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終章
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「まさか、あのいじめのことも一花が全てを知っていたなんて黒閻は夢にも思わないでしょうね」
私は彼女たちに話しかけた。
「えぇ、ほんとに。彼らを騙すことが楽しくて、私がわざといじめられていたって知ったら、卒倒でもしちゃうんじゃないかしら」
「ところでさ、一花は結局フウガのことが好きなの? ね、愛美、気になるよね?」
「……そうね、確かに気になるわ。それとも山田先輩が?」
私たちの問いに一花は意味深に微笑んだ後、
「あは。どっちも好きなわけないじゃん? 私はただ、面白いものを見たかっただけよ」
本当に、優秀な友人たちだこと。
さくさく。
さくさく。
うっすらと積もり始めた雪を踏みしめながら、帰り道を歩いていく。
真っ白な雪も、一度誰かに踏まれてしまえば、灰色の薄汚れた色に変わりゆく。
私たちはそのことを良く知っていた。
さくさく。
さくさく。
私は彼女たちに話しかけた。
「えぇ、ほんとに。彼らを騙すことが楽しくて、私がわざといじめられていたって知ったら、卒倒でもしちゃうんじゃないかしら」
「ところでさ、一花は結局フウガのことが好きなの? ね、愛美、気になるよね?」
「……そうね、確かに気になるわ。それとも山田先輩が?」
私たちの問いに一花は意味深に微笑んだ後、
「あは。どっちも好きなわけないじゃん? 私はただ、面白いものを見たかっただけよ」
本当に、優秀な友人たちだこと。
さくさく。
さくさく。
うっすらと積もり始めた雪を踏みしめながら、帰り道を歩いていく。
真っ白な雪も、一度誰かに踏まれてしまえば、灰色の薄汚れた色に変わりゆく。
私たちはそのことを良く知っていた。
さくさく。
さくさく。
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