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9.同盟の結び方
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というわけで、取り敢えず、市川からの信頼を得るために自らの計画の理由を打ち明けることにした。
既に計画はばれていたのだし、今更その理由を隠す意味もない。
むしろ、意味深に打ち明けることで、彼にも同等の対価を求めることが出来るというものだ。
そうね、しおらしく、改まって敬語なんかも使っちゃいましょうか。
「市川先輩、どうして私が黒閻の寵愛姫の座を奪いたいのか。気になりませんか?」
私は意味ありげにそう言って、彼の顔を覗き込んだ。
しかし、市川は私に見向きもしない。
先ほどまでの優しく甘い空気はどこへやら。
何かを考え込むように、虚空を見つめていた。
私は心の中だけで溜息を吐き、話を先に進めることにした。
「私、中学生のときに親友がいたんです。その子、夢乃って名前なんですけど、実はハーフだったんです。金色の髪に青い瞳は、とても綺麗で可憐で。……彼女は誰もが憧れるような、そんな女の子だったんです」
ちょっと儚げに笑ってみせる。
もう、市川の方は見ない。
だって、彼の視線がこちらに向いているから。
何かを問いたげな視線を感じるから。
でも、そのことには触れず、私は続けた。
「だから、そんな夢乃が、当時の黒閻に見初められたのも、納得出来ました。ただ、そんな夢乃を良く思わない子たちもいたようです。……私は、夢乃の代わりにいじめられました。夢乃は可愛くて、優しくて、優秀で。だから、夢乃には誰も手を出しませんでした。いいえ、出せなかったんだと思います。その腹いせのように、私は毎日いじめられました。地獄のような半年間でした」
既に計画はばれていたのだし、今更その理由を隠す意味もない。
むしろ、意味深に打ち明けることで、彼にも同等の対価を求めることが出来るというものだ。
そうね、しおらしく、改まって敬語なんかも使っちゃいましょうか。
「市川先輩、どうして私が黒閻の寵愛姫の座を奪いたいのか。気になりませんか?」
私は意味ありげにそう言って、彼の顔を覗き込んだ。
しかし、市川は私に見向きもしない。
先ほどまでの優しく甘い空気はどこへやら。
何かを考え込むように、虚空を見つめていた。
私は心の中だけで溜息を吐き、話を先に進めることにした。
「私、中学生のときに親友がいたんです。その子、夢乃って名前なんですけど、実はハーフだったんです。金色の髪に青い瞳は、とても綺麗で可憐で。……彼女は誰もが憧れるような、そんな女の子だったんです」
ちょっと儚げに笑ってみせる。
もう、市川の方は見ない。
だって、彼の視線がこちらに向いているから。
何かを問いたげな視線を感じるから。
でも、そのことには触れず、私は続けた。
「だから、そんな夢乃が、当時の黒閻に見初められたのも、納得出来ました。ただ、そんな夢乃を良く思わない子たちもいたようです。……私は、夢乃の代わりにいじめられました。夢乃は可愛くて、優しくて、優秀で。だから、夢乃には誰も手を出しませんでした。いいえ、出せなかったんだと思います。その腹いせのように、私は毎日いじめられました。地獄のような半年間でした」
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