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5.腹黒愛美、本領発揮。
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悲しそうに私の机を見つめる彼女の手には、様々な色でどす黒く汚れてしまったハンカチがあった。
元は薄桃色であったのだろうが、今はその見る影もない。
そして、私の机が少しも濡れていないことを確認し、一花に尋ねた。
「……もしかして、一花の机も……?」
私の問いに、一花はこくんと頷いた。
その瞳は、少しだけ濡れているような気がした。
そんな私たちの様子を見ているクラスメイトたちの視線は冷ややかなものであった。
私は一花の手を取り、教室を飛び出した。
こんなところ、一秒だっていてやるもんですか。
あなたたちの思い通りにはならないわ。
こんなことをされる為に、私は黒閻に取り入ったんじゃないもの。
憤怒に駆られていた私は、一花の声なんて全く聞こえていなかった。
「待ってってば!」
珍しく声を張り上げた一花。
そこでようやく、私は我に返り、足を止めた。
辿り着いた先は、一階にある図書室の前だった。
私と一花は顔を見合わせ、図書室に潜り込む。
鍵を閉め忘れたのか、窓の一つが開いていたのだ。
逃げ出した後に始業のチャイムが鳴っていたらしく、今はホームルームの最中だ。
誰もいない図書室。
この部屋の埃臭さはあまり利用する人がいないからだろう。
普段、お昼休みになるまで、図書室は開かない。
だから、秘密の作戦会議をするのにはもってこいの場所なのだ。
図らずしも、私は一花とこれからのことについて話し合いたいと思っていたところであった。
元は薄桃色であったのだろうが、今はその見る影もない。
そして、私の机が少しも濡れていないことを確認し、一花に尋ねた。
「……もしかして、一花の机も……?」
私の問いに、一花はこくんと頷いた。
その瞳は、少しだけ濡れているような気がした。
そんな私たちの様子を見ているクラスメイトたちの視線は冷ややかなものであった。
私は一花の手を取り、教室を飛び出した。
こんなところ、一秒だっていてやるもんですか。
あなたたちの思い通りにはならないわ。
こんなことをされる為に、私は黒閻に取り入ったんじゃないもの。
憤怒に駆られていた私は、一花の声なんて全く聞こえていなかった。
「待ってってば!」
珍しく声を張り上げた一花。
そこでようやく、私は我に返り、足を止めた。
辿り着いた先は、一階にある図書室の前だった。
私と一花は顔を見合わせ、図書室に潜り込む。
鍵を閉め忘れたのか、窓の一つが開いていたのだ。
逃げ出した後に始業のチャイムが鳴っていたらしく、今はホームルームの最中だ。
誰もいない図書室。
この部屋の埃臭さはあまり利用する人がいないからだろう。
普段、お昼休みになるまで、図書室は開かない。
だから、秘密の作戦会議をするのにはもってこいの場所なのだ。
図らずしも、私は一花とこれからのことについて話し合いたいと思っていたところであった。
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