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七  四鳥の別れ

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狭い小部屋だ。そこにこの人数だ。酸素も薄くなるってことだ。マジ頭がクラクラしてきた。

「さておまえたちを呼んだのはほかでもない。これよりお前たちに差配をする。もちろんそれはしのび仕事じゃ。これをもっておまえたちを下忍に任ぜる」

しのび仕事、そして下忍にと聞いて俺以外の三人はぴいんと背筋を伸ばした。つまり見習いから正式な忍者として扱われる試験、ということなのだ。ついでに言うと、上忍、中忍、下忍とは階級のことで、上忍は一封斎やこの菊水のようなトップでいわゆる経営者層だ。中忍は差配職のしのびで、そこでかしこまっている蝮(マムシ)の源蔵などいわゆる中間管理職だ。

「すいません、いいすか?」

俺は手を挙げた。菊水はその大きなギョロ目をさらにギョロギョロさせて俺を見た。

「なんだ信。なにか不服か?」
「つうか、なんで今回の仕事に辰が入ってんですか?辰はかぞえでまだ十三です。ガキじゃないですか」

辰はやんちゃなクソガキだ。まあ練場での忍術はそこそこだが実戦経験がまだない。仕事の内容は知らないが、足手まといなのは必然だ。

「それをまとめるのがおまえの仕事だ、信。いやカラス、いいな」
「めんどくせえな」
「俺は足手まといにはならねえぞ」

そう辰は俺に上目遣いでそう言った。気持ちはわかるけど、先走ってことを仕損じるのはおまえか妙なんだよな、絶対…。

「あらいいじゃない。なんにしたってあたしがいれば楽勝よ。どんな仕事もね」

おまえがいるから不安なんじゃねえか!おまえのせいで俺が何人殺したか、どんだけ無益な殺生したかわかってんのかー!

「そういうことで信、妙も頼むな」

この親馬鹿ポンコツファミリーが!ちっきしょう、なんでこうなるんだよ!

「信兄者、おいらもお助けします。気張りましょう」

こいつは乙(おと)。俺の弟分みたいなもんだ。どこぞから拾われてきた俺と同じ馬の骨だが、妙に気が合った。忍術の腕前もそこそこだが、それでも足手まといにしかならないがな。

これで四鳥か。昇格試験、つまり巣離れってことかよ。中国の孔子の故事の『四鳥の別れ』で、親鳥が四羽の巣離れを悲しんだというわけのわからない言い伝えで、孔子本人は俺たちが迷惑しているなんてことは全然考えずそういうことを言いやがったんだな。だが少なくても目の前のおっさんふたりは悲しんでるってそういうそぶりは微塵も感じさせない面をしている。

「あにき、がんばりましょー」
「ふん、おまえなんかいなくても楽勝だ」
「そりゃあたしがいればもうぜんぜん問題ないじゃない」

ああ、こんな頼りないやつらとしのび仕事だと?マジないわー。
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