その女、女狐につき。

高殿アカリ

文字の大きさ
上 下
13 / 163
2.生徒会へようこそ

しおりを挟む
 ありふれた日常の終わりは、突然やってくる。



 どんよりと立ち込める曇り空の中、私と一花はいつものように教室でお昼ご飯を一緒に食べているところだった。



 今日のメインディッシュのから揚げを頬張ろうとしていた私たちにお呼び出しがかかったのだ。



 ぴんぽんぱんぽーん。

 どこか気の抜けた放送音の後、



「一年二組の天野一花さん、同じく一組の原田愛美さん。至急、生徒会室までお越しください」



 ぴんぽんぱんぽーん。

 ぴんぽんぱんぽーん。



 ざわつく教室とから揚げの香ばしい香り。

 メガネの奥で真ん丸に見開かれた一花の瞳。

 そして、どこか平和的な放送音。



 平穏の終わりとしてはちょっと物足りない。

 でも、確実に何かが始まる予感。



 終焉の合図は、先ほど丸く響いたぴんぽんぱんぽーんなのだろうか。



 やっぱり世界ってカオスなのね。

 謎の納得を得た私は、ゆっくりとから揚げを咀嚼した。



 もぐもぐ。もぐもぐ。

 うん、お母さんのから揚げは世界一ね。



 にっこりとご機嫌な私に、おどおどした一花が、



「愛美ちゃん、生徒会室……」



「そうねぇ、行きましょうか」



 お弁当を片付け、お口を拭いて、きちんと鏡で顔を確認して。

 私はさっと席を立ちあがる。



 はてさて、生徒会室に呼ばれるようなことした覚えはないんだけどなぁ。



 入学式にも出てなかったから、生徒会長の顔さえも分からないしね。



 まぁ、いいか。取りあえず、



「一花、行きましょうか」



「あ、うん」



 何だか面白いことになってきたわ。

 うふふふ。



 ……いけない、顔面崩壊してしまうところだったわ。



 弱弱しい小動物のような表情の下で、それとは全く正反対のことに思いを巡らしながら私は生徒会室に向かった。



 もちろん、一花を引き連れて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

処理中です...