その女、女狐につき。

高殿アカリ

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6.不穏

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 私は里奈の後ろに乗り、少し遠くの繁華街へと向かった。



 到着した繁華街は、白豹のシマ。



 もちろん、黒閻のシマで遊ぶことは出来ない。

 だって万が一ばれた時が大変だもの。



 けれど、今まではもう少し大人しい繁華街で遊んでいた。



 少なくとも、女の子二人だけで歩いていたとしても、身の危険を感じないほどには大人しい繁華街で。



 白豹自体が最低最悪のグループであることも関係しているのだろう。



 白豹のシマは、到底女の子だけでは歩けないような、危険な街だ。



 だから里奈にも男装してもらっているわけだし。



 ある程度派手で、けれども調子に乗っていると思われないくらいの格好をしているわけだし。



 この街に馴染むこと。

 それが絡まれない為の一番の秘訣だ。



 夕暮れ時の優しい橙色が街を染め抜く。



 ネオンライトがぽつぽつと光り始めて、少しだけ夜の気配を感じる。



 例えば、白豹のリーダーを知りたい、とか。



 そうでなくとも、白豹に何かしら関わりたい、などと思っているわけではない。



 そんな愚かで無謀なことはしない。

 その為にこの街に来たわけではない。



 そう、私たちはただ買い物をしにきたのだ。

 普段のストレスを発散するために。



 だから、危険を感じたらすぐに撤退するし、そんなに遅くまでここに留まるつもりもない。



 せいぜい一時間から二時間程度。

 完全に日が暮れる前には帰るつもりだ。
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