その女、女狐につき。

高殿アカリ

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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前

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 そうこうしている内に、生徒会室の前。



 一花が扉を開け、私が続いて入る。



 私たち二人を見て、生徒会役員の方々は笑いかけてくれる。

 約一名を除いて。



 その例外である市川は、意味ありげな視線を私に送る。



 だから、負けじと私も返してやった。



 片方の眉をあげて、ふん、とそっぽを向く。

 あくまでも、軽く。



 市川以外には気付かれないように。

 と言っても別に難しくはない。



 ほんの些細なその仕草でさえ、市川は気付いてしまうのだから。



 なんて面白くないの、あいつ。



 目敏い男はこれだから嫌いなのよ。



 と思いながら、私は私を生徒会室に歓迎してくれている人たちの為に、自己紹介をする。



 要するに市川以外ってこと。



「改めまして、一年の原田愛美です。今回、生徒会に入ることにしました。よろしくお願いします」



 ぱらぱらと拍手を受け、私はお辞儀をした。



 どうしてこんなことになったのかしら。



 うん、全ては市川のせいね。



 本当に私たち相性が悪いのよね。

 と、勝手に思っている。



 でもたぶん、市川の方もそう思っているでしょう?



 ……違うのかしら。



 そうよね、私たちは相性が悪い。

 そしてお互いにそのことを感じているはず。



 なら、どうして市川は私を脅してまで生徒会に入れさせたかったのかしら。



 何かの違和感が私の中を通り過ぎた。



 捕まえようとするも、不可能で。



 素早い違和感は、私の中に不快感と諦観だけを残して消えた。



 ……そうね、今は考えても仕方がないわ。



 私は頭をあげた。



 視界に入ってきたのは、山田先輩の優し気な笑顔。



 あぁ、彼だけが癒しだわ。



 不覚にもほっこりとした私は、市川を許すことにした。



 まぁ、黒閻にアピール出来るし、いいや。



 山田先輩の笑顔に、私は私なりの妥協点を見つけてあげることにした。
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