104 / 163
8.嵐の中の夏休み
1
しおりを挟む
夏休み前半はあっという間に過ぎていき、気が付けば私は黒閻の人たちと一緒に大型バスに揺られていた。
どうやら旅行中に何か緊急事態が起きた時の為に、二年生は倉庫に置いてきているらしい。
大型バス二台と運転手を雇い、二年生以外の黒閻メンバーに加え、今回はセイさんとユマさん、そして私たち二人が参加している。
こんな強面のお兄さんたちを沢山乗せて、バスは軽井沢へと向かっていく。
心なしか、バスの運転手さんの顔色が悪いような。
うん、ごめんなさいね。
強面だけど悪い人たちではないのよ。
むやみやたらと暴力を振ったりはしないから安心して。
にしても、
「あの、タイシさん……」
「おう、楽しんでるか? 愛美ちゃん」
「あ、はい。すごく楽しませてもらっています。何ですけど、どうして手持ちの車やバイクで旅行に行かなかったんですか? その方がお金もかからないと思うんですけど」
そう、少なくとも高級車一台と一人一台ずつバイクを所有しているにも関わらず、大型バスの貸し切り(しかも運転手付き)で旅行に行く意味が分からない。
普段乗っているから、別に遠距離が苦手ってわけでもないでしょうに。
私のその素朴な疑問に、タイシは楽しそうな顔をして笑った。
「だって、みんなバラバラで行っても面白ないやろ? お菓子交換とか、カラオケ大会とかでけへんし。俺そんなんつまらんわぁ」
ふぅん、なるほどねぇって感じ。
さすがは仲間思いの黒閻ってこと?
ばっからしい。
もう少し高尚な答えが返ってくるかと思ったんだけどなぁ。
バイクがないと困ることがあるとかさ。
バスで行く効率的な理由とかさ。
ま、そういうのを黒閻に求める方が間違っているのは分かるけど。
どうやら旅行中に何か緊急事態が起きた時の為に、二年生は倉庫に置いてきているらしい。
大型バス二台と運転手を雇い、二年生以外の黒閻メンバーに加え、今回はセイさんとユマさん、そして私たち二人が参加している。
こんな強面のお兄さんたちを沢山乗せて、バスは軽井沢へと向かっていく。
心なしか、バスの運転手さんの顔色が悪いような。
うん、ごめんなさいね。
強面だけど悪い人たちではないのよ。
むやみやたらと暴力を振ったりはしないから安心して。
にしても、
「あの、タイシさん……」
「おう、楽しんでるか? 愛美ちゃん」
「あ、はい。すごく楽しませてもらっています。何ですけど、どうして手持ちの車やバイクで旅行に行かなかったんですか? その方がお金もかからないと思うんですけど」
そう、少なくとも高級車一台と一人一台ずつバイクを所有しているにも関わらず、大型バスの貸し切り(しかも運転手付き)で旅行に行く意味が分からない。
普段乗っているから、別に遠距離が苦手ってわけでもないでしょうに。
私のその素朴な疑問に、タイシは楽しそうな顔をして笑った。
「だって、みんなバラバラで行っても面白ないやろ? お菓子交換とか、カラオケ大会とかでけへんし。俺そんなんつまらんわぁ」
ふぅん、なるほどねぇって感じ。
さすがは仲間思いの黒閻ってこと?
ばっからしい。
もう少し高尚な答えが返ってくるかと思ったんだけどなぁ。
バイクがないと困ることがあるとかさ。
バスで行く効率的な理由とかさ。
ま、そういうのを黒閻に求める方が間違っているのは分かるけど。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
なぜか水に好かれてしまいました
にいるず
恋愛
滝村敦子28歳。OLしてます。
今空を飛んでいたところをお隣さんに見られてしまいました。
お隣さんはうちの会社が入っているビルでも有名なイケメンさんです。
でもかなりやばいです。今インターホンが鳴っています。
きっと彼に違いありません。どうしましょう。
会社の帰りに気まぐれに買ったネイルをつけたら、空を飛べるようになって平凡じゃなくなったOLさんのお話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる