その女、女狐につき。

高殿アカリ

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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前

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「あの、それって、好きなバイクにカスタマイズして競争し合うゲームですよね? しかも、ロードレースだけじゃなくて、擬人化したバイク同士で家族になったり友達になったり、と普通の生活も楽しめたりする……」



「そうや! 知ってんのか?」



 私の説明を遮るようにタイシは興奮しながら口を開いた。



 そして、そんなマイナーなゲームを知っている私に驚いたようで、ケイとフウガが目を見開いてこっちを見てくる。



 あら、やだ。

 照れちゃう。



「あ、はい。従兄弟がそれを好きで。何度かやったこともあります」



 なんて嘘八百を並べる私。



 彼らも馬鹿ね。

 タイシ様がハマっているゲームよ。



 タイシ様ファンの女の子たちに聞いたら一発で出てくるわ。

 私の情報網をなめないで頂きたいものね。



 しかも、彼女たち、



「タイシ様はマイブームを人に知られると途端に興味を無くしちゃう人だから、ばれないようにしているの」



 って言ってたわよ。

 あんたも愛されているのね。



「おお、初めて会ったわ。こんなコアなゲームやったことある人。一緒にやろうや」



 キラキラと子どものような視線を投げかける彼には絶対に言えないわ。



 あなたのファンの子たち、みんながそのゲームをやっているわよ、なんて。



 私がやらせてもらったのも、自称タイシ様ファンクラブ会長の子のお家なの、なんて。



 純粋な彼の瞳ほど哀れなものってないわ。

 少なくとも、今現在のこの場においては。
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