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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前
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だから、下っ端くんたちもこんなことが言えるの。
「愛美さん、俺、信じてました」
「いつか愛美さんが認められる日が来るって」
「本当の意味で仲間になれる日が来るって」
「絶対、俺たちは愛美さんを裏切りませんから」
「どこまででも守ります」
「うぅ……本当にありがと。……でも、一花を優先していいんだからね」
ふむ。
自分の演技力にも相当肌寒いところがあることは認めよう。
でも、ここまでしなきゃ信じてくれなさそうだもんな。
大げさなくらいが丁度良いのよ。
信じる、とか、仲間、とか。
ちゃんちゃらおかしくて、そろそろ付いて行けないかもな。
もらい泣きをしている設定の私は、潤んだ瞳の奥を遠くに飛ばしながらそんなことを考えていた。
その私の視界には、遅れて倉庫に入ってきたフウガたち三人と一花の姿。
彼らは私たちの様子を呆れるように笑いながら見た後、二階に上がっていく。
しかし、その瞳には既に嫌悪の感情は映っていなかった。
一花だけが私と一緒に二階に上がろうと階段下で待っている。
それを見て、私はこれ幸いと下っ端くんたちに解放を働きかける。
「あ、一花が待ってるみたい」
ぽそりと呟かれた私の言葉に下っ端くんたちは面白いほど、反応を示す。
「そうですね」
「すんませんっした」
「楽しんできてください」
ばっと私から距離を取ったかと思うと、みんな一斉に頭を下げて私を見送る。
ちょっと戸惑うような仕草の後、
「うん、ありがとう。みんなも楽しんで」
ふんわりと笑顔を残して一花の元に駆け寄った。
さぁさ、奥さん、お姉さま方。
いざ出陣です。
「愛美さん、俺、信じてました」
「いつか愛美さんが認められる日が来るって」
「本当の意味で仲間になれる日が来るって」
「絶対、俺たちは愛美さんを裏切りませんから」
「どこまででも守ります」
「うぅ……本当にありがと。……でも、一花を優先していいんだからね」
ふむ。
自分の演技力にも相当肌寒いところがあることは認めよう。
でも、ここまでしなきゃ信じてくれなさそうだもんな。
大げさなくらいが丁度良いのよ。
信じる、とか、仲間、とか。
ちゃんちゃらおかしくて、そろそろ付いて行けないかもな。
もらい泣きをしている設定の私は、潤んだ瞳の奥を遠くに飛ばしながらそんなことを考えていた。
その私の視界には、遅れて倉庫に入ってきたフウガたち三人と一花の姿。
彼らは私たちの様子を呆れるように笑いながら見た後、二階に上がっていく。
しかし、その瞳には既に嫌悪の感情は映っていなかった。
一花だけが私と一緒に二階に上がろうと階段下で待っている。
それを見て、私はこれ幸いと下っ端くんたちに解放を働きかける。
「あ、一花が待ってるみたい」
ぽそりと呟かれた私の言葉に下っ端くんたちは面白いほど、反応を示す。
「そうですね」
「すんませんっした」
「楽しんできてください」
ばっと私から距離を取ったかと思うと、みんな一斉に頭を下げて私を見送る。
ちょっと戸惑うような仕草の後、
「うん、ありがとう。みんなも楽しんで」
ふんわりと笑顔を残して一花の元に駆け寄った。
さぁさ、奥さん、お姉さま方。
いざ出陣です。
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