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9.同盟の結び方
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「つまり、夢乃のことを好きになった市川の前の白豹のリーダーが、夢乃に振られその腹いせに、加賀美満吉を刺した。そういう噂があった。だから、あなたは白豹に入った。加賀美満吉の死の真相を突き止めるために。一年前に何があったのかを知るために」
「そう。そんな折、君が同じ高校に入学してきた。そして君は黒閻の寵愛姫の親友になって、彼らと関係を築いていた」
「……黒閻に復讐する為に。夢乃のせいでいじめられていても、それに気付いてくれなかった黒閻に」
……だけど……。
「そう、君も分かっているんだろうけれど。まさしく、その部分がおかしいんだ」
「えぇ、そうね。違和感しかないわ。だって、あなたの言う通り、私と加賀美満吉が仲の良い幼馴染だったのなら、黒閻が私のいじめに気付かないはずがない」
「何より、その夢乃という女の子の話を僕は一度も満吉から聞いたことがないんだ」
「そうね、それは確かにおかしいわ。……まぁ何にせよ、私の復讐には何の意味も無くなったってわけね」
私は何だか拍子抜けして、肩を竦めた。
そんな私の様子に市川は笑った。
とても無邪気な笑顔だった。
その笑顔に少しだけときめいたことは秘密よ。
でも、そうね。
そうなると、私は全てをリセットしなくちゃいけないわ。
計画はおじゃん。
今更、一花から寵愛姫の居場所を奪ったところで、何の復讐にも、ましてや解決になんて到底ならないのだから。
私はすっとパジャマのポケットから携帯を取り出して、二人の女の子たちに連絡を取った。
新しい計画を立てるためには、きちんと後始末をしなくちゃいけないものね。
それが終わると、私は顔を上げて市川と目を合わせた。
「……私、真実を知りたいわ。記憶を取り戻したいの」
なんということもないかのように、平然と言ってのけた。
たぶん、その方が私の覚悟が伝わるような気がしたから。
「そう。そんな折、君が同じ高校に入学してきた。そして君は黒閻の寵愛姫の親友になって、彼らと関係を築いていた」
「……黒閻に復讐する為に。夢乃のせいでいじめられていても、それに気付いてくれなかった黒閻に」
……だけど……。
「そう、君も分かっているんだろうけれど。まさしく、その部分がおかしいんだ」
「えぇ、そうね。違和感しかないわ。だって、あなたの言う通り、私と加賀美満吉が仲の良い幼馴染だったのなら、黒閻が私のいじめに気付かないはずがない」
「何より、その夢乃という女の子の話を僕は一度も満吉から聞いたことがないんだ」
「そうね、それは確かにおかしいわ。……まぁ何にせよ、私の復讐には何の意味も無くなったってわけね」
私は何だか拍子抜けして、肩を竦めた。
そんな私の様子に市川は笑った。
とても無邪気な笑顔だった。
その笑顔に少しだけときめいたことは秘密よ。
でも、そうね。
そうなると、私は全てをリセットしなくちゃいけないわ。
計画はおじゃん。
今更、一花から寵愛姫の居場所を奪ったところで、何の復讐にも、ましてや解決になんて到底ならないのだから。
私はすっとパジャマのポケットから携帯を取り出して、二人の女の子たちに連絡を取った。
新しい計画を立てるためには、きちんと後始末をしなくちゃいけないものね。
それが終わると、私は顔を上げて市川と目を合わせた。
「……私、真実を知りたいわ。記憶を取り戻したいの」
なんということもないかのように、平然と言ってのけた。
たぶん、その方が私の覚悟が伝わるような気がしたから。
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