春のうらら

高殿アカリ

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 次の日、麗たちは再び玉座のある王の間へと案内されていた。
 そこにはすでにヒジュルが悠然と待ち構えていた。
「さぁ、返事を聞かせてもらおうか」
 挨拶もなしに本題に入るヒジュル。
 麗は唇を湿らせた。
 昨日掴まれた胸ぐらが少しだけ鈍く痛む。
「残念だけど、やっぱり魔物は差し出せないわ。一人の幸せのために彼らは存在しているわけではないの。それがたとえ一国の王でもね」
 シノニムが麗の答えにわかりやすく安堵の溜息をついた。
 ヒジュルはにやりと片口をあげた。
「なるほど、それならばこちらとしても非常に残念な結果になってしまうようだ」
 ヒジュルがそう言ったときどこからともなく機械音がして、麗たちの足元に大きな穴が開かれた。
「なっ!」
 叫ぶ間もなく、彼らは一直線に降下していた。
 落下中、シュヴァルツェが保護の魔法を全員にかけたため、どうにか床に直撃するという悲劇は免れた。
 彼らが落ちた先は遺跡の中であった。
 上を見上げるも、すでに扉は閉められていた。
 これも遺跡のシステムなのだろう。
 帰る道は閉ざされた。残されたのは行き先だけだ。
「シュヴァルツェ、ありがとう。保護がなければ死んでいただろう」
 オズヴァルドの言葉はもっともで、それを証明するかのように辺り一面には人骨らしい物体が所狭しと乱雑に置かれていた。
 見渡すも続く道はどうやら一つしかないようであった。
「進むしかないみたいやな」
 カイパーの服の袖をスピカがぎゅっと握る。その華奢な指先は細かに震えていた。
 そこから先は地獄の始まりだった。
 大きな鉄の玉が道を転がり、麗たちを圧死させにきたり、床に何らかのスイッチがあるのか、突然壁から矢が吹き飛んできたり、あるいは炎の壁が迫ってきたりもした。
 仕掛けはどれも単純かつ原始的なものであり、所謂エンターテイメントとしての仕掛けであると思われた。
 無論、人間の生死がかけられている時点で笑える遊戯にはなりえないものではあるが。
 こういった数々の仕掛けを抜けた先、気がつけば麗たちは開けた空間に辿り着いていた。
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