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5.腹黒愛美、本領発揮。
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そうして生徒会で業務をこなした後、黒閻の倉庫に通う日々が一カ月ほど続いた。
相変わらず市川のことは好きにはなれないけれど、山田先輩の優しさは心に染み入るし、相変わらずフウガはちっとも靡いてはくれないけれど、タイシとケイとは順調に関係を築けている。
そういった生活が、ようやく日常として私に馴染んできた頃。
世界はあっという間に崩れていくのです。
そして、その瞬間を私は首を長くして待っていたの。
ようこそ、非日常。
始まりは、些細なことだった。
ある朝、教室の扉を開けると、遠巻きに私の机を見てひそひそと内緒話をするクラスメイトたちがいた。
そのうちの一人であった里奈は、私が教室に入ってきたことに気付くも知らんふりを決め込んだ。
目が合ったにも関わらず、ふい、と視線を逸らす彼女の横顔に、私も悠長に構えてはいられなかった。
里奈が。
あの彼女が。
私を見限ろうとしている。
その事実は、私が足を速めて自分の席へと急がせるには十分すぎる理由だった。
駆け足で机に駆け寄る私に、里奈以外のクラスメイトも私に気付き、ひそひそと声にならない声たちを大きくさせた。
いざ、机を見てみると、そこにはびっしりと落書きがされていた。
まさしくそこは、罵詈雑言のオンパレードだった。
「ブス」
「消えろ」
「がっこーくんな」
「生徒会にも黒閻にも気に入られて満足ですか、この淫乱」
などなど、その悪意は留まるところを知らないようだ。
ただ茫然と、現実に直面している私の横に、いつの間にか一花が立っていた。
相変わらず市川のことは好きにはなれないけれど、山田先輩の優しさは心に染み入るし、相変わらずフウガはちっとも靡いてはくれないけれど、タイシとケイとは順調に関係を築けている。
そういった生活が、ようやく日常として私に馴染んできた頃。
世界はあっという間に崩れていくのです。
そして、その瞬間を私は首を長くして待っていたの。
ようこそ、非日常。
始まりは、些細なことだった。
ある朝、教室の扉を開けると、遠巻きに私の机を見てひそひそと内緒話をするクラスメイトたちがいた。
そのうちの一人であった里奈は、私が教室に入ってきたことに気付くも知らんふりを決め込んだ。
目が合ったにも関わらず、ふい、と視線を逸らす彼女の横顔に、私も悠長に構えてはいられなかった。
里奈が。
あの彼女が。
私を見限ろうとしている。
その事実は、私が足を速めて自分の席へと急がせるには十分すぎる理由だった。
駆け足で机に駆け寄る私に、里奈以外のクラスメイトも私に気付き、ひそひそと声にならない声たちを大きくさせた。
いざ、机を見てみると、そこにはびっしりと落書きがされていた。
まさしくそこは、罵詈雑言のオンパレードだった。
「ブス」
「消えろ」
「がっこーくんな」
「生徒会にも黒閻にも気に入られて満足ですか、この淫乱」
などなど、その悪意は留まるところを知らないようだ。
ただ茫然と、現実に直面している私の横に、いつの間にか一花が立っていた。
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