157 / 163
11.平和的に解決しましょう
5
しおりを挟む
「それじゃあ、そういうことで。さようなら」
私は最後にそう締め括り、後ろにある扉に向かって歩き始めた。
黒閻に背中を向けるようにして。
こうすることで、終わりだという印象を彼らに与えるの。
だから、まさか自分たちが疑われているなんて到底考えられないでしょう?
うふふ。
その手の最も内側に、私の駒がいることにも気付かずにね。
扉に手をかけたところで、私は黒閻の方に振り返った。
ふと思い立ったのだ。
一応の決着はつけておくべきなのかなって。
だから、私は黒閻唯一の女の子に向かって微笑みかけた。
私の親友。
私の味方。
……私の、仲間。
「ねぇ、一花。私たちはこれからも親友よね?」
優しく、美しく、嫋やかに。
儚く、麗しく、艶やかに。
私たちは笑い合った。
「えぇ、もちろんよ」
可憐な少女。
寵愛姫の彼女。
私の親友。
一花は、一瞬だけそのヴェールを取り払った。
まるで白昼夢のように。
ほんの一瞬の出来事。
この場に悪女は二人いた。
その一花の一瞬の微笑みに、黒閻たちが困惑している。
あぁ、なるほど。
私は彼らのこの顔が見たかったのだわ。
入学式の日、一花を初めて目にした時から。
私はこの瞬間を待ち望んでいたのよ。
この時、図らずしも当初の私の計画が完遂した瞬間だった。
私は口角を引き上げて、扉を引いた。
そして、燦々とした陽光が降り注ぐ中、私は一歩を踏み出した。
昨夜の電話先の一花を思い浮かべながら。
「ねぇ一花。あなた、スパイをやってみない?」
「あら、何それ。とっても面白そうじゃない」
「黒閻の内部を探って欲しいの。少し危険が伴うのだけれど……」
「うふふ。私を誰だと思っているの? 危険なんて大歓迎よ」
はてさて、どっちが本当の女狐だったんだか。
私は最後にそう締め括り、後ろにある扉に向かって歩き始めた。
黒閻に背中を向けるようにして。
こうすることで、終わりだという印象を彼らに与えるの。
だから、まさか自分たちが疑われているなんて到底考えられないでしょう?
うふふ。
その手の最も内側に、私の駒がいることにも気付かずにね。
扉に手をかけたところで、私は黒閻の方に振り返った。
ふと思い立ったのだ。
一応の決着はつけておくべきなのかなって。
だから、私は黒閻唯一の女の子に向かって微笑みかけた。
私の親友。
私の味方。
……私の、仲間。
「ねぇ、一花。私たちはこれからも親友よね?」
優しく、美しく、嫋やかに。
儚く、麗しく、艶やかに。
私たちは笑い合った。
「えぇ、もちろんよ」
可憐な少女。
寵愛姫の彼女。
私の親友。
一花は、一瞬だけそのヴェールを取り払った。
まるで白昼夢のように。
ほんの一瞬の出来事。
この場に悪女は二人いた。
その一花の一瞬の微笑みに、黒閻たちが困惑している。
あぁ、なるほど。
私は彼らのこの顔が見たかったのだわ。
入学式の日、一花を初めて目にした時から。
私はこの瞬間を待ち望んでいたのよ。
この時、図らずしも当初の私の計画が完遂した瞬間だった。
私は口角を引き上げて、扉を引いた。
そして、燦々とした陽光が降り注ぐ中、私は一歩を踏み出した。
昨夜の電話先の一花を思い浮かべながら。
「ねぇ一花。あなた、スパイをやってみない?」
「あら、何それ。とっても面白そうじゃない」
「黒閻の内部を探って欲しいの。少し危険が伴うのだけれど……」
「うふふ。私を誰だと思っているの? 危険なんて大歓迎よ」
はてさて、どっちが本当の女狐だったんだか。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる