下っ端くんたちのあれこれ

９

　どや顔で雅也と達也に顔を向けると、俺の隣から可愛らしい声がこんなことを言う。



「まずは、三人の名前を教えてよ。ちなみに、私の名前はレナ。もう知ってるだろうけどね」



　俺は慌てて隣の女の子を振り向く。



「え？　三人??」



　動揺で声が震えそうだ。

　悲しみで声が掠れそうだ。



　あぁ、なんということ。

　人生は優しくなどなかったらしい。



　揺れる俺の瞳が捉えたのは、さっきの恨めしい表情とは正反対のすがすがしい顔をした友人たちの姿だった。



「俺は達也だ。よろしくな」



　にかっと一番の笑顔を見せて、自己紹介をする達也。

　続いて、雅也がもじもじしながら、



「俺は雅也。よ、よろしく」



「達也に雅也ね。うん、覚えたわ！」



　軽快にそう言って、彼女は俺の方に顔を向けた。



「あー、俺は裕也だ」



「へぇ、三人とも似たような名前なのね」



　どこか納得したように頷くレナ。

　そうなんだよ、そうなんだよ、と達也も彼女と同じように頷いている。



　未だ、さきほどの動揺から抜け出せていない俺の背を、雅也が慰めるように撫でてくれている。



「……はぁ、人生って難しいもんだな」



　俺の呟きは、誰の耳に入ることもなくただただカオスな空間に溶けていった。