その女、女狐につき。

高殿アカリ

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5.腹黒愛美、本領発揮。

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 シャーーーー。



 温かいお湯が頭上から降り注ぎ、冷え切った私の身体を温めてくれる。



 ここは黒閻の倉庫にあるバスルームだ。



 里奈に水をかけられた私たちは、フウガを呼び出した。



 いくら初夏とはいえ、全身びしょ濡れのまま帰るわけにはいかなかった。



黒 閻に保護された後、まず一花がバスルームに入っていった。



 私はケイにバスタオルを渡され、



「寒いですか? 申し訳ありません。こればっかりは、寵愛姫が優先なんです」



 と謝られた。それも眉毛を八の字にさせて。



 中々良いものを見た気もするので、仕方がないなと思うことにした。



 まぁ正直、シャワーの順番なんてどうでも良かったんだけどね。



 その後、フウガから何があったのかという尋問のような質問を受けた。



 いや、あれは質問のような尋問と言う方が正しいと思う。



 里奈のことは一切言わなかった。

 もちろん、里奈を心配したわけじゃない。



 私に刃向った罪は重いわ。

 心配なんか死んだってしてやるものですか。



 里奈のことを黒閻に伝えなかったのは、里奈のせいで私の立場まで危うくなるから。



 そんなの、冗談じゃないわ。



 もし、里奈がいじめの犯人だと分かれば、当然黒閻は里奈に制裁を下すでしょう。



 彼らは不良。



 いくらイケメンだろうが、優しかろうが、不良なのだ。



 落とし前をつけるべき時に、見逃してくれるほど甘ちゃんではない。



 そして、里奈と黒閻が接触するような事態にでもなってしまったら。



 里奈が私の友達であることも、私が寵愛姫の座を狙っていることも、さらにはリンチ事件の主犯だってこともばれちゃうのよ。



 私が里奈と友達だったせいで一花にも被害が及んだと捉えられるだけでも、制裁を加えられそうなものなのに、ましてや他二つなんて。



 とてもじゃないけど、生きていけなくなるでしょうね。

 少なくとも、この街では。



 それに何より、計画がハチャメチャになってしまう。

 それは私が絶対に許さないわ。
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