出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB

文字の大きさ
上 下
56 / 99

第56話 変わりゆく世界の始まり【後編】

しおりを挟む
 朝早くから斗真さんの電話によって起こされた。

「お早うございます。何か起こったんですか?」

「まだ公式には発表していないんだけど、済州島で魔物が発生しているみたいだ」

「規模とか解りますか?」

「今第7艦隊から、偵察ヘリが出ているんだけど詳細は不明だね。ファンタジー系の本に出てくるようなゴブリンやオークが発生しているようだ。半島国家が壊滅して以降済州島は人口が増えていただけに、被害の規模が心配だ」

「恐らくゴブリンやオークなら下位種であれば通常兵器でも対処出来るはずですが、相手はモンスターですから迷わず人を食料として襲ってきます。更にこの2種類の種族は雌であれば種族を問わず繁殖用の苗床として襲う習性がありますので、第7艦隊の空母が近くにいるなら住民の避難を急いでください」

「解った。カーネル大将に連絡を取って伝えるよ。出来れば翔君も出動をお願いしていいかな?」

「解りました。取り敢えず『COLOR RANGERS』で招集をかけて向かいます」

 念話で全員に連絡を取り『Hope Land』内の拠点に10人全員が集まった。
 なぜか香奈はピンク色のウサギの着ぐるみのパジャマ姿だった。

 その姿を見た、アナスタシアが『COLOR RANGERS』のコスチュームを着ぐるみに変更しようとか言い出した。
「動きにくそうだし却下」

「動きやすそうならいいのね、私がかっこかわいい着ぐるみを提案させてもらうわ」
 アナスタシアがどうやら諦めきれないらしい。

「半島国家の済州島に魔物の発生が確認されたみたいだ。敵はゴブリンとオークが今の所確認されてるけど、強くは無くても一般の人には十分に脅威になる。既にアメリカ第7艦隊の海兵隊が対処に向かってるけど、もし上位種が出現した場合は恐らく対処できないと思う。『COLOR RANGERS』として出撃する」

 10人揃っての出撃は、初めてだから派手に行こうぜ!

「「「了解ラジャー」」」

 綾子先生が、学校に休みの連絡を入れていたけど、俺は一緒に連絡をするわけにもいかないので、香奈と俺はブッチになっちゃうな……

 済州島に転移した俺達は、一番の繁華街になるカジノが立ち並ぶ地区に展開した。

 「どこから湧き出しているのかの発生源を突き止め、結界で封印するまでが取り敢えずの任務だな、魔物は見つけ次第に殲滅で、一般人を見つけた場合は出来る限り保護だけど、それは基本海兵隊に任そう」

 方針を決めて、2班に分かれて動き出す。

 俺の班はパープル美緒サクラ綾子先生オレンジリンダシルバーアナスタシアで残りのメンバーは、ブラック香奈に任せた。

 街中での銃声が聞こえてくる。
 現状では索敵ができるのは、レッド香奈ブラックの他に『スカウト』JOBを獲得した美緒パープルの3人だけだ。オークとゴブリンの対処では銃火器も有効なので、俺のアイテムボックスのストックから、全員に自動小銃を渡した。

 銃弾も大量にストックがあるので、各自のマジックバッグに収納させている。

 銃撃に関しては、リンダオレンジのソルジャーJOBが武器威力アップの特殊スキルを有している。

 オレンジの銃撃を受けたゴブリンは、爆散したように倒れていく。
 スプラッターは苦手だぜ……

 地上に現れた魔物のドロップは期待できないが、ゴブリンが所持するナイフなどを使えば、チェルノブイリのゾンビにもダメージが入るようになるから軍の人たちのLVアップも現実味を帯びてきたな。

 俺は索敵スキルで、発生源を探るがどうやら中心部の火山の火口のようだ。
 山肌を、降りてくるゴブリンとオークの姿を確認できた。

 人が居ない事を確認して、殲滅系の魔法を使いながら火口に近寄る。
 火口を大規模結界で封印して取り敢えずの封鎖を終え、斗真さんに連絡を取る。

「斗真さん、発生源は中央部の火山の火口でした。火口の封鎖はしましたがどれだけの魔物が溢れているかは、把握出来ていません。被害状況はどんな様子ですか?」

「翔君ありがとう。済州島は元々66万人以上の人口を抱えていて、半島国家の壊滅以降は更に島に流入した人口を合わせると80万人にも上る住人がいる。市内中央部の惨状から考えれば被害は1万人を超えそうだ」

「解りました。索敵を行いながら完全な殲滅まで行動を行いますけど、1つお願いがあります」

「なんだい?」

「俺と香奈は学校さぼって来ちゃってて、綾子先生は休みの連絡入れてたけど、俺たちは一緒に連絡するわけにもいかないから、何か言い訳作っておいてください」

「それは、難しい要求だね……何とか考えておくからそっちはよろしく頼むね。出来れば住民の避難も手伝って欲しいけど、何か手段はないかい?」

「無いことはないですけど、転移門を使う事になりますので、俺たちの存在の追求とかいう事態になると今後動きにくいんですが?」

「そうだな、でも人命には代えられない。安全地帯の構築だけお願いできるかな? 」

「解りました、俺が魔法で隔離した地域を作ります。その内部の魔物を集中して討伐して安全地帯にしますから、そこに誘導させてください」

 そして俺は、属性魔法をある程度取り戻したビアンカイエローと協力して、2k四方を囲む安全地帯をセラミックの壁で覆い、その壁の内部にいる魔物を殲滅して安全地帯の構築をすることにした。

「思ったより数が多いな、隔離地帯だけで、ゴブリン100オーク20くらいの数がいる。上位種が10%は存在するし、ジェネラル種も居る筈だ。現時点では俺以外のステータスではジェネラルの討伐は無理があるから、発見次第連絡をくれ」

 俺たちが隔離した以外の地域では、第7艦隊の空母から発艦した戦闘爆撃機の攻撃も始まっていたが、対応できたのはリーダー種までのようだった。

 ジェネラル種の攻撃により戦闘ヘリ2機、戦闘機3機が撃墜された時点で、一度戦力は引き上げた。

 隔離地域では、けがをした人たちをマリアンヌホワイトがエリアヒールで治療し、ジェネラル種は俺が討伐をした。
 その後は、島内全域を俺がジェネラル種だけに限定して討伐をして回り、取り敢えず一度集まり今後の行動の指示を仰ぐ事にした。


「斗真さん、全体の被害状況とかはどうなんですか? 」

「予想よりひどい状況だね、被害者は10万人を超える状況で、米軍も他国のために少なくない被害を出して今後も救援を続けるかどうかで、ホワイトハウスでも判断が遅れている。当然日本としても正式に海外派兵を行う判断は出来ないし、困った状況だね」

「済州島の住民を全員避難させる方針を決めてもらうほうがいいと思います。火口は一応結界で塞いでますが、横穴を開けられたりすると、簡単に湧き出してきますので」


「そうか、俺の独断での判断は出来ないが、それしか手はなさそうだね」


 ◇◆◇◆ 


 『COLOR RANGERS』のメンバーは『Hope Land』の拠点に戻り、自分たちなりの方針を決める事にした。

「香奈の言う通りに、ゲームの世界が元になったとしても、俺たちが居たイルアーダは既にゲームプレーヤーらしき存在は居なかったよな?」

「そうだね、あの世界に違和感はあったけど、ゲームプレーヤー風な生活感のない存在は居なかったわ」

「ヤリマンスキーはあの世界の歴史はどう認識してるんだ?」

「ああ、俺の先祖の記録からしてもあの世界の歴史は5000年以上は記録が残ってるな。ただのデータとして考えるのも不自然すぎるほどに多種多様な生物が存在していたしな」

「やっぱり鍵になるのは【邪神】と【創造神】か、今ある4か所の発生源の攻略を急いで、そこにつながる筈の、ビッチ姫と四天王に話を聞くしかなさそうだな」

 俺たちはどんな状況になっても対処出来るように今は少しでもLVを上げよう。
 今日の討伐でも再認識できたけど、地上でいくら魔物を倒してもLVは上がらないし、どうせ戦うなら魔素のある場所で戦わないと勿体ない。

 何だか忙しくなりそうだな。

 
 ◇◆◇◆ 


 済州島に関しては、半島国家は立ち上がったばかりの新政権では対処ができず、米軍も実害が出たにも拘らず、現在の半島国家では補償も貰えないので、第7艦隊は撤退を決めた。

 島民は半島に生存者の移動を促し、済州島は生活圏としては放棄される事になった。

 そして今回の出動に関してはどこからも報酬が出なかったので、島民の避難が行われた後で、隔離地域も元に戻して、結界も解き放った。食料と苗床になる人類が存在しなければ、爆発的に増加することもないだろうし、俺たちの魔石採掘場にはなるな。

 住人が戻ってきても困るので、ゴブリンとオークは自由に徘徊させておくことにして、俺たちは火口内の探索のみを行なう事にした。

 魔石採掘場として活用すれば、魔石を使った効率的な発電とかも研究できるし、まぁいいかな。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...