その女、女狐につき。

高殿アカリ

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10.愛ってなんだ

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 二学期が始まってからも、私は市川と一緒にいた。

 もう少し具体的に話すなら、私は市川のマンションに市川と同居していた。



 どうやら市川は一人暮らしをしていたみたいで、その市川の住む高級マンションの一室で、私はバイトを続けている。



 掃除とか、料理とか、洗濯とか。



 住み込みの家政婦みたいなもので、別に私たち二人の間に何かがあったわけでもない。



 もちろん、親には伝えてある。

 私と市川が一緒に住むって。



 まぁ、理由は住み込みバイトの継続じゃなくて、私と市川が恋人同士だからって話したんだけど。



 だって、この街じゃわざわざ住み込みのバイトを探さなくても、他にも仕事はいっぱいあるし。

 だったら、何でその人と一緒に住むんだってなるし。



 かと言って、黒閻のことを話すわけにもいかない。

 でも、表向きは誘拐されているわけだから、のうのうと家に帰るわけにもいかないでしょう?



 だから、私たちが付き合っているってことにしたのよ。

 そしたら、案外簡単にオーケーを貰っちゃってね。



 その時に、新しい携帯電話も買ってもらった。



 だから、里奈とは連絡を取ることが出来た。

 そして全てを報告済み。



 市川が白豹のリーダーだったっていうことも含めてね。

 ちゃんと許可は得ているわ。



 今まで私が黒閻にやってきたことの詳細と、それの里奈の貢献さを話したのよ。

 そしたら、彼、こう言ったの。



「君が良いと思う子なら構わないし、何よりこれからの計画にも必要になりそうな子だね」



 なんて、きらきらスマイルを向けられた。



 久しぶりに見た、そのスマイル。

 でもやっぱり気持ち悪い。



 だって、全然似合ってないんだもの。
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