その女、女狐につき。

高殿アカリ

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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前

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 放課後、私は一花と共に生徒会室へと向かっていた。



 私が生徒会に入ると知った一花は、ご機嫌な様子で鼻歌なんかしちゃってる。



 ほんと、呑気で良いわね、あんた。



 痛む頭を抱えて、私は溜息を吐いた。



 そんな私の様子に気付いた一花が、心配そうに顔を覗き込む。



「大丈夫よ」



 問われる前に返す私。

 一花はふにゃりと笑うと、



「良かった。にしても、どうして生徒会に入ることにしたの?」



 無邪気そのもの、天真爛漫。

 屈託のない笑顔で聞いてきやがった。



 ……この野郎。



「一花を守るんだったら、私も一緒に入っておかなくちゃ。ねっ?」



 にっこりと、一花に負けないくらいの無邪気な笑顔を一つ。

 ころりと一花は騙される。



 そういうところは好きなんだよね。



「そっか、ありがとう」



 そう言って、遠慮もなしに、彼女は好意を素直に受け取る。



 恵まれているのね。

 そう思う私は惨めなのかもしれないわね。



「いいえ、当たり前のことよ。ところで一花、黒閻には連絡してあるの?」



「うん、愛美ちゃんのこともちゃんと伝えたよ。生徒会の終わりに迎えに来てくれるって。でね、今日からは一緒にフウガくんの車に乗っていいんだよ、愛美ちゃんも‼」



 お、マジすか。

 ついに報われる時がきたかー。



 何だかちょっと感慨深いね。



 だってベンツですよ、奥さん。

 あのベンツに乗れるんですよ。



 しかも、黒閻総長と一緒に。

 邪魔者も一人いるけど。



 仕方がない。

 今はそれで我慢しておこうじゃないの。



「嬉しい。一花と一緒だね」



「フウガくんがね、下っ端くんたちにももう伝えてあるって言ってたよ、愛美ちゃんのこと」



「ほんとう?」



「うん、だからね、たぶんみんな愛美ちゃんのこと歓迎すると思う」



「ふふ、何だか照れ臭いね」



 橙色に染まる廊下。

 頬を緩めて微笑み合う少女たち。



 揺れるスカートの裾。

 軽い足音が重なり合う。



 あれ、もしや私、ちゃっかり青春なんかしちゃってます?



 微笑ましく、清らかな背景とは裏腹に、私はそんな自分のことが嫌になった。



 うげぇ。



 気持ち悪くって反吐が出そう。
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