢れている状態の島に近づいて、こちらの被害が無い状態でミッションがクリアできるとも思えない」

「それは、俺たちへの依頼という事ですか?」

「一応第7艦隊が出動した場合よりは、安い金額にディスカウントさせて貰っていいかな?3000万ドルで依頼したい」

「了解しました、そういう話ならお受けします」


「そう言えば翔君、中央アフリカの難民支援はそこのお嬢さんが中心だったよね?資金の出所が不思議だったんだけど、翔君が出していたのかい?」

 と、大統領に尋ねられた。

「はい、バチカンの教皇様も仲良くさせてもらっていますので、協力を仰いでいますが資金は僕が用意してます」

「そうか、国のしがらみが有ると中々難民支援と言う行動はしにくいんだが、個人で行うというのは素晴らしい行いだと思うよ。しかしバチカンの助けを借りていると、今一番多くの難民が発生しているイエメンの支援は難しそうだね」

「宗教の問題は確かに手ごわいですね、面談には美緒も行ったようですが、現実問題としてイスラムの教えを『Hope Land』内に持ち込むのであれば、受ける事が出来ないとしていて今の所話が進んでいない状況です」

「そうだろうね、その教えを信じるのも自由だが、それで食べる事にも困っている状況になっている現実から、目を背けてしまうなら、助けても次の段階に進める人も少ないと思う」

「生きる為に必要な事は何なのかを、真剣に考えて欲しいですね。少なくとも未成年者だけでも救いたいんですが、複数の宗教を認めてしまうとそこに争いが起こるのは過去の歴史が証明していますので、そこだけは曲げられないです。カトリックの教徒になれとは言いませんが、他の宗教の熱心な信者は現状受け入れが出来ないですね」

「支援物資などは、アメリカも協力できる事があるかもしれない。カーネル大将を通じて提案させてもらうよ」

「ありがとうございます、プレジデント」

「もっと話していたいのだが、外にやかましい連中を待たせてるからそろそろ失礼するよ、これにサインを貰いたいのだがいいかね?」

 と言って、大統領は俺が競泳競技の時に着ていたのと同じデザインのTシャツを広げた。
 本当に欲しかったのかな?俺のサイン。

 Tシャツにサインを書くと、嬉しそうにTシャツを抱えて帰っていった。
 
 「では、俺達は済州島の船舶の処理を行いますから失礼します。終わったら連絡しますので、確認をよろしくお願いしますね」
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