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7.嵐の前の何とやら
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彼らの様子に、ユマさんが口を開いて何かを言いかけたところで、
「……許せない」
私は低い声で呟いた。
ユマさんは驚いたように私の方を振り返る。
それでいいわ、ユマさん。
あなたが言いたかった言葉が私の口から出てきてさぞかしびっくりしているのでしょう?
私のことを、浮気を許せる人間だと思っていたのならなおさら。
その衝撃は、ユマさんが私を見直すことに繋がっていくから。
私の顔を見ているユマさんに視線を合わせて、私は言った。
「すみません。女の子の方、私の友人なんです。助けてきて良いですか?」
力強い瞳を向けた。
助けたいって思いが伝わるように。
必死な感じが滲み出てくるように。
その私の本気さ(もちろん、超本気だったわ。だってユマさんを騙そうとしているんですもの。適当なはずないでしょう?)が伝わったのか、ユマさんもまた力強く光る瞳で頷き、こう言った。
「丁度良い。あたしも行こうと思ってたんだ。浮気なんかする人は許せないからね。例え男だろうが女だろうが」
想像通りだ。
やっぱりユマさんは浮気を許せるような人間じゃなかった。
格好良く、あたしの後に付いて来いとばかりに先陣を切って、浮気発覚現場に乗り込むユマさん。
彼女のその勇ましいまでの背中を見ながら、私は上がる口角を抑えることが出来なかった。
だから泣き崩れる女の方に視線を向け、私は心の中で彼女に告げた。
獲物はかかったわ。
そのまま素敵な演技を続けて頂戴、里奈。
そして不自然な距離が出来ないよう、私は少しばかり大股でユマさんの背中を追いかけた。
さぁ、第二幕を始めましょうか。
「……許せない」
私は低い声で呟いた。
ユマさんは驚いたように私の方を振り返る。
それでいいわ、ユマさん。
あなたが言いたかった言葉が私の口から出てきてさぞかしびっくりしているのでしょう?
私のことを、浮気を許せる人間だと思っていたのならなおさら。
その衝撃は、ユマさんが私を見直すことに繋がっていくから。
私の顔を見ているユマさんに視線を合わせて、私は言った。
「すみません。女の子の方、私の友人なんです。助けてきて良いですか?」
力強い瞳を向けた。
助けたいって思いが伝わるように。
必死な感じが滲み出てくるように。
その私の本気さ(もちろん、超本気だったわ。だってユマさんを騙そうとしているんですもの。適当なはずないでしょう?)が伝わったのか、ユマさんもまた力強く光る瞳で頷き、こう言った。
「丁度良い。あたしも行こうと思ってたんだ。浮気なんかする人は許せないからね。例え男だろうが女だろうが」
想像通りだ。
やっぱりユマさんは浮気を許せるような人間じゃなかった。
格好良く、あたしの後に付いて来いとばかりに先陣を切って、浮気発覚現場に乗り込むユマさん。
彼女のその勇ましいまでの背中を見ながら、私は上がる口角を抑えることが出来なかった。
だから泣き崩れる女の方に視線を向け、私は心の中で彼女に告げた。
獲物はかかったわ。
そのまま素敵な演技を続けて頂戴、里奈。
そして不自然な距離が出来ないよう、私は少しばかり大股でユマさんの背中を追いかけた。
さぁ、第二幕を始めましょうか。
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