76 / 163
6.不穏
12
しおりを挟む
入ってきた二人にフウガたちは素早く立ち上がって、頭を下げる。
……そんなに畏まるのなら出迎えた方が良かったんじゃないかしら。
「お久しぶりです、先代」
フウガの言葉に赤髪の男は、より一層眉間に皺を寄せてソファに座った。
ふんぞり返る男の横に、これまた当たり前の顔をして女も座った。
この場で話についていけていないのは、私と一花だけだ。
立つべきなのか、座ったままでいるべきなのか。
どうするべきなのか分からず、私と一花はただ成り行きを見守ることにした。
先代の男はそんな私たちを一瞥すると、何も言わずにフウガたちに顎をしゃくる。
フウガたちはその意味を正確に読み取り、私たちの横に腰を落ち着けた。
その様子を見る限り、私たちがここにいることに何の問題もないようであった。
もしくは、私たちにも何か関係のある話なのかもしれないわ。
先代とその彼女(だろうと思われる)は、自己紹介をするでもなく、いきなり本題に入った。
「最近の愚行はなんだ」
先代の低い声に、思い当たる節でもあるのか、フウガたちは気まずそうに視線を泳がせていた。
そんな様子に先代はさらに機嫌を悪くし、舌打ちを一つすると、
「革命が起きてからの白豹は、あの荒んだ地域を良くまとめていると聞く。それに比べてこの体たらくはなんだ。黒閻もよくここまで落ちたもんだ」
「……なっ。何も知らんのに……」
先代の挑発的な言葉に反抗して立ち上がろうとしたタイシをフウガが押し留める。
その様子に先代の彼女は鼻で笑った。
これだからクソガキは。
彼女の声が聞こえてくるかのようだった。
……そんなに畏まるのなら出迎えた方が良かったんじゃないかしら。
「お久しぶりです、先代」
フウガの言葉に赤髪の男は、より一層眉間に皺を寄せてソファに座った。
ふんぞり返る男の横に、これまた当たり前の顔をして女も座った。
この場で話についていけていないのは、私と一花だけだ。
立つべきなのか、座ったままでいるべきなのか。
どうするべきなのか分からず、私と一花はただ成り行きを見守ることにした。
先代の男はそんな私たちを一瞥すると、何も言わずにフウガたちに顎をしゃくる。
フウガたちはその意味を正確に読み取り、私たちの横に腰を落ち着けた。
その様子を見る限り、私たちがここにいることに何の問題もないようであった。
もしくは、私たちにも何か関係のある話なのかもしれないわ。
先代とその彼女(だろうと思われる)は、自己紹介をするでもなく、いきなり本題に入った。
「最近の愚行はなんだ」
先代の低い声に、思い当たる節でもあるのか、フウガたちは気まずそうに視線を泳がせていた。
そんな様子に先代はさらに機嫌を悪くし、舌打ちを一つすると、
「革命が起きてからの白豹は、あの荒んだ地域を良くまとめていると聞く。それに比べてこの体たらくはなんだ。黒閻もよくここまで落ちたもんだ」
「……なっ。何も知らんのに……」
先代の挑発的な言葉に反抗して立ち上がろうとしたタイシをフウガが押し留める。
その様子に先代の彼女は鼻で笑った。
これだからクソガキは。
彼女の声が聞こえてくるかのようだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる