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11.平和的に解決しましょう
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私は何も言わない。
ケイの後ろにちょこんと控えている一花を見て、口角を上げるだけ。
一花も何も言わない。
悲しそうな表情もしていない。
だって、私のしたいことを理解してくれているから。
ある意味、この場で唯一の味方だから。
私は、一花に向けて一度軽く頷いた後、彼らに告げた。
これは、新しい始まりの為に必要な布石なのよ。
それがどれほど打算的なものだったとしても。
私は私の目的を果たしたいから。
だから許して、なんて浅はかなことは言わないわ。
だから嫌って、そう願うの。
嫌われた未来に悲しみは存在しないから。
あるのはただ明確な目的と安定した関係だけよ。
私はそれを望むのよ。
「それでね、ものは相談なのだけど……」
私は昨夜、市川と一緒に決めたことを黒閻に告げた。
「まず、私たち白豹はトップの座を黒閻から奪うつもりはないわ。だから、あなたたちもこれ以上私たちに干渉しないでいて欲しいの」
「……どうしてお前のことを信じなきゃならないんだ」
フウガは不機嫌そうにそう言う。
まぁ、言いたいことは分かるわ。
寵愛姫の座が欲しかっただけの女に何を言われようと、黒閻としてそれを鵜呑みにするわけにはいかないものね。
……でもね、フウガ。
あなたの瞳の奥は、揺らいでいる。
私には分かるわ。
私のことを信じたいと思っているんでしょう?
「お生憎様。信じなくても結構よ。……ただ、白豹は黒閻に何も思うところはないってわけ。後は私たちの出方を見て、考えてくれて構わないわ」
私のこの言葉に、フウガたちがほっと息を吐いたのを私は見逃さなかった。
貸し一、なんだからね。
ケイの後ろにちょこんと控えている一花を見て、口角を上げるだけ。
一花も何も言わない。
悲しそうな表情もしていない。
だって、私のしたいことを理解してくれているから。
ある意味、この場で唯一の味方だから。
私は、一花に向けて一度軽く頷いた後、彼らに告げた。
これは、新しい始まりの為に必要な布石なのよ。
それがどれほど打算的なものだったとしても。
私は私の目的を果たしたいから。
だから許して、なんて浅はかなことは言わないわ。
だから嫌って、そう願うの。
嫌われた未来に悲しみは存在しないから。
あるのはただ明確な目的と安定した関係だけよ。
私はそれを望むのよ。
「それでね、ものは相談なのだけど……」
私は昨夜、市川と一緒に決めたことを黒閻に告げた。
「まず、私たち白豹はトップの座を黒閻から奪うつもりはないわ。だから、あなたたちもこれ以上私たちに干渉しないでいて欲しいの」
「……どうしてお前のことを信じなきゃならないんだ」
フウガは不機嫌そうにそう言う。
まぁ、言いたいことは分かるわ。
寵愛姫の座が欲しかっただけの女に何を言われようと、黒閻としてそれを鵜呑みにするわけにはいかないものね。
……でもね、フウガ。
あなたの瞳の奥は、揺らいでいる。
私には分かるわ。
私のことを信じたいと思っているんでしょう?
「お生憎様。信じなくても結構よ。……ただ、白豹は黒閻に何も思うところはないってわけ。後は私たちの出方を見て、考えてくれて構わないわ」
私のこの言葉に、フウガたちがほっと息を吐いたのを私は見逃さなかった。
貸し一、なんだからね。
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