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10.愛ってなんだ
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ダイニングテーブルに向かい合うようにして座った私に、市川は始めにこう言った。
「これからする話は、全部僕が見てきた物語だ。だから、真実かどうかは分からないし、君の知りたいことなのかも正直自信がない。でも、それでも、君は知りたいんだね?」
私はその言葉を、ゆっくりと咀嚼して、それから、頷いた。
力強く、誠実に。
こればっかりは嘘を吐いてはいけないような気がしたから。
私の覚悟を読み取ったのか、市川もまた同じように頷き返した。
それから、彼の口が開かれた。
「もう知っているかもしれないけれど、彼の名前は加賀美満吉。君の二つ上で、僕の同級生だ……」
市川の話を要約すると、どうやらこういうことらしい。
私と加賀美満吉は、幼馴染だった。
市川と山田先輩は、加賀美満吉と高校に入って仲良くなった。
加賀美満吉の話には、いつも私の話が出てくる。
だから、二人は仲の良い幼馴染だったんだろう。
そう、当時の市川は思っていたそうだ。
そして、加賀美満吉には、私の幼馴染であるという他にもう一つの顔があった。
それは黒閻の次期リーダー候補だったということ。
どうやら前の黒閻のリーダー、つまりセイさんからの物覚えも良く、次期リーダーは加賀美満吉なんじゃないか、と噂になっていた。
そんなある日、加賀美満吉は死んだ。
通り魔によって腹部をナイフで切り裂かれたのだ。
警察が事件を捜査するも、結局未解決のまま、うやむやになった。
だけど、市川には何か腑に落ちなかった。
「だから、白豹に入って革命を起こしたんだよ」
寂しそうな表情で、市川は最後にそう締めくくった。
「これからする話は、全部僕が見てきた物語だ。だから、真実かどうかは分からないし、君の知りたいことなのかも正直自信がない。でも、それでも、君は知りたいんだね?」
私はその言葉を、ゆっくりと咀嚼して、それから、頷いた。
力強く、誠実に。
こればっかりは嘘を吐いてはいけないような気がしたから。
私の覚悟を読み取ったのか、市川もまた同じように頷き返した。
それから、彼の口が開かれた。
「もう知っているかもしれないけれど、彼の名前は加賀美満吉。君の二つ上で、僕の同級生だ……」
市川の話を要約すると、どうやらこういうことらしい。
私と加賀美満吉は、幼馴染だった。
市川と山田先輩は、加賀美満吉と高校に入って仲良くなった。
加賀美満吉の話には、いつも私の話が出てくる。
だから、二人は仲の良い幼馴染だったんだろう。
そう、当時の市川は思っていたそうだ。
そして、加賀美満吉には、私の幼馴染であるという他にもう一つの顔があった。
それは黒閻の次期リーダー候補だったということ。
どうやら前の黒閻のリーダー、つまりセイさんからの物覚えも良く、次期リーダーは加賀美満吉なんじゃないか、と噂になっていた。
そんなある日、加賀美満吉は死んだ。
通り魔によって腹部をナイフで切り裂かれたのだ。
警察が事件を捜査するも、結局未解決のまま、うやむやになった。
だけど、市川には何か腑に落ちなかった。
「だから、白豹に入って革命を起こしたんだよ」
寂しそうな表情で、市川は最後にそう締めくくった。
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