その女、女狐につき。

高殿アカリ

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終章

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 私は話を続けることにした。



「そこに私からの楽しい楽しい提案があったってわけね」



「えぇ、まるでクリスマスの朝みたいな気持ちだったわ。目覚めると、枕元に素敵なプレゼントが置かれているかのような」



「そこまで言われると嬉しいわね。この計画で一番楽しかったことは?」



「そうねぇ、私のリンチ事件かしら? だって、愛美の特殊メイクの腕が凄かったんですもの。びっくりしたわ。まさか、あんなにリアルな殴られた傷がすぐに出来るなんてね。今度、教えて頂戴よ」



「あら、それを言うなら私の方こそびっくりしたわ。あんなにもドスのきいた何人もの女の子の声色を使い分けているんですもの。一体どこで習ったのよ」



「それは企業秘密よ」



 可愛らしく、けれども狡猾に、一花は笑った。



 がらり。

 再び扉の開かれる音がして、里奈が教室に入ってきた。



「あらあら、何だか楽しそうね? 私も混ぜてよ」



 そうして、私たちは来年の新たな計画について話し合った。



 何か楽しいことはない?

 何か面白いことはない?



 そうじゃないと、私たちは死んでしまうのよ。

 だって、女狐なんだから。



 帰り際、私は楽しそうに会話を交わす一花と里奈に聞いてみた。



「ねぇ、実際あなたたち二人がちゃんと言葉を交わすのは初めてなんじゃないの? どうしてそんなにすぐに打ち解けているのよ」



 二人は声を揃えて、こう返した。



「「あら、知らない? 類は友を呼ぶって」」



 私たちは顔を見合わせて、それから笑い合った。



 真っ白な雪の降る、終業式のことだった。

 全てはそう、真っ白な雪の中に消えていく。



 リンチ事件の真相も。

 いじめの全貌も。



 何もかも、三人で決めたこと。
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