たまのこぼれ話

懐古するたぬきち

　やつはとにかくかわいかった。
　作者がとにかくかわいいやつを書きたかったから。

　ぼくは生き物の存在意義について、どこかかわいいだけでよいと思っている。
　フィクションでも現実でも、存在しているだけでだれかを救うと感じている。

　たぬきちはけっこう苦労人だ。
　相当なおばかさんでもあった。
　ただ化け狸ってだけで、人々に嫌われてしまう一族の子。

　自分をだめなやつだと思うたぬきち。
　人間たちを恐ろしいと思わせる世界。

　そんなの嘘だ。
　絶対に信じたくない。

　負けるなたぬきち。
　がんばれたぬきち。

　こんな落ちこぼれが書いたものさえ
　意外と喜んでくれる人はいるんだから。

　自分の命がどれほど大事なものかって
　自分じゃいまいちわかりにくいけれど。

　我らもかわいく。
　時々くじけそうになりつつも。

　ずっとずっと、無事を祈ってるよ。


　＊


　2024/10/19