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7.嵐の前の何とやら
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けれども一向に私の計画は頓挫しなかった。
つまり、市川は私が噂を勝手に流していることを恐らく知っているにも関わらず、それを訂正するような動きをしていないということ。
だから、完全に私を放し飼いにしてくれているのだと思いきや、何の拍子か事ある毎に、一花や私に黒閻について聞いてくるのだ。
「黒閻って基本的にどんなことをしている人たちなの?」
「今の幹部は三人いるって聞いたけど、それって本当?」
「この前言っていた、ケイって人は黒閻の人? その人もコーヒーが好きなの?」
確信に迫るようなことから、他愛もない会話まで。
彼は一体何がしたいのだろう。
黒閻と私たちについて何にも気にしていないような気もするし、けれどそれにしてはやたらと黒閻のことについて聞きたがるのだ。
それも、ほんの好奇心が疼いただけ、みたいな感じを装って。
それが本当なのか、演技なのかさえも分からない。
だから、私は言葉を濁す。
のだけれど……。
一花はそれに答えちゃうんだよね。
情報漏洩って言葉を知らないのかしら?
それとも、みんなが知っているようなことだから良いの?
良く分からないけど、私の責任ではないから放置することにした。
まぁ、そんな感じだから、結局市川の動向に一々気を遣わなくちゃならなくて。
本当に、面倒くさい男ね。
だから、物的証拠になるような一花と山田先輩の写真も撮れない。
この白髪似非王子様が君臨する生徒会室では。
まぁ、ここで撮られた写真だってばれたらその時点で私の計画はおじゃんになるから、写真を撮ったとしても使うかどうかは微妙なところではあったんだけど。
無理は禁物という教えだってことにしておくわ、市川。
つまり、市川は私が噂を勝手に流していることを恐らく知っているにも関わらず、それを訂正するような動きをしていないということ。
だから、完全に私を放し飼いにしてくれているのだと思いきや、何の拍子か事ある毎に、一花や私に黒閻について聞いてくるのだ。
「黒閻って基本的にどんなことをしている人たちなの?」
「今の幹部は三人いるって聞いたけど、それって本当?」
「この前言っていた、ケイって人は黒閻の人? その人もコーヒーが好きなの?」
確信に迫るようなことから、他愛もない会話まで。
彼は一体何がしたいのだろう。
黒閻と私たちについて何にも気にしていないような気もするし、けれどそれにしてはやたらと黒閻のことについて聞きたがるのだ。
それも、ほんの好奇心が疼いただけ、みたいな感じを装って。
それが本当なのか、演技なのかさえも分からない。
だから、私は言葉を濁す。
のだけれど……。
一花はそれに答えちゃうんだよね。
情報漏洩って言葉を知らないのかしら?
それとも、みんなが知っているようなことだから良いの?
良く分からないけど、私の責任ではないから放置することにした。
まぁ、そんな感じだから、結局市川の動向に一々気を遣わなくちゃならなくて。
本当に、面倒くさい男ね。
だから、物的証拠になるような一花と山田先輩の写真も撮れない。
この白髪似非王子様が君臨する生徒会室では。
まぁ、ここで撮られた写真だってばれたらその時点で私の計画はおじゃんになるから、写真を撮ったとしても使うかどうかは微妙なところではあったんだけど。
無理は禁物という教えだってことにしておくわ、市川。
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