転生者世界についた嘘と恋の物語

高殿アカリ

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第2章 嘘つきたちの宴

2-5

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駆け抜けて、駆け抜けてーーーー。

ケヴィン様と共に通った校舎も、彼と昼食を過ごしていた噴水の前も、幾度となく逢瀬を交わした小さな愛らしい庭園も、その全てを後目に私は必死で足を動かしました。

目的地はどこだって良いのです。
転生者のいない場所ならば。

あぁ、でも神様。
なんということでしょう!

この世界には転生者のいない場所などありはしないのです。

いつもいつもそうなのです。
周りには前世の話をする方ばかりでした。

「君のほんとうの名前は?」
「君はどの時代からやってきたの?」
「君は何をして生きていたの?」

私が何をしていても、誰といても、いつだって「前世」という目に見えぬ別世界での出来事に振り回されるのです。

「ただのイヴリン」は誰にも必要とされていないばかりか、その存在自体を理解してもらえたことは一度だってありませんでした。

私の記憶はこのたった16年間だけであり、だからこそ濃密でこの上なく愛おしい16年間だったのです。

「……わたくしは……ひっく……ただの、イヴリン…ですわ、っ」

泣きじゃくりながら独りごちました。
だってそれ以外、誰になれるというのでしょう?
私以外の誰に……。
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