その女、女狐につき。

高殿アカリ

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7.嵐の前の何とやら

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 にしても、山田先輩の趣味がケイと一緒のコーヒーだったとは。



 たまたまとは言え、いやたまたまだからこそ、どこか空恐ろしい。



 メガネ。

 敬語。

 コーヒーへの拘り。



 似ているところが多すぎでしょう。



 あの二人なんなの。

 従兄弟とか?



 いやいやいや。

 反対に違うところをあげてみようか。



 ケイの髪色が青、山田先輩が黒。

 一人称が僕と俺。



 あーそうそう。



 それと、山田先輩にはちっとも嫌悪を感じないってところも大きく違っているわね。



 二人とも同じ最高学年なのに。



 どうしてか山田先輩はお兄ちゃんみたいで安心するのよね。



 さすが剣道部部長ってことなのかしら。



 山田先輩の身体から滲み出てくる武士道精神。



 硬派な感じとか、でもでも可愛い感じとか。



 彼は人類最後の砦なのかもしれない。



 うん、割りと本気でそう思う。



 だから私は一花と二人のときにその話を投げてみることにした。



 だって考えてみたの。



 一花が黒閻に捨てられた未来を。



 私が寵愛姫になったときの未来を。



 さすがにさ、ここまで頑張ってくれているのだし、フウガに捨てられたあの子を「はい、さようなら」って放り出すわけにもいかないでしょう?



 それなりの報酬を与えてあげなくちゃ。



 偉そう?

 上から?



 あはは、今に始まったことでもないでしょうに。



 だからね、これは私からの報酬という名の罪滅ぼし。



 本気で山田先輩とうまくいって欲しいって思っているのよ、私。



「ねぇ、一花」

「なぁに?」



「山田先輩のこと、どう思う?」

「なっど、どうって」



 顔を赤らめる一花に私はさらに追い打ちをかける。



「私ね、彼はとても素敵な人だと思うの。一花は?」
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