元Sランク冒険者の元に、突然やってきたのは幼女とゴーレムだった。

高殿アカリ

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夜が明けた次の日、レオンはメグと共にエルマニアの王都へと向かった。ディックたちは留守番だ。
出かける前、ディックたちは少し寂しそうにこちらを見ていた。
「すぐ戻るから大丈夫だよ」
「小さいの一人だけなら連れてきてもいいぞ」
レオンの言葉にディックたちの瞳は輝いた。
そのあとは机上での乱闘騒ぎだ。
あちらこちらで殴り合い、蹴飛ばし合いが行われ、最終的に残った一人がぼろぼろになりながらもレオンたちの前にやってきた。
その子をメグは優しく拾い上げた。
「全員の意識は繋がっているのにどうして喧嘩なんてするの」
少し怒ったようにメグが言う。
「そうなのか?」
うん、と頷いて肯定を示すメグとは対称的にディックたちは未だ不満を訴えている。
それでも粘り強く彼らをあやし、どうにか残りのディックたちを家の中に収めることに成功した。
家を出る頃には日は随分と高くなっていた。
遅れた時間を取り戻すかのように、レオンはメグを背中に乗せ、丸一日かけて街道を全速力で駆け抜けた。
王都の前までたどり着いた頃には夜の帳が下り始めていた。
しかしながら、王都の門は閉じておらず、むしろ数人の近衛兵と王家の紋章の入った馬車が待っていた。
「これは……大層な歓迎っぷりだなぁ」
一向に物怖じしないレオンと、彼の後ろに隠れるメグ。そんな彼らの前に現れたのは近衛兵の一人だった。
「久しぶりですね、レオンさん」
「マティアス」
王都で冒険者をしていた頃、レオンに懐いていた青年だった。どこへ行くにもレオンの後をついてきていた彼をレオンは懐かしく思い、目を細めた。
「近衛兵になったんだな。元気で何よりだ」
「はい。レオンさんがこの街を出た後、今の王様に拾ってもらったんです。本当はレオンさんについて行こうとしていたんですけどね」
「そうか」
「王様に止められちゃあ、どうしようもなかったです」
肩を竦めて茶目っ気たっぷりにマティスは言った。
「今ではチャールズ王の良き護衛です」
えっへんと胸を張るマティスにレオンは笑みがこぼれた。
穏やかな空気に少し気を緩めたのか、メグがレオンの服を掴み、注意を引く。
「なんだ?」
メグの身長に合わせて屈むレオンの耳にメグは口を寄せた。
「知り合いなの?」
彼女の問いにレオンもまた囁き返した。
「昔この街で仲良くしていた人だ」
「そうなんだ」
マティアスも馬から降り、二人の前にやって来る。
「はじめまして、マティアスだ。よろしくね」
メグの前にしゃがみ、右手を差し出したマティアスにおずおすとメグも応えた。小さなメグの手はマティアスのそれにすっぽりと覆われてしまいそうだった。
にこにことマティスは人好きのする笑顔を浮かべていた。
「それではこちらにどうぞ」
レオンとメグが案内されたのは先程からずっと待っている馬車だった。金銀を余すところなく使われた馬車は本来なら王族が乗るものであるのだが。
リチャード王の過剰な計らいにレオンは笑うしかなかった。
不相応だとどれだけ言ったところで、王が素直に聞くわけではないし、王命を出してまで従わせてくる可能性の方が余程高いのだ。
夜の闇の中でもきらきらと光る馬車に興味を示したのかディックがメグのポケットから顔を少しだけ出して覗いていた。
馬車に乗り込み、二人はふかふかの椅子に腰掛ける。王城までの短い時間ではあるが、レオン一行は手厚くもてなされたのだった。
王城の前に着くと今度は使用人一同に出迎えられた。
レオンとメグはマティスに導かれながら、王城へと入っていく。
メグはレオンの後ろを大人しく着いてきている。ときどき不安そうにレオンの服の裾をぎゅっと握っていた。
ディックは煌びやかな世界にわくわくしているのか、メグの肩に乗って当たりをきょろきょろと物珍しそうに見渡している。
恭しく歓迎されながら、王のいる謁見室の前までやってきた。
未だにここの対応には慣れやしねぇ。レオンはそれが嫌で王都から離れた土地で引退後の生活を送ろうと決めたのだ。
メグも城内に少しばかり興味があるようで、黒の瞳の奥が煌めいているのが分かった。
その様子だけを見ると、レオンには至って普通の子どものように思えた。
いや、普通の子どもならもっとはしゃぐのか? それで、目に付くもの全てに触って、遊んで、壊すのか?
モンベルトの街の子どもたちがここに来た場合を想定して、レオンは冷や汗をかいた。無知な無邪気さほど怖いものは無いのかもしれない。
そうこうしている内に、謁見の間の扉が開いた。
赤い絨毯の向こう側で、チャールズが玉座に座っていた。酷く退屈そうに頬杖をつきながら。
臣下たちが頭を垂れて王に進言する。
「元Sランク冒険者レオンを連れてきました」
「はい。ありがとう。みんなは下がっていいよ」
「「「はっ」」」
謁見室に取り残されたのはレオンとメグだけだ。
静まり返った室内で先に口を開いたのはチャールズだった。
「やぁレオン。よく来てくれたね。ここでは君は僕のただの友達だ。楽に話してくれていい、あの頃みたいに」
「あぁ、律儀なのは性に合わないから助かるよ」
ふっとチャールズは目を細め、その細い指で銀の髪をかきあげた。
「まさか君が大剣を持たない日が来るなんてね。僕は驚いてるよ」
レオンは自らの腰に視線を向け、肩を竦めた。
少し前までそこにあった相棒はもう居ない。否、居なくなったから引退したとまで言っても良いだろう。
「まだ落ち着かねぇけどな」
「ならまた持てばいい」
「そんな簡単な話じゃねぇよ。分かってるだろ?」
まぁね、とチャールズはどこか切なそうな笑顔を見せた。それから、レオンの後ろに隠れていたメグに視線を合わせた。
「やぁ、君がレオンのところに預けられたというメグだね?」
「こ、こんにちは」
「挨拶出来るなんて素晴らしい子じゃないか、レオン。それで、ここに来たってことはメグは学園に通うつもりがあるんだよね?」
「もちろんです」
「レオンも学園で働くということだね?」
「まぁそういうことになるな」
「嬉しいよ、レオン。君のその才能を前から買ってはいたんだけどね。如何せん、セラフィナイトのギルド長から引退後に話をつけてくれって言われてしまってね。レオン、君は愛されているよね」
チャールズに言われ、初めて気がついた。
現役のとき、ある程度好きに自由に気の向くままに冒険が出来ていたのはギルド長の計らいがあったからなのかもしれない。
「あぁ、そうかもな」
チャールズは少しだけ寂しそうな目をしていた。
「さて、それじゃあ僕はそろそろ寝るよ。君たちも今日はゆっくり休んで。明日は学園を案内させるよ」
そう言って優雅に立ち上がると、チャールズはそのまま部屋を出ていった。
頃合いを見計らったかのように、レオンたちの後ろで謁見の間の扉が開かれた。
使用人の案内でレオンたちは与えられた部屋へと向かった。
メグとディックを寝台に寝かせたあと、レオンはカウチソファーで眠る。流石に同じ寝台で寝るわけにもいかないだろう。

朝方、ふと目が覚めたレオンは庭園を散歩することにした。
せっかく王城に来たのだ。
よく手入れされた庭を堪能して帰ろう。
美しい見栄えになるよう計算された、色とりどりの花が咲き乱れている。その花たちに囲われるように佇む人物がいた。
レオンは彼を見つけるや否や、ゆっくりと近づいていく。
「……チャールズ」
「やぁ、レオンじゃないか。君は昔と変わらず早起きだねぇ」
チャールズはまるでレオンがここに来ることが分かっていたかのように、一切の驚きを見せなかった。
「君こそお供もつけずにこんな所で何をしているんだ。王になったんじゃないのか。朝方は冷え込む。風邪を引いたら心配されるぞ」
「ははっ、小言が多いのも変わらないなぁ。僕は君のお節介が大好きなんだ。ここに来て正解だったかな」
チャールズは白い百合に手を添え、憂う。
それからぽつりと小さく呟いた。
「リリィも君の小言が好きだった。知っていたかい?」
チャールズの言葉にレオンははっと目を見開いた。
「いや。それは知らなかった。何か言う度にいつも不機嫌そうな顔をされていたからな」
「あれは彼女なりの照れ隠しだったのさ」
チャールズはレオンに背を向け、百合の花を手折る。それから、彼は冷徹な表情で花弁をぐしゃりと握り潰した。
レオンは彼の様子に気が付かない。
反転して、笑顔を見せたチャールズは再び口を開いた。
「ところで、メグはリリィに少し似ているね。君が彼女を気にかけてしまうのはそれが原因かい?」
「まさか。そんなつもりはない」
レオンは不愉快そうに眉をひそめた。
その様子を楽しそうに見つめて、チャールズは続ける。
「まぁどっちでもいいけど。君が護ると決めたなら、きちんと責務は果たさないとね。……またあの時の二の舞にならないように」
「そんなことにはならない‼」
レオンの怒号が庭園に響いた。
驚いた鳥たちがばさばさと朝の空を舞っていく。
静けさだけが辺りを満たす。
チャールズは嘲笑を浮かべた。
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。僕にだって君のことを心配する権利はあるだろう?」
「……悪かった、チャールズ」
チャールズはレオンの肩に手を当てた。
「分かってくれればいいんだ。僕も無神経だったよ」
「あぁ……」
「じゃあ僕はそろそろ戻るとしよう。家臣たちがそろそろ騒ぎ出す時間だ。学園の案内はマティスに任せることにしたから、よろしくね」
妖艶な笑顔でチャールズはそう言った。
去っていく彼の背中にレオンは声を投げかける。
「チャールズ、俺はリリィのことを忘れたわけじゃあないからな! それだけは覚えておいてくれ!」
レオンの言葉にチャールズは片手を挙げてひらひら手を振って応えた。
「……僕が忘れさせるわけがないのにね……」
チャールズの小さな呟きは無論、レオンには届いていない。
庭園の白百合に朝露がきらりと光っていた。
まるで涙の雫みたいに。

使用人たちが慌ただしく廊下を行き来する頃、マティスはレオンの利用する客間に続く扉をノックした。
程なくして朝の用意を済ませたメグとレオンが出てくる。
「おはようございます。昨日はよく眠れましたたか?」
「まぁな」
早起きのせいで欠伸をしながらそう言ったレオンの言葉はどこか信憑性が低い。
「今日は学園内を案内する予定なのですが、他にリクエストなどはありますか?」
「いや特にないな」
「そうですか。それでは参りましょう」
マティスはメグに手を差し出した。
メグは恐る恐る彼の手を取った。
マティスにエスコートされながらも、メグの視線はちらちらと後ろに向く。どうやらレオンがちゃんと後ろを着いてきているのか不安なようだ。
彼女と目が合う度に、レオンは小さく手を振ってあげる。
その度にメグは少し微笑んだ。
大理石の床に足音を響かせながら、マティスは会話を始めた。
「ちなみに、転入日と初勤務日は来週の頭だそうですが問題ないですか?」
「あぁ、大丈夫だ。特にすることもないしな」
「レオンさんの武器を持つ姿をもう一度拝めるなんて思いもしませんでしたよ。楽しみです」
にこにことマティスが振り向きがちに言う。
レオンは愛のある呆れた笑みを見せた。
「戦うための武器と教えるための武器では持ち方が全然違うだろう」
「それもそうですね」
確かに、とマティスは納得顔だ。
暫くの談笑の後、回廊の向こう側に大きな門が見えてきた。
「エルマニア王立学園は城の敷地の一部にあります。あれが学園の敷地に通じる正門です。ご覧の通り、正門は城に直通となっているため学生や教員たちは基本的に裏門を利用します。レオンさんたちも裏門を使って通うことになると思います」
「王都には長い間いたはずだが、こんな場所があるなんて知らなかったな」
荘厳な門を見上げ、レオンは感心した。
「まぁ王立学園は貴族の中でも選ばれた者しか入学できない学園ですからね。貴族学院でも教わらない内容を教えるのだとか。詳しい話は俺も知らないので学園長にでも伺ってください」
マティスの言葉が終わるや否や、学園の正門が重々しい音をたてて開いた。中から出てきたのはローブを纏った白髪の老人だった。
「君たちが例の人たちですな?」
ほっほっほっと柔和な笑みを浮かべ、レオンたちを歓迎したこの人こそ、エルマニア王立学園のエイブラハム理事長だった。
「さ、入るのじゃ。ここからはわしが案内しよう。……それと、そこの近衛兵の君も一緒に来るとよい。学園内の実情は漏らせないようにしておるからのぉ」
エイブラハム理事長が指先をくいっと内側に曲げると、何やら自身以外の外部的な力が働き、一同は門の中へ吸い寄せられていった。
背後でばたんと扉の閉まる音がして、同時に紫色の光りが全員に降り注いだ。
「……魔法、ですか」
レオンの呟きにエイブラハム理事長はにっこりと笑った。
「あぁそうじゃ。それも門自体に刻まれた古の魔法でな。中々見れるものではないんじゃよ」
「どんな魔法がかけられているのですか?」
「学園の敷地内で見聞きした全てを外に公表出来なくする魔法じゃ」
理事長の説明にメグの瞳が好奇心に揺れる。
その光を彼は見逃さなかった。
「そこのお嬢ちゃんも魔法が好きそうじゃのぅ。そういう子はこの学園に向いておる」
それから、メグの肩に乗っているディックに手のひらを出した。そろそろとディックが理事長の手の上に乗り込む。
土の塊で出来たディックの頭を理事長は指でうりうりと撫ぜた。するとディックは気持ちよさそうに目を細めて理事長に身体を委ね始めた。
理事長の指先から灰みのある黄緑色の光が溢れ、ディックの空色の魔力と混ざり、螺旋を描きながら二色の光は空へと伸びていった。
「ふむ、魔力量も純度も申し分ない子じゃ。エルマニア王立学園の入学を許可しよう」
理事長の言葉が紡がれると、今度は白く発光する魔法陣がメグの足元に現れた。
目が眩むほどの強い光を一瞬放ったあと、魔法陣は消え去った。まるで何事も無かったかのように。
一連の流れを感心しながら見ていたレオンを見て、理事長は少しばかり目を見開いた。
「お主のことは聞いていたが……。確かに、これだけ濃度や種類の違う大量の魔力を至近距離で浴びても倒れないとは、学園に相応しい人材だのぅ」
それから、満足そうに顎の髭をさすった。
「ところで、後ろの彼は大丈夫かの?」
「「え?」」
理事長の言葉にレオンとメグは同時に反応すると、ばっと後ろを振り向いた。そこには魔力に当てられたマティスがぶっ倒れていた。
「マティス、大丈夫か⁉」
理事長は駆け寄ろうとするレオンを手で制した。
「ただの魔力酔いじゃよ。城の医務室に運ばせるから心配するでない。それより、早いとこ校内を案内せねばな」
くるりと踵を返した理事長の背中を、レオンとメグは慌てて追いかけたのだった。

噴水のある庭園を抜け、学園の中を歩く。
学園内には教員ごとに部屋が割り振られており、学生たちは時間が来るとそこへ向かうようになっているらしい。
授業のない子どもたちのために、広い娯楽室や食堂は常に解放されているという。
「裏には広大な森が広がっておってのぅ、実技系の授業や魔法の実践なんかを行う時に利用することが多いんじゃ。お主の滞在場所も森の一画になるじゃろう」
理事長の言葉にレオンは内心ほっと息を吐いた。
元Sランク冒険者の一番苦手なものとは何か? ――それは閉じ込められた空間に長時間拘束されることである。
「この王立学園は本来、エルマニア王国の魔術師となる人材を育成させるために創られたのじゃ。未だにその風潮は根強くてのぅ。魔法の強さこそ、ここでは正義となるのじゃ」
魔術師とは王国に公認された魔法を扱う者たちのことを指している。
魔術師と認定されていないにも関わらず、魔術師並の魔力や技術、知識を持つ者を一般に魔女と呼ぶ。
魔術師と魔女の違いは国という組織に寄与するかどうかだ。
魔術師は各王国に在籍し、その国のために自らの力を使う一方で、魔女は国に縛られない。
各国の中央に存在する闇の領域「魔女の森」でひっそりと生きているのだ。
時折、村や街に現れては魔法の知識や技術を使って薬屋を開いたり、まじない屋として溶け込んだりすることもあるのだとか。
レオンの姉であるエレナも魔女のひとりであった。
彼はエルマニア王立学園に在籍することで、これから魔術師と魔女の軋轢を一番近くで見ることになるのかもしれない。
レオンは理事長にはっきりと尋ねた。
「つまり、エルマニア王立学園は魔術師育成機関なのですか?」
「あぁそうじゃ。普通の貴族学院では簡易な魔法しか学ぶことはできないからのぅ。魔力量や純度が桁外れに高い貴族の子どもや、街中で突然覚醒するような庶民の子がここに通っているのじゃ」
「俺には魔力すら無いのですが、一体何を教えれば?」
珍しくレオンの瞳が困惑に揺れる。
「お主には基本的な剣術及び、狩りの基本やサバイバル術なんかも教えてもらいたいと考えておるのじゃ。いくら優秀な魔術師の卵とて、旅のひとつすら満足に出来ない子どもたちが相手じゃからな。教えることは沢山あるのではないか?」
心底愉快そうに笑ったあと、ところで、と理事長は足を止めてレオンの目を真っ直ぐに見つめた。
「お主の周りには魔女が居るだろうか?」
レオンはしっかりと理事長を見つめ返した。
そこに動揺は一切なかった。
「居たらどうだというのです?」
「いいや、お主が国王の紹介でここに居る以上、わしには何も出来んがね。ただ十年前のエルマニア王家惨殺事件の事を覚えているかね?」
「えぇ、まぁ」
レオンは俯きがちに応えた。脳裏には、兄とよく似た銀髪をふわふわと揺らしながら庭園を駆けてゆくリリィがいた。
「あの事件は魔女のひとりが学園の魔術師見習いを唆したことがきっかけだと言われておる。彼女の話を真に受けた当時の見習いは交流のあった貴族と結託し、王家に反旗を翻したのじゃ。その結果、当時の国王両陛下及び娘のリリィ様の三人が亡くなられるという……誠に悲惨な事件だったのじゃ」
理事長の話にレオンは無意識に拳を強く握り締めていたらしい。爪が皮膚にくい込み、気が付けば血がじんわりと滲んでいた。
メグも痛切な表情で話を聞いていた。ときどき、何かを聞きたそうにレオンの横顔を見つめている。
「まぁ、そんな話をしてもお主らには関係なかろう。目をかけていた魔術師候補だったから力が入ってしまったわい。すまなかったのぅ」
一転して、優しい声色でそう告げた理事長は再び学園の説明に戻る。
「話が逸れてしまったの。さてさて、この小さなゴーレムの持ち主には第一学年に入ってもらおうと思っておる。エルマニア王立学園に入学する子どもは少ないのでな、今年の第一学年は十人もいなかったはずじゃ。すぐに慣れるじゃろうて」
メグとディックは目を合わせ、微笑み合った。未来への期待が二人の胸の内を膨らませていることが見てとれた。
「して、簡単な読み書き算数は出来るじゃろうか?」
理事長の問いにメグはこくんと頷いた。
その様子に驚いたのは他でもない、レオンだった。
「え、メグはそんなことも出来るのか⁉」
あまりの驚きようにメグがレオンに尋ねる。
「レオンさんは出来ないの?」
無垢な瞳に試され、レオンはふいと視線を逸らした。
「大丈夫じゃ。冒険者に事務作業などは鼻から期待しておらんからの」
あっけからんと理事長に言われてしまい、それはそれで複雑なレオンであった。
広大な学園の敷地内を主要な箇所だけぐるりと周り、レオンたちは城に続く方の正門へと戻ってきた。
門が開いて理事長とは別れを告げた。

城側の回廊にて、柱に持たれかけながらレオンたちを待っていたのはチャールズその人だった。
「やぁ、学園はどうだった?」
「かなり広い敷地だと思ったよ。こんな場所があるなんて外から分からないものなのだな」
チャールズは顎に指を当てながら首を傾げた。
「うーん、そうだなぁ。僕も学園の生徒ではないから詳しいことは分からないんだけど、学園の存在を認識阻害させる魔法がかけられているらしい」
「おいおい、仮にも一国の王の口がそんなに軽くていいのかよ」
「心外だなぁ。僕とレオンの仲だろう? ましてや君は来週から学園内の人間になるんだし。あ、そうそう。伝え忘れていたんだけどね。王都に君たちが住むための屋敷も用意してあるんだ」
そう言って、チャールズは住所が書かれた一枚の紙きれをレオンに手渡した。
「助かるよ」
「かなり大きな屋敷だけど、使用人もこちらで準備しておこうか? ちゃんとした家の者を選んであげるよ」
にこにことチャールズはご機嫌だ。
レオンの世話を焼きたくて仕方がないみたいだった。
だが、レオンは頭を左右に振ってチャールズの善意を断る。
「いや、人はこちらで用意する。そんなに多くの人間が居ても落ち着かないだろうしな。それより、俺たちは山小屋のひとつでもあれば十分なんだが今から、」
「今更、変更したいなんて馬鹿なことは言わないよね? 何せ君たちが邸宅に住むことは王命なのだからね。断ったら犯罪になるもんね」
レオンの言葉をぶった斬り、食い込みながら答えたチャールズにレオンは溜息を吐いた。
まぁ仕方がない。
使用人を選ぶ権利だけでも貰えただけありがたいと思わなくてはな。
「そうだな。悪かった。俺だって犯罪者になりたいわけではないしな」
使用人は一人か二人だけで十分だろうし、セラフィナイトの掲示板にでも募集をかけてもらおう。
レオンが頭の中で算段をつけていると、チャールズから再度声がかけられる。
「授業は朝の鐘が鳴ってから三つ目の刻から始まるからね。来週には引っ越しも済ませておいてね。教科書や制服なんかは新居の方に手配させておくよ」
「あぁ、助かる。何から何までありがとうな」
「構わないよ。それより、さ」
チャールズの眼光が鋭くレオンを射抜く。
「エイブラハム理事長には何か言われなかったかい?」
「いいや、何も?」
しばし二人の視線が交差する。
レオンは目を逸らさなかった。
先に折れたのはチャールズの方だった。
「ふぅん、ならいいや」
チャールズは頭の後ろで手を組み、上を見上げた。笑顔の裏で彼の瞳は何かを思案しているようにも見えた。

王城からの帰り道、夕焼けが街道を優しく包み込んでいる。レオンにおぶられたメグが不安そうな声色で彼に問いかける。
「理事長の言っていた魔女って、まさかエレナさんのことじゃないよね……?」
レオンの腕に力が入る。
何かに耐えるように静かな声で彼は答えた。
「もし仮に……仮にそうだとして、メグはエレナのことを信じられなくなるか?」
「ううん、そんなことない。エレナさんは私に世界を教えてくれた人だもん」
「なら、事実なんてどっちだっていい。真実ばかりが世の中にあるわけじゃねぇんだ。違うか?」
「ううん、本当だね。エレナさんが私にとって大事な人であることには変わらないもんね」
「そうだな」
そういえば、とメグが明るく声を出した。
「私、文字とか簡単な算数なら教えられるけど、どうする?」
メグから明るさに似合わない哀れみの気持ちが滲み出ていた。レオンは吃りながら返事をする。
「い、いや、大丈夫だ」
一番の課題はレオンが文字を覚えることなのかもしれなかった……。

次の日、レオンはメグとモンベルトの街に来ていた。
メグにはローブを深く被ってもらっている。ついでに、護衛のミニディックもポケットにいる。
メグは終始、街の大きさに感動している様子だった。
あちらこちらに出ている露店の商品全てに目がいくようであり、レオンはメグの注意を逸らすのに必死だった。
今回はメグの普段着をさらに買い足すのが目的である。
そのため、露店全てに立ち寄っていたら時間がいくらあっても足りないことは明白だった。
帰りにセラフィナイトのギルドにも寄って使用人の募集をかけようということも考えていた。
街道沿いの露店には各地方の名産品が売られている。
そのうちのひとつ水龍まんじゅうを片手に頬張りながら、レオンたちは洋服屋へと向かっていった。
店内に入ると、キラキラと輝く洋服たちを見てメグの心は動転した。
「……すごい。私こんなにたくさんのお洋服があるの初めて見た」
「何着かだけ買うといい。学園が始まったら買い物に行けないかもしれないからな」
「うん」
洋服に気を取られながら、何とか返事をするメグ。
「でも種類が多くてどれを選べばいいかわからない。どうしよう、レオンさん」
メグの困った様子にレオンは少しだけ悲しい気持ちになった。何故なら彼女の言葉は今まで何かを選んできたことの無い人間のものだったからだ。
「何でもいいんだ。好きなものを選べばいい」
「でも何が好きか分からないよ?」
「簡単なことだ。心がワクワクするものを選ぶ、ただそれだけだ」
「ワクワクするもの、ワクワクするもの……」
メグは独り言を呟きながら、真剣な眼差しで店内を歩き始めた。
一枚一枚、洋服を愛おしそうに見て回っている。
そうして彼女が見つけてきたのは、空色の布地に淡い黄色の花の刺繍が施されたワンピースだった。
正直言ってセンスが良いとは言えないだろう。
「本当にそれでいいのか?」
レオンが訪ねると、メグはにこりと笑ってこう言ったのだ。
「だって私の空色の魔力に、エレナさんとレオンさんの髪色の花が添えてあるんだもん。これ以上ないくらい好きなものだよ」
「そうか」
少しばかり照れくさくなりながらも、まぁメグが楽しそうならそれでいいか、とレオンは思った。
自分で選ぶことの楽しさを知ったメグであったが、結局彼女が選ぶことが出来たのはそのワンピース一着だけだった。
レオンたちがお店を出ようとした時、店内から先日接客してくれたマリアが声をかけてきた。
「すみません。……あの! この街を出ると聞きました」
「あぁ、王都に住むことになったんだ」
レオンの返事にマリアの眉尻がしゅんと下がる。
「そうですか……。凄く残念に思います。街のみんなも同じ気持ちです。この街を出て行かないでほしいって」
「ありがとう。また時間が出来たらちょくちょく戻ってこようとは思っているんだ」
「そうなんですね。でしたらまた、うちの店にも寄ってください」
マリアはにっこりと営業用の笑顔を作った。だが、それでも残念そうな声は隠し切れていなかった。
「そう言って貰えると嬉しいよ。……俺が来たのがこの街でよかった。新参者の俺を温かく迎えてくれてどうもありがとう」
チャリンとドアベルの心地よい音が耳に残る。
レオンたちは洋服屋を後にした。
レオンたちが次に向かったのはセラフィナイトだった。受付係に、掲示板に依頼を出す手続きをしてもらうためだ。
『王都にて家事及び邸宅の管理をしてくれる方を一・二名募集中。本日中に受付までに申し出ること。独身の住み込み可能な方を優先します。』
掲示内容を見た受付係が声を出す。
「えー、レオンさん王都に戻っちゃうんですかぁ。寂しくなりますよ~。てか、このギルドもまたレオンさんの後を追ったりして」
くふふ、と悪戯な笑みを浮かべる受付係。
「いや、流石にそこまでは」
「またまたぁ。うちのギルド長ならやりかねないっていうか。レオンさんのこと大好きだから」
ははは、とレオンは乾いた笑いを返すしかない。
否定できないのが何とも辛いところだ。
「まぁ王都に戻っても、ここに居ても、遊びに来てくださいねぇ。新人冒険者たち、結局レオンさんと満足にお話出来ていないみたいですし」
「あぁ、そうするよ」
そんな会話をしていると早速掲示板の前の募集を見たある人物がレオンに話しかけてきた。
「おい、この依頼俺が引き受ける」
ガイアだった。
予想外の出来事に、レオンは一瞬固まる。
「ガイアさんばっかりずるくないか?」
後ろから若い冒険者たちの声が聞こえてくる。
「うるせえ、昔馴染みの特権だ」
偉そうに胸を張るガイアにレオンは確認する。
「明日から王都に引っ越すのだが、本当に問題ないだろうか?」
「大丈夫だっつってんだけど。お前が冒険者にならねぇから、俺がお前のパーティに入ってやるって言ってんだ。ありがたく思え」
「冒険者と家事代行業務は似て非なるものだと思うが。だか、こちらとしても知ってる人間だと助かる。互いに遠慮なく過ごせそうだ。ありがとう」
人好きのするレオンの笑顔にガイアはあてられてしまう。
「……そっ、そうかよ」
レオンはメグの背中にそっと手を当て、挨拶を促した。
「メグです。よろしくお願いします」
人見知りを発揮しながらもメグはきちんと挨拶した。ガイアが少しドギマギしているのが見て分かった。
小さな子供の扱いには慣れていないのかもしれなかった。
おいおい、先行きが不安だなぁ。
少しばかり二人の距離感が心配になるレオンなのであった。

次の日の朝早く、レオンとメグとガイアは王都に向けて出発した。
ガイアもそこそこの速さで走れるように身体強化をしていたため、約二日間かけて王都へと向かうことが出来た。
こうしてレオンのモンベルトでの隠居生活は幕を閉じた。モンベルトにお別れを、そして新たな門出に祝杯を。
王都での新生活が彼らを待ち受けていた。
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魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
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 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
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この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
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海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

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 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

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