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Story 01 side.ANKO
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次の日、早速私はチャコに呼び出された。
夕方のことだった。
『この前の公園 夜中の二時ね』
端的に示されたメッセージに、私の拒否権はない。
高校生になったタイミングで私の自室は離れに移っていたのだが、そのことに感謝する日が来るとは思わなかった。
軽い仮眠を取ったあと、私は彼女に会う準備を始めた。
穀雨の季節、深夜の時間はまだ少し肌寒いだろう。
「本当は綺麗なワンピースでも着て行きたかったんだけど……」
はぁと溜め息を吐いて、ロングパンツに手を伸ばす。
どちらにせよ、辺りは暗く、お洒落などしてもほとんど意味はないのだ。
そう納得する。
その代わり、と言うわけではないが、離れの簡易キッチンで琥珀糖を作ることにした。
琥珀糖はどこまでもカラフルでキラキラしていて、幻想的で、プレゼントにはぴったりだと思う。
深夜の郊外はとても静かで、平穏で、悲しいことなどこの世界には何もないみたいだ。
公園に着くと、チャコがブランコに揺られながら私を待っていた。
「遅い。寒かったんだけど」
むすっとしたチャコの鼻は少し赤い。
「ごめんなさい。少し道に迷ってしまって」
「まぁいいけど」
チャコは軽快にブランコを降りると、ん、と私が昨日渡したハンカチを突き出してきた。
「ほら、早く受け取ってよ」
ぶらぶらと揺らして急かす彼女の手から私はハンカチを貰う。
ふわり、と鼻をくすぐったのはいつもとは違う柔軟剤の香りだった。
薔薇の香りを纏わせたハンカチは、既にチャコのものになってしまったみたいだ。
ぼーっと手元に視線を落としながら、そんなことを考えていると、チャコが私の持っていた紙袋に気が付いた。
「それ、何?」
「あ、えっと。琥珀糖を作ってきたの。迷惑じゃなかったら、受け取って欲しい、です……」
そっと差し出すと、チャコは戸惑ったように瞼を瞬かせた。
「え? なんで?」
「そうだよね。こんなの貰っても嫌だよね。……ごめんね」
紙袋を後ろ手に隠そうとした私の手首をチャコが素早く掴む。
「そうじゃなくて。どっちかって言うとあたしの方がお礼しなくちゃいけない方でしょって話。甘いもんは好きだから、琥珀糖は貰う」
半ば強引に紙袋を奪っていったチャコを眺めた。
確かに、どうして私プレゼントを用意したんだろう。
……渡したかった、から?
首を傾げた私はチャコに手を引かれ、ブランコに腰を下ろす。
まるで昨日の再現だ。
私、実は鈍間な人間なのかもしれない。
ぎぃこぎぃこ。
ブランコの鎖の音がやけに耳につく。
チャコは紙袋から琥珀糖を取り出して、じっと見つめていた。
「ふぅん、綺麗じゃん。作ったの?」
「うん」
「はい、あたしだけ食べるのも違うし。どーぞ」
私の手のひらにも琥珀糖が一欠片落とされた。
さくり、とチャコの口元から音が鳴る。
続いて私も琥珀糖を口に入れた。
「甘いな」
「和菓子だもん」
「へぇ。こんな綺麗なのも和菓子認定されてんだ。じじばばが食べてるような渋いもんしかないと思ってた」
「金平糖も和菓子だよ」
「あぁ、あれもカラフルで可愛いよね。映えって感じ」
「そうだね。うちの店にも高校生とか、よく買いに来るよ」
「そう言えば餡子の家は和菓子屋だっけ」
「うん」
「じゃあ、跡取り娘だ。大変そうだねぇ」
揶揄うようにチャコの瞳が光る。
まるで別の世界線からの物言いみたいで、私はむっとした。
「そんなことない。普通。深夜に公園に来たでしょ」
「確かにね。門限とかないんだ」
「……あるけど、」
「あるんだ」
「バレなければいいでしょ?」
「なるほど、そりゃ立派な反抗期だ」
くつくつと笑う彼女が憎たらしくて、でも憎めなくて、ずるいって思う。
「ね、じゃあさ。これからラブホ行こうよ」
唐突な彼女の誘いに、私はごくりと生唾を飲み込んだ。
「反抗期の、続きだよ?」
こてりと首を傾げて無邪気に無害に無垢に彼女が問いかけるものだから、私はただ首を縦に振るほかなかった。
夕方のことだった。
『この前の公園 夜中の二時ね』
端的に示されたメッセージに、私の拒否権はない。
高校生になったタイミングで私の自室は離れに移っていたのだが、そのことに感謝する日が来るとは思わなかった。
軽い仮眠を取ったあと、私は彼女に会う準備を始めた。
穀雨の季節、深夜の時間はまだ少し肌寒いだろう。
「本当は綺麗なワンピースでも着て行きたかったんだけど……」
はぁと溜め息を吐いて、ロングパンツに手を伸ばす。
どちらにせよ、辺りは暗く、お洒落などしてもほとんど意味はないのだ。
そう納得する。
その代わり、と言うわけではないが、離れの簡易キッチンで琥珀糖を作ることにした。
琥珀糖はどこまでもカラフルでキラキラしていて、幻想的で、プレゼントにはぴったりだと思う。
深夜の郊外はとても静かで、平穏で、悲しいことなどこの世界には何もないみたいだ。
公園に着くと、チャコがブランコに揺られながら私を待っていた。
「遅い。寒かったんだけど」
むすっとしたチャコの鼻は少し赤い。
「ごめんなさい。少し道に迷ってしまって」
「まぁいいけど」
チャコは軽快にブランコを降りると、ん、と私が昨日渡したハンカチを突き出してきた。
「ほら、早く受け取ってよ」
ぶらぶらと揺らして急かす彼女の手から私はハンカチを貰う。
ふわり、と鼻をくすぐったのはいつもとは違う柔軟剤の香りだった。
薔薇の香りを纏わせたハンカチは、既にチャコのものになってしまったみたいだ。
ぼーっと手元に視線を落としながら、そんなことを考えていると、チャコが私の持っていた紙袋に気が付いた。
「それ、何?」
「あ、えっと。琥珀糖を作ってきたの。迷惑じゃなかったら、受け取って欲しい、です……」
そっと差し出すと、チャコは戸惑ったように瞼を瞬かせた。
「え? なんで?」
「そうだよね。こんなの貰っても嫌だよね。……ごめんね」
紙袋を後ろ手に隠そうとした私の手首をチャコが素早く掴む。
「そうじゃなくて。どっちかって言うとあたしの方がお礼しなくちゃいけない方でしょって話。甘いもんは好きだから、琥珀糖は貰う」
半ば強引に紙袋を奪っていったチャコを眺めた。
確かに、どうして私プレゼントを用意したんだろう。
……渡したかった、から?
首を傾げた私はチャコに手を引かれ、ブランコに腰を下ろす。
まるで昨日の再現だ。
私、実は鈍間な人間なのかもしれない。
ぎぃこぎぃこ。
ブランコの鎖の音がやけに耳につく。
チャコは紙袋から琥珀糖を取り出して、じっと見つめていた。
「ふぅん、綺麗じゃん。作ったの?」
「うん」
「はい、あたしだけ食べるのも違うし。どーぞ」
私の手のひらにも琥珀糖が一欠片落とされた。
さくり、とチャコの口元から音が鳴る。
続いて私も琥珀糖を口に入れた。
「甘いな」
「和菓子だもん」
「へぇ。こんな綺麗なのも和菓子認定されてんだ。じじばばが食べてるような渋いもんしかないと思ってた」
「金平糖も和菓子だよ」
「あぁ、あれもカラフルで可愛いよね。映えって感じ」
「そうだね。うちの店にも高校生とか、よく買いに来るよ」
「そう言えば餡子の家は和菓子屋だっけ」
「うん」
「じゃあ、跡取り娘だ。大変そうだねぇ」
揶揄うようにチャコの瞳が光る。
まるで別の世界線からの物言いみたいで、私はむっとした。
「そんなことない。普通。深夜に公園に来たでしょ」
「確かにね。門限とかないんだ」
「……あるけど、」
「あるんだ」
「バレなければいいでしょ?」
「なるほど、そりゃ立派な反抗期だ」
くつくつと笑う彼女が憎たらしくて、でも憎めなくて、ずるいって思う。
「ね、じゃあさ。これからラブホ行こうよ」
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