20 / 27
20
しおりを挟む
次の日、麗たちは再び玉座のある王の間へと案内されていた。
そこにはすでにヒジュルが悠然と待ち構えていた。
「さぁ、返事を聞かせてもらおうか」
挨拶もなしに本題に入るヒジュル。
麗は唇を湿らせた。
昨日掴まれた胸ぐらが少しだけ鈍く痛む。
「残念だけど、やっぱり魔物は差し出せないわ。一人の幸せのために彼らは存在しているわけではないの。それがたとえ一国の王でもね」
シノニムが麗の答えにわかりやすく安堵の溜息をついた。
ヒジュルはにやりと片口をあげた。
「なるほど、それならばこちらとしても非常に残念な結果になってしまうようだ」
ヒジュルがそう言ったときどこからともなく機械音がして、麗たちの足元に大きな穴が開かれた。
「なっ!」
叫ぶ間もなく、彼らは一直線に降下していた。
落下中、シュヴァルツェが保護の魔法を全員にかけたため、どうにか床に直撃するという悲劇は免れた。
彼らが落ちた先は遺跡の中であった。
上を見上げるも、すでに扉は閉められていた。
これも遺跡のシステムなのだろう。
帰る道は閉ざされた。残されたのは行き先だけだ。
「シュヴァルツェ、ありがとう。保護がなければ死んでいただろう」
オズヴァルドの言葉はもっともで、それを証明するかのように辺り一面には人骨らしい物体が所狭しと乱雑に置かれていた。
見渡すも続く道はどうやら一つしかないようであった。
「進むしかないみたいやな」
カイパーの服の袖をスピカがぎゅっと握る。その華奢な指先は細かに震えていた。
そこから先は地獄の始まりだった。
大きな鉄の玉が道を転がり、麗たちを圧死させにきたり、床に何らかのスイッチがあるのか、突然壁から矢が吹き飛んできたり、あるいは炎の壁が迫ってきたりもした。
仕掛けはどれも単純かつ原始的なものであり、所謂エンターテイメントとしての仕掛けであると思われた。
無論、人間の生死がかけられている時点で笑える遊戯にはなりえないものではあるが。
こういった数々の仕掛けを抜けた先、気がつけば麗たちは開けた空間に辿り着いていた。
そこにはすでにヒジュルが悠然と待ち構えていた。
「さぁ、返事を聞かせてもらおうか」
挨拶もなしに本題に入るヒジュル。
麗は唇を湿らせた。
昨日掴まれた胸ぐらが少しだけ鈍く痛む。
「残念だけど、やっぱり魔物は差し出せないわ。一人の幸せのために彼らは存在しているわけではないの。それがたとえ一国の王でもね」
シノニムが麗の答えにわかりやすく安堵の溜息をついた。
ヒジュルはにやりと片口をあげた。
「なるほど、それならばこちらとしても非常に残念な結果になってしまうようだ」
ヒジュルがそう言ったときどこからともなく機械音がして、麗たちの足元に大きな穴が開かれた。
「なっ!」
叫ぶ間もなく、彼らは一直線に降下していた。
落下中、シュヴァルツェが保護の魔法を全員にかけたため、どうにか床に直撃するという悲劇は免れた。
彼らが落ちた先は遺跡の中であった。
上を見上げるも、すでに扉は閉められていた。
これも遺跡のシステムなのだろう。
帰る道は閉ざされた。残されたのは行き先だけだ。
「シュヴァルツェ、ありがとう。保護がなければ死んでいただろう」
オズヴァルドの言葉はもっともで、それを証明するかのように辺り一面には人骨らしい物体が所狭しと乱雑に置かれていた。
見渡すも続く道はどうやら一つしかないようであった。
「進むしかないみたいやな」
カイパーの服の袖をスピカがぎゅっと握る。その華奢な指先は細かに震えていた。
そこから先は地獄の始まりだった。
大きな鉄の玉が道を転がり、麗たちを圧死させにきたり、床に何らかのスイッチがあるのか、突然壁から矢が吹き飛んできたり、あるいは炎の壁が迫ってきたりもした。
仕掛けはどれも単純かつ原始的なものであり、所謂エンターテイメントとしての仕掛けであると思われた。
無論、人間の生死がかけられている時点で笑える遊戯にはなりえないものではあるが。
こういった数々の仕掛けを抜けた先、気がつけば麗たちは開けた空間に辿り着いていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった
ありあんと
ファンタジー
アラサー社会人、時田時夫は会社からアパートに帰る途中、女子高生が聖女として召喚されるのに巻き込まれて異世界に来てしまった。
そして、女神の更なるミスで、聖女の力は時夫の方に付与された。
そんな事とは知らずに時夫を不要なものと追い出す王室と神殿。
そんな時夫を匿ってくれたのは女神の依代となる美人女神官ルミィであった。
帰りたいと願う時夫に女神がチート能力を授けてくれるというので、色々有耶無耶になりつつ時夫は異世界に残留することに。
活躍したいけど、目立ち過ぎるのは危険だし、でもカリスマとして持て囃されたいし、のんびりと過ごしたいけど、ゆくゆくは日本に帰らないといけない。でも、この世界の人たちと別れたく無い。そんな時夫の冒険譚。
ハッピーエンドの予定。
なろう、カクヨムでも掲載
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる