その女、女狐につき。

高殿アカリ

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7.嵐の前の何とやら

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「う、うん。私も素敵な人だなぁって思うよ。優しいし、カッコいいし、でもそれを鼻にかけていなくて。たまに可愛い感じになっちゃうのも、また魅力的というか……」



 オッケー、一花。



 あなたがそう言うのなら私は何にも気兼ねせずに動くことにするわ。



 私が山田先輩の話を一花に持ち掛けたこの日から、不思議なことにある二つの噂が学校内を駆け巡り始めた。



 とある女子トイレにて。



 きゃぴきゃぴとした女子高校生たちがグロス片手に会話をしている。



「ねぇ、ねぇ、知ってる? 天野さんの話」



「もちろん、知っているわよ~」



「あ、あの寵愛姫をやめたってやつでしょ? 最近前ほど送り迎え激しくないもんねぇ。なんか、一応元姫で危ないから送り迎えしているって感じなんでしょ?」



「ふふふ、実はね。それだけじゃないのよ。彼女に纏わる話」



「え、寵愛姫をやめた以外にもあるの?」



「うーん、というか、やめた理由に関係してる、かな?」



「ちょっと、もったいぶらずに話してよ」



「うふふ、あのね。山田先輩っているでしょ?」



「剣道部部長で、副会長の?」



「クールで、硬派で、紳士な彼?」



「そうそう、その彼がね、なんと天野さんに惚れちゃったんだって‼ しかも天野さんも満更でもないとか」



「嘘! ショック‼ 山田先輩、陰ながら狙ってたのにぃ」



「あら、あんたじゃ無理でしょうに」



「ひどぉい。……って、あ、そうか。だから寵愛姫やめたんだ」



「うん、そうみたいよ。寵愛姫って黒閻の幹部以外の好きな人作っちゃ駄目らしいし」



「えー、そう聞くと、フウガさんたちが可哀想」
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