出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

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第52話 ゴルフも始めるけど魔物もね!

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 9月の日差しはまだまだ暑い。

 道行くお姉さんたちの薄手のシャツに透けるブラジャーを、しっかりと目に焼き付けながら、足早に帰宅をしている。

 今日はゴルフ企画のスタートする日だ。

 スポンサーメーカーからは二人が専属で派遣されてきている。

「はじめまして!松尾翔です。ゴルフは初心者なんでご迷惑をおかけすることもあると思いますが、よろしくお願いします。翔って呼び捨てで呼んで下さいね」

 と挨拶をした。
 何事も最初が肝心だからね!


 一人は元ゴルフのツアープロをやっていた、倉田さんという男の人だ。
 全盛期は賞金ランキングでもトップ10入りを果たした経験もあるような、実力者だったんだけど、事故で足を悪くして、現役プレーヤーとしてのキャリアは諦めたんだって、まだ30代前半だから勿体ないよね。

  もう一人は俺専用のウェアやクラブなどの開発を担当してくれるまゆずみさんと言う女性の人だ。
 機能性は勿論だけど、俺が使うグッズは間違いなく爆発的なヒットを記録する目算があるので、デザイン優先でタウンユースでも流行させるのが狙いなんだって。


 黛さんも大学時代は体育会系のゴルフ部所属でバリバリのシングルプレーヤーらしいよ。

 2人共俺の成績次第で結構な歩合給が保証されてるらしくて、一緒に頑張ろうと力強く手を握ってきた。
もしメジャータイトルとか取ったらこの二人にも、1億円ずつのボーナスとか言ってたから、そりゃ目の色も変わるかな?


「今更だけど、翔の優れた身体能力なら、コツさえ掴めばすぐに一流のプロ選手になれるよ。今回は付きっきりで撮影も入ってるし、スポ根みたいな辛くてきつい訓練をするんじゃなくて、どれだけゴルフが楽しい競技なんだ! って事を、世界中の人に発信していける番組にしたいよね」

 と、倉田さんが言ってくれて、 黛さんの方は、
「翔君モデルのゴルフウェアを流行させて、もっと若い人たちにもゴルフの楽しさを広めるのが最終的な目標ですので、私達も一緒に楽しみながら取り組みますね」と言っていた。

 テレビ局の人は俺には直接口を出さずに、何かを提案する場合は俺の居ない時に番組編成会議を倉田さん、黛さんを同席の上で行い、そこで方針は決めていくんだって。

 初日の今日は、取り敢えず一緒に近所のゴルフ練習場へ行って、ボールを打ってみる事になった。
 倉田さんが見本を見せてくれて、俺もチャレンジしてみる。

 クラブの握り方を習って、見様見真似でやってみたけど、ジャストミートする事も無くボテボテっと転がっただけだった。


 意外に難しいな。


 今日使っているクラブは5番アイアンと言われるクラブで、『マッシー』と言う愛称を持っていて、このクラブ一本だけで全てのラウンドを回る競技会もある様な、万能型クラブだ。

 クラブの前についている番号は、クラブのフェイスと呼ばれるボールを打つ部分の、角度で番号が違うんだって。

 数字が小さいほど傾斜角が大きく、低い弾道で遠くに飛ばせる。
 逆に数字の大きなクラブは、傾斜角が小さく狙いが付けやすいんだって。
 シャフトの長さも1番ごとに0.5インチ程度伸びるのが一般的らしいよ!


 「最初から飛ばそうと思わずに、ボールから目を離さずに、フェイスの真ん中に当てる事だけを、意識して振ってごらん」と言われて、漸く当たるようになってきた。

 この日は1時間ほど、ずっと5番アイアンで真っ直ぐ飛ばすことだけを意識して、体重移動なんかを中心にアドバイスを貰いながら、打ち続けた。

 黛さんが「翔君やっぱり凄いね。たったの1時間で殆ど同じ場所に安定して飛ぶようになったじゃん。これが出来たら後はクラブごとに飛距離とかが変わってくるから、それぞれのクラブの球筋を身体で覚えて行くだけで、ラウンドも回れるようになるよ」

 って言ってもらえたよ。

 倉田さんも「この調子なら想像以上に早く目標達成できそうだね。明日はパッティングの基本を教えるね」と嬉しそうだ。

 

 あんまり時間を掛けるわけにも行かないし、ちょっと頑張っちゃおうかな!


 ◇◆◇◆ 


 『Hope Land』も順調に開発が進んでる。

 工事関係の人だけでも大量の人が訪れていて賑わってるけど、現地の人って見た目で見分けるの難しいよね。
 きっと、現地の人達から見たらアジア人を見分けるのが同じ様に難しいのかな?

 最初に移設しておいた学校の地下空間に、『COLOR RANGERS』の本拠地を作って秘密組織らしい雰囲気を出して、リンダと美緒を中心に世界中のテロ組織の情報を集め、救助の必要を判断している。

 『COLOR RANGERS』はテロ組織の壊滅は基本的に行わない。
 勿論こっちが攻められた場合は別だけどね。
 それは各国のテロ対策部隊の仕事だしね。

 犯罪組織によって、人としての尊厳を奪われているような環境に囚われている人々の救出が、メインだ。


 美緒の会社のH.Pに申し込みのある移住希望者との、面接も美緒とビアンカを中心に着々と進んでいる。
 必ずしも全員が、本当に保護の必要な人達なのかは判断が難しいけど、香奈と俺の鑑定スキルも使いながら悪意の排除は行っている。

 ここでの生活は、病気で体が動かないとかではない限り、衣食住の保証はするけど本人に出来る仕事はして貰っている。

 産業が立ち上がるようになれば、それに応じた収入も手に入れることが出来るから、頑張ってね!


 ◇◆◇◆ 


 チェルノブイリの魔物発生源である、廃炉跡を訪れた。

 本格的な討伐に向けての調査のためだ。
 今日はマーと香奈とヤリマンスキーとリンダの5人で訪れている。

 前回の周辺の討伐の時に使った、水鉄砲がメイン装備だ。
 ウクライナの軍が周辺を警戒しているために、隠密を発動した俺が先に一度転移で内部に侵入して転移ポイントを確認し、その後メンバー全員で転移で侵入する。

 念の為に『COLOR RANGERS』のコスチュームで来ている。
 内部に侵入すると、廃炉の中心部分に階段が出来ている、「これは・・・ダンジョン化しているな」

 階段周辺に向けて少なくない数のゾンビ型モンスターが居るが、この一階層部分では魔素の存在を感じ取れない。

 「魔素がこの階層は存在していないな、この階層は戦闘を控えて下の階層に進むぞ」

 ポーションも勿体ないし、2層以下での魔素の発生具合を確認することが大事だと思って指示を出した。

 階段を降りていくと気配が変わった。

「よし、この階層からは魔素が存在する。積極的に魔物を倒して能力や、LVの上昇があるのかを確認するぞ」

「ねぇ翔、今の段階で鑑定掛けてみてよ、私今自分のステータス確認したら、JOBやステータスがちゃんと表示されたから、マーとヤリマンスキーもJOBが復活してる筈だよ、LV1だからスキルは無いけどね」

「香奈、ちょっと聞いていいか?」

「何よ?」

「イルアーダで一般の人達ってどうやってJOBに付くんだ?俺は最初から勇者が表示されてたから、スキルは何でもスキルポイント次第で選べたけど、何でも選べるのは魔王と勇者だけだろ?」

「そうだね、魔族は固有JOBだったから私は詳しくないわね、拳聖のマーはどうだったの?」

「私も最初からだったけど、普通の一般的な人はLV5を迎えた時に教会で祈りを捧げるとJOBが授けられるって聞いたわ」

「取り敢えずリンダをLV5まで上げれば、ある程度は答えが出る筈だよ」

「そうだな、取り敢えず無理をしないように、この階層でLVを上げよう。ゾンビ系は魔石以外のドロップは無いけど、その分経験値が良かった筈だからLV5までなら3時間もあればいけるだろ」

「久しぶりだから腕がなるわね」
「おい翔、武器は無いか?出来れば大剣が良い」

 マーとヤリマンスキーは確かに戦闘経験は豊富だし、在庫に限りのあるポーション使うよりは良いかな?と思ってマー用の爪と、ヤリマンスキー用の大剣を与えた。


 「パーティを組んだ状態であれば、経験値は分割取得になるけど、俺がPTに入ると恐らく経験値は-補正で0になるから4人でPT組んでくれ。補助は掛けるからこの2層くらいなら問題はない筈だ」


 リンダと香奈が水鉄砲で牽制して、マーとヤリマンスキーがとどめを刺すスタイルで、予定通りに3時間ほどの戦闘で、LV5を迎えた。

 JOBLVが5を迎える度に、そのJOBで使用できるスキルをセレクトして取得するのが、イルアーダでのシステムだったので、恐らく同じだと思う。

 最初から強いスキルを選ぶことは可能なんだけど、当然魔力や必要LV、MPといった発動条件があり、スキルを取得しても発動出来なければ意味がないので、基本スキルから徐々に習得するのが、一般的だ。

 能力値は、一般人の基本能力がLV1で

LV   1

HP   100
MP   10

攻撃力  5
防御力  5
敏捷性  5
魔法攻撃 5
魔法防御 5
運    5

 の項目があり、LVが1上がるごとに自分で上げたい項目を1ずつ上げることが出来る。
 それ以外にも魔物を討伐したときのドロップで、シードと呼ばれるものが存在して、ステータスを上げる効果がある。

 後は、俺が覚えているようなバフ系の魔法を覚えれば、能力値を%で上昇させるような効果もあるけど、実際には俺のようなステータスになるのは一般人ではほぼ無理な話なんだ。

 魔王や勇者PTのメンバーのJOBでは、成長補正がかかるスキルを選択出来る筈なので、一般的なJOBよりも遥かに有利だが、今回はギフトがないので自力取得だと、それなりに大変だよな。

 LV5時点でヤリマンスキー、マー、香奈の3人は当然成長スキルを入手した。

 問題はリンダだが、JOBを入手できていないので、スキルが入手できない。

 JOBが確定しないと、能力値もむやみに上げると無駄が出るが、どのJOBでも有効な敏捷や運を中心に上げるように、アドバイスをした。

 HPとMPの項目はJOB特性と能力値によって、変動する。

 取り敢えずは、メンバー全員にLV上げを頑張ってもらう事になるな。

 マリアンヌも忙しいだろうけど、積極的に参加してもらわなきゃね・・・

 「待てよ、マリアンヌならJOBを授ける事が出来るんじゃないか?」

 聖女のJOBを持っていたマリアンヌは、イルアーダでは基本的に教会に所属しており、JOBを授ける神言を聞けたはずだ。

 すぐに念話で連絡を取り、マリアンヌに確認する。

「まだ私は、ダンジョンに入ってないから、JOBも復活してないのよね。恐らく大丈夫だと思うから、教皇様に頼んで、出来るだけLVアップ活動を中心に行うようにするよ」


 状況は大きく動き始めた。
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