その女、女狐につき。

高殿アカリ

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2.生徒会へようこそ

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 私は八の字の眉毛を作り、口を開いた。



「二人が、体育館裏で何か話していたの。副会長の耳に一花が口を近づけていたから、内緒話なのかなって思って……」



「生徒会での話じゃないのか?」



 フウガが冷静に尋ねる。



「かもしれないです」



 自信がないように、けれどもそうじゃないと思っていることを伝えるような声色で。



 繊細な作業だよ、まったく。



「……でも、あの一花さんが顔を近づけて、ですか。……少々気になりますね」



 お?

 いいぞ、いいぞ。



「ちっ、俺は信じねぇからな」



 だぁん、と近くにあったドラム缶を蹴り上げて、タイシは二階に上がっていった。



 あら、お子ちゃまには刺激が強すぎたのかしら。



 でも、どちらでもいいわ。

 本当に信じてもらいたいのは、黒閻の総長だけだもの。



 だって、ここはそういう世界。

 総長の判断だけが正義なのよ。



 そうでしょう、フウガ。



「……ちゃんとした証拠がない。……話はそれからだ」



 あら、そこまで簡単じゃなかったか。

 残念。



 けれども、嫌疑はかけられたので良しとしましょうか。



 申告者が私だから、もしかしたら何一つ信じてもらえない可能性もあったわけだしね。



 にしても、彼らの苦渋に満ちた表情。



 とっても良いわ。

 ぞくぞくしちゃう。



 その顔がたまらないのよねぇ。

 でも、私は優しくなんかないわよ。



 だから、やめて欲しくてもやめてなんかあげない。

 もっと、もっと、私の一言一句に翻弄されてよ。



 そうして気が付いた時には、私以外の女の子なんか目に入らないくらいになってよ。



 ……と、なるにはまだまだの道のりね。



 でもね、そろそろ私を蔑ろにするのもおしまいよ。



 これからは、良い夢だけを見ていたいもの。

 そんな望みを持っちゃ駄目?



 今回の話がうまい具合に彼らの中に入っていったので、私は次の行動を考えるのに夢中だった。



 さてさて、次は何をしようか。
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