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三章・グリーンデイズ浪漫奇行
Go to NEW WORLD! 名探偵・木目田嵐丸の準備中
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木目田さんを追いかけに行くんだ!
そう気合いを入れた直後、いきなり一休みしているのだろう。
メガネ君は今、駅前広場に面したスタバのテラス席で幸せそうにコーヒーを飲んでいる。さすがこの朝のさびれた町でもっともやる気の抜けたメガネ。
まるでダメ男や。あの瞬間のプチ感動は一体どこへ霧散したのや。
「こうして遠目に見ると……メガネ君は本当にただのぼんやりメガネ君やな」
俺・木目田嵐丸の意識はというと、今やあの巨大倉庫の中間管理職ではない。退職届は出してある。本業の私立探偵らしく、ターゲット・泡沫太陽をばっちり観察しとる真っ最中。
そう。本業は名探偵なのさ。だから誰かさんみたいな素人推理のちょっと上をゆくよ。
メガネ君ご本人はお気楽なものだ。
「まあなるようにならあ」
そんな気分か、危機を自覚しながら危機管理能力さえ不安定で油断するしかないのだろうか。まあ、こっちにとってはチャンスだ、今のうちに少し整理しよう。
このスペースでは、俺の主観で事実と推理を分けて考える。
思うにメガネ君もねこっちも町野あかりも才能が溢れ過ぎで、簡潔にまとめる意識は希薄や。
俺の依頼人の素性はもう明かしておく。もちろんまだここだけの話にしておいてほしい。町野あかりだ。
これまで登場してきたキャラクターらと同じく、俺も読者の皆様の目をすごく意識している。と言うか、この物語に出てくる登場人物は俺を含めて全員がアマチュアと言えどウェブクリエイターであるから、原則みんな閲覧される文章を意識して語っているのやな。
ここは一人称多視点群像の物語世界の中でありながら、ただの仮想や幻想と似て非なる。
言わば、『限りなく非透明な華の現象』
泡沫太陽同様に、ねこっちも町野あかりも木目田嵐丸も、日頃から小説くらいは書く。四名とも投稿はほぼ止まっているもののね。
それぞれの事情と状況はこう。
メガネ君こと泡沫太陽は、創作活動が停滞していて想像をコントロールできず外界つまりこの世界に何かその怪力をお漏らししているらしい。
現れた化け猫ねねこがねこっちだということは最初からわかっていただろうが、笑って誤魔化しやりすごし、とぼけたふりふり彼女から逃げてきた。
俺の逃亡先の目処はついているっぽく、俺を追跡中。ただしまさか駅前で張っていたこの俺本人にこれから逆に尾行されるとは思っていないはず。
俺は俺で君を調べたって伝えたよね。それはね、実は継続中なんだわ。
化け猫ねねこに扮するねこっちは、秘密結社ねるこむの創始者だったが現在すでに結社から離脱。
この町の原住民で、現役本物の女子高校生であり、プログラムスキルに精通するハッカーであり、どうもまだ思惑がありそうな曲者だ。まあ謎が多重すぎる化け物よな。
太陽を脅迫し、俺を取材させる気だった、と。でも彼に逃げられて今頃は町野あかりと組んでいる。
俺はねるこむに属しながら、ねこっちも調べていた。依頼人あかりの希望で。あかりはおそらく、調べさせるよう誘導された。
町野あかりはとにかく太陽ファン。
自他共に驚愕するほかなし。彼女こそこの世で最強の泡沫太陽信者でありハイパーストーカーである。
メガネ君に某かの危機が迫っていると察知していて、俺は様子を見守らされている。何かあれば木目田さんが彼を守ってよね、ということだ。
個人的にはあかりの狂気が一番分かりやすくて信用できる。
なお、彼女に俺の連絡先を教えたのは、ねこっちに決まっている。
おそらくあかりは、ねこっちに裏切るよう誘導された。
どいつもこいつも突き抜けすぎていて共感はできん。
調べれば調べるほどそう思えてならん。
泡沫太陽は鬼才のクリエイター。
ねこっちは異才のプログラマー。
町野あかりは天才アルバイター。
俺は何や、どこまでも果てしなくしがない平凡なおっさんか。
自分も含め、全員が同じ創作プラットフォームのユーザーだった。
各々が何者かに導かれてmotoに集ったって訳じゃない。
偶然か?
こんなことってありえるのか?
最初はそう疑った。
しかし考えてみればmotoに日本の創作愛好家たちが集結するのは特に不思議ではない、むしろ自然なんだ。利用者数は推定10万人を超えるそこそこ大きな媒体らしいし。それに内部ではそのシステムの構造上、目的やセンスの近い者同士がわりとあっさりつながりやすいんだ。
木目田嵐丸は、motoに逃避していたよ。
自ら抱えた借金が膨らみ過ぎていて、その困窮をブログ風に書いていたら気が晴れた。
そればかりか、読者に面白いと褒められた。
さらには何と借金という現実問題もmotoつながりのご縁で一件落着だ。
あのダイレクトメールが来て驚いた。
「投げ銭システムの手数料が高すぎるから、口座か電子マネーのアカウント教えて。直でぶっこむわー」
しかしね、正直ここで自分の語る番が回ってくるとは思っていなかった。俺は本当は謎の怪人らしくもっと最後の方でばばんと登場したかった。
物語が加速させられたせいやな。
お、メガネ君がいよいよ動き出した。まず環状線。分かっていれば、乗り換えて心斎橋へ行くはず。
あっちでミスしなければ、ちゃんとここへ戻って来れる。ちゃんと? ああ、きっと。
幻の俺を追跡するメガネ君の追跡を開始。
君には大きな借りがある。
あの全てを返せなくとも、今の俺なりに力になりたい。
そう気合いを入れた直後、いきなり一休みしているのだろう。
メガネ君は今、駅前広場に面したスタバのテラス席で幸せそうにコーヒーを飲んでいる。さすがこの朝のさびれた町でもっともやる気の抜けたメガネ。
まるでダメ男や。あの瞬間のプチ感動は一体どこへ霧散したのや。
「こうして遠目に見ると……メガネ君は本当にただのぼんやりメガネ君やな」
俺・木目田嵐丸の意識はというと、今やあの巨大倉庫の中間管理職ではない。退職届は出してある。本業の私立探偵らしく、ターゲット・泡沫太陽をばっちり観察しとる真っ最中。
そう。本業は名探偵なのさ。だから誰かさんみたいな素人推理のちょっと上をゆくよ。
メガネ君ご本人はお気楽なものだ。
「まあなるようにならあ」
そんな気分か、危機を自覚しながら危機管理能力さえ不安定で油断するしかないのだろうか。まあ、こっちにとってはチャンスだ、今のうちに少し整理しよう。
このスペースでは、俺の主観で事実と推理を分けて考える。
思うにメガネ君もねこっちも町野あかりも才能が溢れ過ぎで、簡潔にまとめる意識は希薄や。
俺の依頼人の素性はもう明かしておく。もちろんまだここだけの話にしておいてほしい。町野あかりだ。
これまで登場してきたキャラクターらと同じく、俺も読者の皆様の目をすごく意識している。と言うか、この物語に出てくる登場人物は俺を含めて全員がアマチュアと言えどウェブクリエイターであるから、原則みんな閲覧される文章を意識して語っているのやな。
ここは一人称多視点群像の物語世界の中でありながら、ただの仮想や幻想と似て非なる。
言わば、『限りなく非透明な華の現象』
泡沫太陽同様に、ねこっちも町野あかりも木目田嵐丸も、日頃から小説くらいは書く。四名とも投稿はほぼ止まっているもののね。
それぞれの事情と状況はこう。
メガネ君こと泡沫太陽は、創作活動が停滞していて想像をコントロールできず外界つまりこの世界に何かその怪力をお漏らししているらしい。
現れた化け猫ねねこがねこっちだということは最初からわかっていただろうが、笑って誤魔化しやりすごし、とぼけたふりふり彼女から逃げてきた。
俺の逃亡先の目処はついているっぽく、俺を追跡中。ただしまさか駅前で張っていたこの俺本人にこれから逆に尾行されるとは思っていないはず。
俺は俺で君を調べたって伝えたよね。それはね、実は継続中なんだわ。
化け猫ねねこに扮するねこっちは、秘密結社ねるこむの創始者だったが現在すでに結社から離脱。
この町の原住民で、現役本物の女子高校生であり、プログラムスキルに精通するハッカーであり、どうもまだ思惑がありそうな曲者だ。まあ謎が多重すぎる化け物よな。
太陽を脅迫し、俺を取材させる気だった、と。でも彼に逃げられて今頃は町野あかりと組んでいる。
俺はねるこむに属しながら、ねこっちも調べていた。依頼人あかりの希望で。あかりはおそらく、調べさせるよう誘導された。
町野あかりはとにかく太陽ファン。
自他共に驚愕するほかなし。彼女こそこの世で最強の泡沫太陽信者でありハイパーストーカーである。
メガネ君に某かの危機が迫っていると察知していて、俺は様子を見守らされている。何かあれば木目田さんが彼を守ってよね、ということだ。
個人的にはあかりの狂気が一番分かりやすくて信用できる。
なお、彼女に俺の連絡先を教えたのは、ねこっちに決まっている。
おそらくあかりは、ねこっちに裏切るよう誘導された。
どいつもこいつも突き抜けすぎていて共感はできん。
調べれば調べるほどそう思えてならん。
泡沫太陽は鬼才のクリエイター。
ねこっちは異才のプログラマー。
町野あかりは天才アルバイター。
俺は何や、どこまでも果てしなくしがない平凡なおっさんか。
自分も含め、全員が同じ創作プラットフォームのユーザーだった。
各々が何者かに導かれてmotoに集ったって訳じゃない。
偶然か?
こんなことってありえるのか?
最初はそう疑った。
しかし考えてみればmotoに日本の創作愛好家たちが集結するのは特に不思議ではない、むしろ自然なんだ。利用者数は推定10万人を超えるそこそこ大きな媒体らしいし。それに内部ではそのシステムの構造上、目的やセンスの近い者同士がわりとあっさりつながりやすいんだ。
木目田嵐丸は、motoに逃避していたよ。
自ら抱えた借金が膨らみ過ぎていて、その困窮をブログ風に書いていたら気が晴れた。
そればかりか、読者に面白いと褒められた。
さらには何と借金という現実問題もmotoつながりのご縁で一件落着だ。
あのダイレクトメールが来て驚いた。
「投げ銭システムの手数料が高すぎるから、口座か電子マネーのアカウント教えて。直でぶっこむわー」
しかしね、正直ここで自分の語る番が回ってくるとは思っていなかった。俺は本当は謎の怪人らしくもっと最後の方でばばんと登場したかった。
物語が加速させられたせいやな。
お、メガネ君がいよいよ動き出した。まず環状線。分かっていれば、乗り換えて心斎橋へ行くはず。
あっちでミスしなければ、ちゃんとここへ戻って来れる。ちゃんと? ああ、きっと。
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