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第2章 嘘つきたちの宴
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しおりを挟む彼女の言葉一つ一つに私の心は張り裂けそうに痛みました。
今にも零れ落ちそうな涙を必死に堪え、私はただ頭を下げました。
「イヴリン……」
愛しいケヴィン様の声が聞こえます。
「その女の名前を呼ばないで!」
キャサリン様の悲しみも理解できます。
「……華」
思わずぽろりと零したのでしょう。
ケヴィン様がキャサリン様の名を呼びました。
それはキャサリン様の前世での名前でした。
あぁ、私は「御門華」にはなれないのですわ……。
彼の口から幾度となく呼ばれたであろう「華」という名は私のものではなく、キャサリン様のものです。
分かっていました。
こうなることくらい。
それでもそれでも。
ありもしない前世を望んでしまうくらいには。
ケヴィン様のことを愛していたのです。
「……申し訳……ございませんでした」
深く深く頭を下げ、それから私は人混みの中に駆け出しました。
「イヴリン!」
ケヴィン様の手が虚しく宙を彷徨いました。
それを尻目に、私は流れる涙を拭うこともせず、ただただ足を動かしました。
「なになに?」
「一体何が起こったの?」
「イヴリン様が嘘をついてケヴィン様の婚約者になっていたそうよ」
「えー、うそぉ」
「あの二人お似合いだったから結構ショックかも~」
聴衆たちの心無い声に耳を塞ぎながら。
誰の声も聞こえない場所に。
誰の言葉も届かない場所に。
そう、私は無様にも逃げ出したのです。
令嬢としてではなく、ただのイヴリンの心を守るために。
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