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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前
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生徒会の仕事を終えた後、一花と共に黒閻の車に乗り込み、倉庫に向かう。
倉庫に着き、真っ黒いベンツから降りた私の元に下っ端くんたちが駆け寄ってくる。
あれやこれやという間に、私は彼らに囲まれながら倉庫に誘われた。
心なしか、彼らの瞳が潤んでいるような。
え、嘘でしょ。
今にも泣き出しそうな強面のお兄さんとか怖すぎるんだけど。
彼らは、私の手を取り、肩を叩き、涙ぐんで、口々に話しかけてくる。
「愛美さん、本当に良かったです」
「フウガさんたちが愛美さんを認めたって聞いて、俺……」
「ばか、お前だけじゃねぇよ」
「そうだ、俺ら全員が感動したんだ」
「やっと愛美さんの良さが伝わったってな」
「あぁ、本当に良かったです」
自らの目元をそのごつい腕で拭う下っ端くんたち。
「そんなこと言われたら、私も泣いちゃうじゃない……」
声を震わせて、喜ぶ私。
心なしか、涙まで出てきちゃった。
……なんてね。
私が泣きそうなのを堪えて、微笑む。
その様子を見て、さらに感動する下っ端くんたち。
一見、そこには仲間思いの不良くんたちとようやく報われた悲劇のヒロインがいるように見えるかもしれない。
だけど、残念ながら私は悲劇のヒロインではないし。
仲間意識の強い下っ端くんたち、というのも案外間違いかもよ?
だって、この私を仲間だと思っているのよ。
見る目なさすぎでしょ。
本当に仲間思いだというのなら、私をこの場に入れないはず。
少なくとも、一カ月で懐柔されちゃうような彼らは、浅はかだとしか言いようがないわ。
だから、これは全て茶番なの。
本当のことなんて一つもなくて。
小芝居とそれに見合う軽い言葉が飛び交っているだけ。
倉庫に着き、真っ黒いベンツから降りた私の元に下っ端くんたちが駆け寄ってくる。
あれやこれやという間に、私は彼らに囲まれながら倉庫に誘われた。
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え、嘘でしょ。
今にも泣き出しそうな強面のお兄さんとか怖すぎるんだけど。
彼らは、私の手を取り、肩を叩き、涙ぐんで、口々に話しかけてくる。
「愛美さん、本当に良かったです」
「フウガさんたちが愛美さんを認めたって聞いて、俺……」
「ばか、お前だけじゃねぇよ」
「そうだ、俺ら全員が感動したんだ」
「やっと愛美さんの良さが伝わったってな」
「あぁ、本当に良かったです」
自らの目元をそのごつい腕で拭う下っ端くんたち。
「そんなこと言われたら、私も泣いちゃうじゃない……」
声を震わせて、喜ぶ私。
心なしか、涙まで出てきちゃった。
……なんてね。
私が泣きそうなのを堪えて、微笑む。
その様子を見て、さらに感動する下っ端くんたち。
一見、そこには仲間思いの不良くんたちとようやく報われた悲劇のヒロインがいるように見えるかもしれない。
だけど、残念ながら私は悲劇のヒロインではないし。
仲間意識の強い下っ端くんたち、というのも案外間違いかもよ?
だって、この私を仲間だと思っているのよ。
見る目なさすぎでしょ。
本当に仲間思いだというのなら、私をこの場に入れないはず。
少なくとも、一カ月で懐柔されちゃうような彼らは、浅はかだとしか言いようがないわ。
だから、これは全て茶番なの。
本当のことなんて一つもなくて。
小芝居とそれに見合う軽い言葉が飛び交っているだけ。
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