銀河アナザーライズ

アポロ

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未来表現会議室

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 諸君。お集まりいただきありがとう。早速だが、歴史上のあらゆる言葉は出尽くされている。だから新しい言葉を作らなければならない。

 そのアイデアもすでに既出の考え方である。我々は新しい考え方を考えなければならない。
 君の意見はあるか?

 私は一介の俳人にすぎません。新しい文化は作るものというよりも、誰かに期待しています。私自身は現代の風習を学び俳句にも取り入れたいと考えていますが、あくまでも伝統を尊重した作品に好感を覚えますし、結局は優れた古典的文学を残した先人たちに敵うほどの天才はそう簡単に現れない。

 わははは! 保守的すぎる! 諦観じゃないか! 貴様には気骨というものがないのか! ワシの絵を見たことがないのか! 素晴らしい表現なんてものはな、理屈じゃないんだ! 作品を武装せよ! 作品を武装せよ! 新時代にはトランスフォーマーよりも強く大胆に踏み込んでいくしかない! このワシのようになーーー!

 言い争いはやめてくんさい。おいどんは庶民の文芸を減退させるのが、論争なんだと思うんじゃ。論争についていけるのは、馬鹿みたいに賢い人たちだけじゃ。おいどんたちは馬鹿であってはいけないと思わんか。なおかつ、賢くありすぎてもいけない。あれ? 何が言いたかったんじゃろ、そう、これくらい中途半端な思いをそのまんま活かす方向はどうじゃ。中道を貫く、それは未来に敵を作らないため、必要なことじゃろ。

 ちょっといいですか? そんな平和思想こそ危険だと思いませんこと? 中道を謳うようでありながら、中道でなければならないような、圧力がかかってしまうじゃありませんか? もし創作の全てが自由であったなら、地球全体が水浸しになるような想像ができますわ。水は必要、しかしありすぎると絶対的に困りますわよね? あなた、天才のわりに少しおとなしすぎんじゃありませんこと?

 べごさはらにんしゃむんどるろ。はりきいすこんどろぱるとしやにく。

 君! 何言ってんのかわかんない! 造語にしてもひどすぎる! 理解されなければ良いってもんじゃない! それは風変わりな世界観を誇張してるだけでしょう! 狂気の沙汰は面白いって思い込みに取り憑かれているのだわ! それが堕落ってやつよ!

 表現は理解されればおしまい。しかし理解されなければはじまらない。そう言いたいのですね。小生はそう理解しました。では、ご退出ください。ここは議論の場です。あなたが暗に議論を放棄していることも、小生は理解しています。小生は建設的な議論を可能とする才人のみ、承認します。

 き、厳しいよね~。厳しい世界だよね~。厳しさが激化している~。それだから新しい世代はうんざりするんだな~。みんな、もっと優しくなろ~よ~。もっと優しさの表現をしよ~よ~。最高に優しい作品を作れば世界は泣くほど感動するんでしょ~。

 はん。汚れの拭われた世界はピュアであり、理想だね。猫の手もいらねえ。小銭にもならねえ。オレは理想は理想のままで良いと言うよ。完全な世界を実現してしまったら、それこそ新しい世界が必要なくなってしまうよ。だったらぼけたカオスの方がまだましだよ。少なくとも何かを作り出す意欲ってものが終わらないよ。新しい言葉はカオスの中から生まれるんだ。作るもんじゃない。勝手に生まれてくるんだ。

 *

 十二人委員会の会議室をこっそり抜け出たしたぼくは、何も言わなくて良かったと思った。
 語れば語るほど陳腐な問題にすり替わるから、ここは正しい結論なんかいらない世界なのだ。

 世界は今日も朝が来たし、夜になる。この目に見えるものを見えるだけ、見せてくれている。たとえば宇宙の真実の姿なんかまるで肉眼では見えないから、手に入る資料を漁って想像するしかないのだろう。
 もしブラックホールを絶穴ぜっけつだなんて書いたとしても、その現象の本質は変わらない。
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