独りぼっちの異星人

高殿アカリ

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 異星人と異星人もどきとその上司が共同生活を送っている一軒家で事件は起こった。
「なぁぁぁぁぁぁい!」
 夕焼けが街を染め上げる頃、シュウの叫び声が街中に響いた。
「俺のプリンが、ない……」
 冷蔵庫を開け、その前で項垂れているのはシュウだった。寝起きの彼はがくりと膝をついて茫然自失としている。
「俺の、プリン……名前を書いて置いてあったのに……どうして、誰が……」
 シュウの思考は同じ家に住む二人に向けられた。
 一人目は澄ましていけ好かない同僚の霧雨だった。
「なぁ、俺のプリン食べた?」
「いや、知らないですが。自分で食べたのでは?」
 一言多い奴なのだ、まったく。だが、プリンの楽しみを奪われたシュウに、今や言い返す気力はなかった。
 そこに通りかかったがもう一人の同居人、上司である千鶴だった。
「え? シュウが自分で食べたんじゃなくて?」
 ……まったく同じ答えが返ってくることなんてあるだろうか。あってよいのだろうか。
 とはいえ、現実プリンはないわけで、どうしようもなく、ふらふらとシュウは立ち上がった。そして、そのままよろよろと覚束ない足取りで階段を上がっていった。
 その哀愁漂う後ろ姿を霧雨と千鶴は見送り、肩を竦めた。

 シュウは自室に戻るとベッドにダイブした。そして、そのままふて寝をする。
「プリンがなければ俺は死ぬんだ」
 うじうじとぐずっていると、突然、部屋の電気が消えた。
「え? なんだ、なんだ」
 不安になったシュウの前に、霧雨と千鶴の二人が現れた。彼らは手に大きなプリンを持って登場したのだった。カラメル部分にはたった一本だけ蝋燭が刺さっていた。
「「ハッピーバースデー♪」」
 二人が誕生日の歌を歌い、何事かと理解しきれていないシュウは催促されるがまま、蝋燭の炎を吹き消した。霧雨が顔に似合わず音痴で、シュウの口角はいつの間にか上がっていった。
 電気が再びつくと、二人の顔がしっかりと見えた。
「驚かせてごめんね」
 千鶴が謝り、霧雨が続けて言う。
「誕生日パーティーを朝倉さんがどうしても開きたいというので、協力させて頂いただけです。変な勘違いはしないでくださいね、シュウ」
 だが、そんな霧雨の言葉ですらなんだか嬉しくて、念願のプリンを食べられたのも相まって、いつになくシュウは可愛げのある笑顔を二人に見せたのだった。
「えへへ、二人ともありがとな!」
 そうして、三人は楽しくバケツプリンを胃の中におさめた。
 彼ら三人のたわいもない毎日はこのようにして続いていく、はずだ――――。
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