俺が最後まで愛した恋人

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第5巻 想像以上に大切にされていた

俺が最後まで愛した恋人

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第5巻

バサバサッ!
林の中を複数のコウモリが横切る。
あぁ、さっきあんなカッコついたことを言ったせいか、ちょっと恥ずかしい。
おかげで、筒木も赤い顔して俺の脇袖を掴んだままだ。
「そういえば、お前に女友達がいないのか?」
俺は、あの時筒木が複雑そうな顔をしていたので不安になっていた。
「私はお嬢様って知ってるわね。そのおかげで私はお嬢様には話しかけたらいけないというオーラが出ているらしく、まともにはなしかけてもらえないの。こちらから話しかけても、ビビった感じで同級生なのに丁寧語で。そんな事思ってないのに。」
そうか。
こいつはこいつで悩みがちゃんとあるわけか。
「悪りぃな。兄さんなのに気づいてあげれなくて。」
俺は弱気になって言った。
「そうよ、全くよ。本当にあんたにはがっかりさせられるわ。」
夜道を進みながら俺たちは怖さなどを忘れて普通に会話しているのである。
「でも…」
筒木が、小声で言った。
「心配してくれたのは嬉しかったかな。」
俺はよく聞こえなかった。
「なんか言ったか?」
「何も言ってない!」
筒木はムキになって叫ぶ。
なんなんだこいつ。
突如甘えたり怒ったり、どう相手していけばいいのかわからん。
そんな話が続いているといきなり林の中からピカッと光った。
「きゃっ!」
筒木が俺に飛びついて来た。
「お、おい。」
筒木は涙目になっていた。
「お前、泣いてんのか。本当はお化けが怖いんじゃないのか?」
俺は面白げに言った。
「う、うるさい。」
すると、今度は草むらから草むらへと何かしらの影が横切った。
「な、なによ。」
筒木が怖がっている。
俺はよく考えた。
ひかる謎。
人らしき影。
この時間にこいつといる。
そう。
正体は多分此上 秋だろう。
あいつまじでやりやがった。
おそらく光っているのはシャッターの光なのだろう。
俺たちがひっついてイチャイチャしているのをシャッターにおさめている。
そんなに楽しいか。
「ちょっと、兄人なんだから見て来てよね。」
筒木が言う。
まぁ正体が分かっていれば怖さなどなんともない。
「あっ。でもお前1人で大丈夫なのか?」
「よ、余計なお世話よ!」
相変わらず気が強いな。
「分かったよ。ちょっと見てくるから。そこにちゃんといろよな。」
俺は秋の元へ向かった。
「おい、秋。まさか本当にやっているとは思わなかったぞ。」
「バレちゃってた?それにしてもお前達って本当に仲良いんだな。」
「いいや、今のあいつはお前をお化けと勘違いして、ビビって俺に頼っているだけだ。」
秋は、筒木に目を向けた。
「どうやらそうみたいだね。早く行ってあげなよ。俺はもうやめて帰るから。おかずもいっぱい撮れたしね。」
嬉しそうに闇の中に消えていく秋。
あとで写真見せてもらうとしよう。
もし、俺の恥ずかしい写真が一枚でもあれば、カメラごと壊してやる。
俺は筒木の元へ戻った。
筒木には、ただの野良猫だと嘘を言ってごまかした。
そして、無事に肝試しは終了したのである。
それからというもの、林間学校では筒木とはあまり話さなかった。
あっという間に林間学校は、終了した。
ある日曜日、俺は筒木を誘ってデパートへ行こうとしていた。
「おーい、筒木。今日少し俺に付き合ってもらうぜ。」
「嫌。」
あっさり断られてしまった。
それにしても、たった2文字で瞬間的に断られるとちょっと傷つくな。
母「かをりちゃん。司につきあってあげて~。」
母、ナイス!
「お母さんがいうなら考えてやらんこともないわね。」
「本当に可愛くねぇな。」
「あぁ?なんか言いましたか???」
相変わらずのやりとりだ。
でも、初めて会った時とは少し違うかった。
笑顔がちょっと増えたような。
「早く着替えろよな。」
そして15分後。
筒木は、派手な服を着て俺の目の前に姿を現した。
これが俺の妹とは思えないくらい。
初めて会った人は一瞬で恋に落ちそうな感じが出てる。
ただ一言で言うと、
可愛い。
「ほら、ぼーっとしてないでいくわよ。」
筒木が、玄関へ向かう。
「お、おい。まってくれよ。」
俺は急いで玄関の方へと向かった。
俺がいくデパートは近くの駅の近くでな。
だから、距離はそう遠くない。
そのせいか、筒木とのデパートまでの会話は無かった。
デパートの服屋に入って商品を見ていた時だった。
筒木が口を開いた。
「今日はなんで私を連れ出して、買い物に誘ったの?」
俺はこう応えた。
「お前に、兄さんからちょっとしたプレゼントをやろうと思ってな。サプライズでもしようと思ったが、センスのない服でもプレゼントしたら嫌われそうだったからな。仕方なくお前に来てもらって選んでもらうことにした。だから好きなの選べよ。」
そう、今回の俺の目的としては、こいつへのプレゼントなのである。
俺からしたらプレゼントなんぞ、一回も渡したことがない。
だが、不思議とこいつには買ってやろうと思ったのだ。
すると筒木が
「本当に!私、服めっちゃ買いたかったんだよねー!ありがとう。兄さん。」
ドキ!
感謝された。
こいつ今までこんなにまで、俺への感情をあらわにしたことはなかったはず。
「お、おう。その代わり早く選べよ。んじゃねえと買わねぇぞ。」
俺は、照れる感情を誤魔化すようにしゃべった。
それから、筒木に服を一緒に選んだ。
そしたら、筒木が
「私寄りたいところがあるから他のところ見てても大丈夫だよ。」
「お前、1人で大丈夫なのか?」
俺は心配した。
「ちょっと、バカにしないでよね。高校生なんだから。余計なお世話よ。」
怒られてしまった。
「わかった。でもそう遠くにはいくなよ。」
注意だけをして俺はあいつが言った通りにデパートの中をフラフラしていた。
その頃、筒木は…

兄さんに服を買ってもらうなんてどういう風の吹き回しかしら。
よくわからないよ。
でも、兄さんは本当に私のこと、大切に思っているのかしら。
私はこの間からずっと、ムキになって兄さんを傷つけていたのかな。
だとすると、兄さんにもうしわけないかも。
それに、もし本当に私の事を大切に思ってくれてるなら、なおさら私の秘密を言うわけにはいかないかな。
私は考えながらデパートの中を歩いていた。
すると、
「ドカッ。」
「痛っ。」
すれ違いの人にぶつかってしまった。
「す、すみません。私の不注意で。」
私は誤った。
相手は、ちょっといかついヤンキーっぽい男の二人組だった。
「あ?お嬢ちゃん。この服高いんだよ。お嬢ちゃんが触ったところに埃がついちまってな。弁償してくれないかな?」
私は怖かった。
「いえ、本当に申し訳ございませんでした。」
私は何度も誤った。
その頃、司は…

はぁ、あいつ喜んでくれたかな。
いきなり服を買ってあげるのは気持ちが悪かったか。
でも、笑顔はあったし良かったと思うな。
こちらも考え事だ。
俺は2階にある、アクセサリー屋っぽいところに足を運んだ。
すると、外から
『女の子が2人の男に絡まれてたよ~。』
『嘘ー。怖そう』
嫌な予感がした。
まさか!
俺は猛ダッシュで一回を見下ろした。
そこには二人組の男に絡まれている筒木がいた。
「あいつら」
俺はエスカレーターを人生でいちばんの早さに降りていった。
その頃筒木は…

「本当にごめんなさい。」
怖いよ。
何度も私は頭を下げた。
すると、男は私に触ろうとしてきた。
気持ちが悪い。
もうダメだと思った時だった。
後ろから男の手を弾いて守ってくれたのだ。
「ありがとうございます。」
私は顔を上げた。
その人は兄さんだった。
「あ?なんだてめ。」
二人組の男が兄さんに問い詰めた。
すると兄さんは
「こいつは俺の彼女だ!!出だししたらぶっ飛ばす。」
…。
え…。
横を見ると、通りかかった秋君が、こちらを見ていた。
私は絶句した。
秋君、勘違いしてる。
すると男は、
「お前の彼女にちゃんと躾しとけよ。」
と、兄さんにビビったらしく、切磋琢磨に逃げて行った。
すると兄さんは
「大丈夫か、筒木。全く心配かけやがって。怪我はないか。」
私はなんともない。
だが、さすがにあの発言はやばいでしょ。
私は、兄さんを連れ出してデパートを出た。
「ちょっと。助けてくれたのはものすごく感謝してるけど、何よあの発言は。私は兄さんの彼女になったつもりはないのよ。」
すると兄さんは、
「お前のことが好きだ。だから彼女になったっていい。だからあんな言葉が言えたんだ。」
「ちょっと。告白!!このタイミングで?それにさっきの兄さんの発言で、通りかかった秋君に勘違いされてると思うわ。ちゃんと誤解といてきてよね。」
私はてれくさにいった。
「任しとけ!」
兄さんは笑顔で答えた。




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