その女、女狐につき。

高殿アカリ

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8.嵐の中の夏休み

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 夏休み前半はあっという間に過ぎていき、気が付けば私は黒閻の人たちと一緒に大型バスに揺られていた。



 どうやら旅行中に何か緊急事態が起きた時の為に、二年生は倉庫に置いてきているらしい。



 大型バス二台と運転手を雇い、二年生以外の黒閻メンバーに加え、今回はセイさんとユマさん、そして私たち二人が参加している。



 こんな強面のお兄さんたちを沢山乗せて、バスは軽井沢へと向かっていく。



 心なしか、バスの運転手さんの顔色が悪いような。



 うん、ごめんなさいね。

 強面だけど悪い人たちではないのよ。



 むやみやたらと暴力を振ったりはしないから安心して。



 にしても、



「あの、タイシさん……」



「おう、楽しんでるか? 愛美ちゃん」



「あ、はい。すごく楽しませてもらっています。何ですけど、どうして手持ちの車やバイクで旅行に行かなかったんですか? その方がお金もかからないと思うんですけど」



 そう、少なくとも高級車一台と一人一台ずつバイクを所有しているにも関わらず、大型バスの貸し切り(しかも運転手付き)で旅行に行く意味が分からない。



 普段乗っているから、別に遠距離が苦手ってわけでもないでしょうに。



 私のその素朴な疑問に、タイシは楽しそうな顔をして笑った。



「だって、みんなバラバラで行っても面白ないやろ? お菓子交換とか、カラオケ大会とかでけへんし。俺そんなんつまらんわぁ」



 ふぅん、なるほどねぇって感じ。

 さすがは仲間思いの黒閻ってこと?



 ばっからしい。



 もう少し高尚な答えが返ってくるかと思ったんだけどなぁ。



 バイクがないと困ることがあるとかさ。

 バスで行く効率的な理由とかさ。



 ま、そういうのを黒閻に求める方が間違っているのは分かるけど。
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