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5.腹黒愛美、本領発揮。
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「だから、ケイさんを見ていると辛くって。……私と同じ片想いをしているのかもしれないって。……ううん、私なんかよりもっと辛いですよね。だって、相手はフウガさん、黒閻のトップなんですから」
「……愛美さんは、どうしてそんな話を僕に?」
困惑気味の彼に、私はか弱い儚い笑みを零す。
「ただ、何か力になりたいなって思って。……なんて、烏滸がましいですよね」
「あ、いえ。気持ちは凄く嬉しいです。……でも、僕たちはあなたに酷いことをしました。なのに、あなたの優しさに付け入るようなことをしても良いのでしょうか」
落ち込むケイに私はきょとん顔を向ける。
そして、楽しそうに笑って見せる。
「酷いことって、せいぜい無視くらいですよね? そんなの酷い内には入りませんよ! それに、黒閻の幹部として部外者を警戒するのは当然のことだと思います」
それから、コップをテーブルの上に置いて、私は両手を差し出した。
「だから、ケイさんの力になりたいです。と言っても、相談相手くらいにしかなれないかもしれないですけれど」
頼りなさげな笑みを一つ。
彼もまた、嬉しそうな笑顔を返すと、私の手に手を重ねる。
「はい、よろしくお願いします」
なんて円満な二人なの。
ふふふ、そうやって私に絆されると良いのよ。
まるで警戒心の無い、安心しきった笑顔なんか向けちゃって。
……後で後悔しても知らないわよ。
「……愛美さんは、どうしてそんな話を僕に?」
困惑気味の彼に、私はか弱い儚い笑みを零す。
「ただ、何か力になりたいなって思って。……なんて、烏滸がましいですよね」
「あ、いえ。気持ちは凄く嬉しいです。……でも、僕たちはあなたに酷いことをしました。なのに、あなたの優しさに付け入るようなことをしても良いのでしょうか」
落ち込むケイに私はきょとん顔を向ける。
そして、楽しそうに笑って見せる。
「酷いことって、せいぜい無視くらいですよね? そんなの酷い内には入りませんよ! それに、黒閻の幹部として部外者を警戒するのは当然のことだと思います」
それから、コップをテーブルの上に置いて、私は両手を差し出した。
「だから、ケイさんの力になりたいです。と言っても、相談相手くらいにしかなれないかもしれないですけれど」
頼りなさげな笑みを一つ。
彼もまた、嬉しそうな笑顔を返すと、私の手に手を重ねる。
「はい、よろしくお願いします」
なんて円満な二人なの。
ふふふ、そうやって私に絆されると良いのよ。
まるで警戒心の無い、安心しきった笑顔なんか向けちゃって。
……後で後悔しても知らないわよ。
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